【例外的に非免責となるケースと弁護士の対応】相手が積極的な加害意図(家庭を破壊して損害を与える明確な意図)を持っていたと立証できる極めて例外的な事案では、非免責債権の主張が認められる余地があります。また、破産直前の財産隠し(免責不許可事由)がないかを管財人に調査させるためにも、早期に弁護士へ相談して法的に適切な対応を進めることが推奨されます。
不倫・浮気問題において、配偶者と不倫相手(共同不法行為者)との間の金銭トラブルは非常に複雑です。不倫相手に対して慰謝料や求償金を請求したところ、相手から「自分には支払い能力がない」「すでに自己破産の手続きを進めている(または破産管財人が選任された)」と言われ、支払いを一方的に拒まれるケースがあります。
このような状況に直面したとき、一般の方ではどのように対処すべきか判断に迷ってしまうでしょう。この記事では、不倫相手が破産手続き中を主張して支払いを免れようとした際、破産管財人に対してどのように対応し、法的にどのような権利主張が可能なのかについて、実務的観点から分かりやすく解説します。
不倫トラブルにおける求償権と共同不法行為の仕組み
不倫(不貞行為)の慰謝料は、夫婦の平穏な共同生活という法的利益を侵害したことに対する損害賠償です。民法上、不倫は配偶者と不倫相手の「共同不法行為」と位置づけられ、両者は連帯して損害賠償責任を負います(不真正連帯債務)。
そのため、例えば被害者である配偶者から不倫相手が慰謝料全額の支払いを求められ、それを支払った場合、支払った側はもう一人の責任者(不貞を行った配偶者)に対して、自己の責任割合を超える部分について「求償権(きゅうしょうけん)」を行使することができます。
しかし、不倫相手の男性が自らの経済的困窮を理由に「自分は破産するから求償金も慰謝料も一切払わない」「破産管財人に言ってくれ」と開き直ることがあります。ここで問題となるのが、破産によってその請求権が本当に消滅してしまうのかという点です。
破産法における不貞慰謝料・求償権の原則的取扱い
自己破産の手続きにおいて、債権者(請求する側)が正しく理解しておくべき最も重要な原則は、「不倫の慰謝料や求償権は、原則として自己破産によって免責(支払い義務の免除)される」という点です。
インターネット上には「不倫は悪意の不法行為だから破産しても免除されない」といった誤った解説が散見されますが、これは破産実務から乖離した危険な誤解です。
破産法第253条第1項第2号の「悪意」の解釈
破産法では、例外的に支払いを免れない債権(非免責債権)として「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」を定めています。
しかし、判例・実務において、ここでの「悪意」とは単なる不貞の故意(既婚者と知って肉体関係を持ったこと)を意味するのではなく、「他人に損害を与えて害してやろうという積極的な害意(加害意図)」を指すと厳格に解釈されています。
通常の男女交際や不貞行為において、「相手の家庭を完全に崩壊させて配偶者に打撃を与えてやろう」という積極的な害意まで立証できるケースは極めて稀です。したがって、裁判実務上、通常の不倫慰謝料や求償権は原則として「一般の破産債権」として扱われ、免責決定が出れば法的な支払い義務は消滅します。
破産手続き中と言われた時の具体的な管財人対応
相手から「破産手続き中である」と告げられた場合、感情的に言い争うのではなく、破産法に基づいた冷静な手続きを踏む必要があります。実務上重要となる対応策は以下の通りです。
1. 破産手続きの事実と裁判所・管財人の確認
まずは、相手の主張が虚偽(破産を騙った逃げ口上)でないかを確かめます。口頭の主張だけで信用せず、以下の情報を確認します。
- 破産事件番号(例:令和〇年(フ)第〇〇号)
- 管轄裁判所(〇〇地方裁判所破産係)
- 選任された破産管財人の弁護士氏名および所属法律事務所
破産管財人が判明した後は、債務者本人ではなく、破産管財人に対して連絡および書類送付を行うことになります。
2. 破産債権としての適切な届出と配当の受領
破産手続開始決定が下りている場合、裁判所が定めた届出期間内に「破産債権届出書」を提出する必要があります。
届出を行わないと、仮に不倫相手に一定の配当原資(換価された財産)が存在していたとしても、配当金を受け取る権利を完全に失ってしまいます。判決書、和解調書、示談書などの証拠資料を添えて、適正に債権届出を行います。
3. 免責不許可事由や財産隠しの情報提供
破産者が支払いを逃れるために、破産直前に親族へ預貯金を移動したり、高額な財産を隠蔽したりしている場合、それは破産法上の「免責不許可事由」に該当します。
不倫相手の生活実態や浪費、隠し財産に関する客観的な情報を持っていれば、破産管財人へ情報提供を行うことで、管財人の詳細な調査を促し、不当な免責を阻止するよう働きかけることが可能です。
まとめ:相手の破産に直面した際は専門家へ相談を
不倫相手が「破産したから払わない」と主張してきた場合、原則として免責対象になるという実務の現実を踏まえつつ、債権届出を通じた配当金の回収や、例外的な非免責・免責不許可事由の有無を冷静に見極める必要があります。
複雑な破産管財実務や求償権の法的整理については、一人で抱え込まず、不倫慰謝料および債務整理・破産法実務に詳しい弁護士などの専門家へ早めにご相談ください。