【私文書の示談書におけるリスクと対策】当事者間だけで交わした通常の私文書のままで相手が逃亡した場合、そのままでは強制執行ができないため、まずは裁判所へ提訴や支払督促の申し立てを行い、債務名義を取得する必要があります。確実かつ迅速に回収するためには、示談書作成の段階で弁護士に公正証書化を依頼するか、行方不明になる前の早期の法的措置が不可欠です。
不倫相手が示談後に連絡を絶って逃亡するトラブルとは
不倫・浮気問題において、慰謝料の金額や支払い方法について話し合い、示談書(合意書)を取り交わしたにもかかわらず、その直後に相手が連絡を絶ち、約束されたお金を一銭も支払わずに姿をくらますというトラブルは後を絶ちません。
「書面にサインをしてもらったから安心だ」と思いがちですが、相手が任意で支払わない場合、法的な強制力がない書類のままでは、どれほど詳細な条件が記載されていても、勝手に相手の財産を差し押さえることはできません。
この章では、示談成立後に逃亡された際、どのような法的手続きを踏む必要があるのか、その全体像を分かりやすく解説します。
示談書が「ただの紙きれ」になってしまうリスク
当事者間だけで作成した示談書や、ネット上のテンプレートを流用して作成した合意書には、強いプレッシャーを与える効果はあるものの、それ自体に強制執行力(財産を差し押さえる権利)はありません。
そのため、相手が支払いを拒否して逃亡した場合、以下のようなステップを踏む必要があります。
- ステップ1:内容証明郵便等による催告(任意の支払いを促す)
- ステップ2:裁判所への提訴または支払督促の申し立て(債務名義の取得)
- ステップ3:勝訴判決や和解調書等をもとにした強制執行(給与・預貯金の差押え)
このように、通常の私文書である示談書の場合、裁判という時間的・精神的な負担の大きいプロセスを挟まなければ、差押えを実行することができません。相手が最初から支払う意思を持たずに署名・捺印していた場合、泣き寝入りを強いられるリスクが生じます。
公正証書を作成していれば「即時差押え」が可能
では、示談の段階で相手の逃亡や不払いを完全に防ぐ、あるいは不払い発生時に素早く対応するためにはどうすればよいのでしょうか。その最強の手段が「執行認諾文言付公正証書」の作成です。
公正証書とは、公証役場において法律の専門家である公証人が作成する公文書です。通常の示談書を公正証書にするだけでなく、「金銭債務の不履行があった場合には、直ちに強制執行に服する」という旨の文言(執行認諾文言)を記載しておくことで、決定的な効力が生まれます。
この公正証書があれば、裁判を起こす手間と時間を一切かけずに、完成したその日から直接裁判所に対して強制執行(差押え)の申し立てを行うことが可能になります。
公正証書による差押えの主な対象
相手が逃亡したとしても、勤務先や財産の所在が判明していれば、公正証書を武器に迅速な回収を図ることができます。
- 給与の差押え:相手の勤務先が分かっていれば、毎月の給与や賞与から強制的に慰謝料を天引きして回収できます。会社に対して行うため、相手にとって心理的なプレッシャーも非常に大きくなります。
- 預貯金口座の差押え:相手の口座がある金融機関の支店名等を特定できれば、その口座内にある残高を差し押さえて回収することが可能です。
- その他の財産:相手が所有する不動産や自動車、高価な動産類なども差押えの対象となります。
相手が逃亡・財産隠しを図った場合の具体的な対処法
公正証書を作成していなかった場合や、相手が会社を辞めて行方不明になってしまった場合には、より高度な法的手続きや調査が必要となります。
まず、相手の勤務先や銀行口座の情報を知る必要があるため、弁護士会を通じた照会手続きや、裁判所の「財産開示手続」・「第三者からの情報取得手続」を活用することを検討します。近年の法改正により、裁判所を通じて金融機関や市区町村、年金事務所等から相手の財産や勤務先に関する情報を取得しやすくなっています。
ただし、これらの手続きを個人で一から行うのは極めて困難であり、専門的な知識と経験が不可欠です。
示談書の作成や差押えトラブルは弁護士にご相談ください
不倫・浮気の慰謝料請求において、示談書にサインをさせることはゴールではありません。真のゴールは「約束された慰謝料が確実に支払われること」です。
相手が「お金がない」「後で払う」とらちがあかない態度をとっている場合や、すでに連絡が取れなくなっている場合は、一刻も早く法的措置に移行する必要があります。公的な相談窓口や弁護士会等では、公正証書の代理作成から、不払い発生時の強制執行手続き、行方不明となった相手への追跡・財産調査まで、依頼者の皆様の大切な権利を守るために全面的なサポートを提供しております。
「示談書を交わしたのに相手が音信不通になった」「公正証書を作るべきか悩んでいる」といったお悩みを抱えている方は、ぜひ法テラスや弁護士会の無料法律相談窓口のご利用をご検討ください。経験豊富な弁護士が、最も確実かつスピーディーな解決への道筋をご提案いたします。