【再請求と身元特定のポイント】運転免許証の控えやLINE履歴などのデジタル証拠をもとに本来の身元を特定し、悪質な欺罔行為に対する精神的苦痛も考慮の上、適正な慰謝料相場である100万〜300万円を超える金額での再請求や引き上げ交渉を弁護士に依頼して進めるのが効果的です。
不倫・浮気の慰謝料請求を進める中で、相手が頑なに本当の氏名を名乗らず、偽名や架空の住所を使って示談書に署名・捺印させようとする悪質なケースが存在します。
「やっとの思いで示談が成立してホッとしたのに、後から名前も住所もすべて嘘だと分かった……」 このような絶望的な状況に直面したとき、泣き寝入りするしかないと諦めてしまう方が少なくありません。
しかし、法律上、偽名を使って締結された示談書には大きな法的問題があり、適切な手続きを踏むことで示談をやり直したり、追加の請求を行ったりすることが可能です。
本記事では、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、不倫相手が偽名を使っていた場合の法的リスク、示談の効力、そして確実な身元の特定方法から慰謝料の再請求・引き上げ交渉に至るまでの実務的な手順を詳しく解説します。
1. 偽名で結ばれた示談書の法的効力と「無効」の主張
不倫相手が偽名や偽の住所を用いて作成した示談書は、民法上の観点から大きな欠陥を抱えています。
詐欺または錯誤による示談の無効・取消し
民法上、人を欺いて錯誤に陥いらせて意思表示をさせた場合、その意思表示を取り消すことができます(詐欺による取消し)。 不倫相手が「あなたに本当の身分を知られたくない」「慰謝料の支払いや将来の社会的信用失墜を逃れたい」という悪意を持って偽名を使い、それを信じ込ませて示談書にサインさせたのであれば、この示談は詐欺を理由に取り消すことが可能です。また、契約の当事者が誰であるかは、法的責任を追及する上で最も重要な要素です。 「本当はAという人物であるにもかかわらず、Bという架空の人物と合意した」という錯誤(勘違い)があった場合、契約の目的や効力そのものが根本から揺らぐため、示談そのものが無効であると主張する余地が十分に生じます。
「清算条項」は通用するのか?
一般的な示談書には、「本件に関し、甲と乙の間には、本示談書に定められたもののほか、何らの債権債務が存在しないことを確認し、互いに今後一切の異議を申し立てない(清算条項)」という条文が盛り込まれます。しかし、この清算条項はあくまで「真実の当事者間」において適法に合意された場合にのみ効力を発揮します。 偽名という欺瞞行為によって締結された示談書における清算条項は、被害者を不当に縛るものとして法的効力が否定されるのが一般的です。したがって、「もう示談書にハンコを押してしまったから追加請求できない」と諦める必要はありません。
2. 相手の本名を突き止めるための現実的な調査・特定方法
示談が無効だとしても、相手の本名や本当の住所が分からないまのでは、裁判を起こすことも、給与や財産の差押えを行うこともできません。 手元にある限られた手がかりから、迅速に身元を特定する必要があります。
- LINEやSNSの履歴・アカウント情報の保全: やり取りしていたトーク画面、相手が登録していたプロフィール画像、登録されている電話番号やメールアドレスなどを漏れなくスクリーンショット等で保存します。
- 振込履歴やクレジットカードの控え: もし相手から分割金の振り込みを受けていたり、ホテル代や飲食代を支払う際に相手のクレジットカード情報や名義の断片が残っていたりする場合は、重要な手がかりになります。
- 職場の特定と勤務先からの追及: 不倫相手の勤務先が分かっている場合は、弁護士会照会(23条照会)や裁判所の文書送付嘱託などの法的手続きを活用して、会社に登録されている正式な氏名や住所を割り出すことが可能です。
- 探偵事務所・調査会社による素行調査: 自力での特定が困難な場合、プロの調査会社に依頼して尾行や張り込みを行い、自宅を特定して法的な書面を直接送達する準備を整えます。
特に、弁護士が介入することで、通信事業者や金融機関、勤務先に対する法的な照会手続きをスムーズに進めることができ、相手の背後に隠された本当の身元を効率的に暴くことが可能になります。
3. 身元特定後の対応:慰謝料の大幅引き上げと追加請求
偽名を使って責任逃れを図り、さらには被害者を欺いて示談を締結させた行為は、単なる不倫(不法行為)の枠を超えて、極めて悪質な加害行為(詐欺的要素の付加)と評価されます。
損害賠償額の再引き上げ交渉
当初の示談交渉において合意していた慰謝料額があったとしても、相手が偽名を使うという悪質な工作を行った事実が判明した以上、その合意は拘束力を失います。 弁護士は、以下の要素を総合的に考慮し、当初提示されていた金額よりも大幅に引き上げた慰謝料の支払いを新たに請求します。- 不倫行為そのものの悪質性(期間、頻度、家庭崩壊の程度など)
- 偽名を用いた組織的・計画的な隠蔽工作の悪質性
- 被害者精神的苦痛の倍増(裏切りの上塗りに起因する精神的損害)
- 裁判沙汰や社会的信用失墜(職場への発覚など)を回避するために嘘を重ねた情状
刑事告訴・警察への相談という選択肢
相手の偽名使用の悪質性が極めて高い場合(例えば、他人の身分証明書を偽造して提示した、架空の人物を装って金銭を騙し取ったなど)、民事上の損害賠償請求だけでなく、「有印私文書偽造・同行使罪」や「詐欺罪」としての刑事告訴を視野に入れた対応をとることも有効なプレッシャーとなります。 刑事責任を追及されるリスクを突きつけることで、相手は観念して一括での高額慰謝料支払いに応じざるを得なくなるケースが多くあります。4. 示談トラブルを防ぎ、確実に解決するための弁護士活用法
不倫相手が最初から誠実に対応することは稀であり、自分の保身のためにあらゆる嘘やごまかしを使うことが多々あります。 ご自身一人で相手と対峙していると、巧妙な嘘に丸め込まれたり、偽名の示談書にサインさせられて後から泣き寝入りしたりするリスクが高まります。
公的な相談窓口や弁護士会等では、不倫・浮気慰謝料問題における数多くの解決実績を持ち、相手が身元を偽るような悪質なケースについても数多く取り扱ってまいりました。
- 厳格な本人確認の徹底: 示談締結前に、運転免許証やマイナンバーカードなどの公的証明書の原本確認、あるいは弁護士による厳密な身元確認プロセスを経ることで、偽名による後からのトラブルを未然に防止します。
- 法的拘束力のある公正証書の作成: 単なる私家版の示談書ではなく、万が一の未払いの際に即座に給与や財産の差押え(強制執行)ができる執行認諾文言付きの公正証書を作成し、相手の逃げ道を完全に断ちます。
- 精神的な負担の大幅な軽減: 巧妙に嘘をつく不倫相手との直接交渉をすべて弁護士が代理人として引き受けるため、ご依頼者様が精神的ストレスに晒されることなく、平穏な日常を取り戻すサポートをいたします。
「相手が偽名だったかもしれない」「すでに示談書にサインしてしまったが、名前が怪しい」といった不安や疑問を感じられたときは、一人で悩まずに、できるだけ早く当事務所の弁護士までご相談ください。あなたの権利を守り、適正な慰謝料を確実に回収するための最善の道をご提案いたします。