【強制執行と弁護士介入のメリット】示談書が「強制執行認諾文言付き公正証書」であるか、裁判での和解調書等になっていれば、裁判を経ずに給与や預貯金口座の差し押さえ(強制執行)が可能です。一般的には私人間の示談書では直接の強制執行ができないため、公正証書の作成や、確実な回収・精神的負担の軽減のために弁護士へ速やかに相談・依頼することが最も確実な解決策となります。
不倫問題の解決にあたり、慰謝料の支払いと同時に交わされるのが「示談書(合意書)」です。この示談書には、将来の再発を防ぐために「今後一切の接触を禁止する(連絡、会うこと、SNSの送信など)」という条項と、それに違反した場合の「違約金」をセットで定めることが一般的です。
しかし、示談を交わしたにもかかわらず、不倫相手が平然と配偶者へLINEなどの連絡を入れてくるケースは後を絶ちません。 「もう二度と連絡しないと誓ったはずなのに……」と精神的なストレスが再燃するだけでなく、約束を破られたことに対する怒りは計り知れません。
本記事では、示談書締結後に不倫相手が再び接触してきた際、どのように違約金を請求し、強制執行(回収)まで持ち込むのか、法律上の実務手順を分かりやすく解説します。
1. 示談書に「接触禁止」と「違約金」を定めておく重要性
不倫問題の示談交渉において、弁護士が必ずと言っていいほど盛り込むのが接触禁止条項と違約金条項です。
例えば、以下のような条文を示談書に明記します。
- 乙(不倫相手)は、甲(配偶者)および丙(被害者)に対し、今後、一切の接触(電話、メール、LINE等のSNS、手紙、直接会うことなどを含む)をしてはならない。
- 乙が前項の義務に違反した場合、違反1回につき、金〇〇万円を違約金として直ちに丙に支払わなければならない。
このような条文を有効に成立させておくことで、単なる「約束」ではなく、明確な金銭債権(違約金)が発生する法的根拠となります。
2. 連絡が来たときの初動対応:証拠の保全がすべてのカギ
不倫相手から配偶者へ再びLINEが届いた場合、感情的に相手へ直接連絡したり、問い詰めたりすることは得策ではありません。まずは冷静になり、確実な証拠を保全することが最優先となります。
違約金を確実に執行するためには、「いつ、どのような内容の連絡があったか」を客観的に証明できなければなりません。以下の手順で証拠を残してください。
- スクリーンショットの撮影: 配偶者のスマートフォン画面で、不倫相手のアカウント名、メッセージの内容、送信日時がはっきりと確認できるようにスクリーンショットを撮影します。通知画面だけでなく、トークルーム全体のやり取りも残しておきましょう。
- データのバックアップ: スクショ画像だけでなく、可能であればトーク履歴をファイルとしてエクスポートしたり、クラウド上に保存したりして、データの消失を防ぎます。
- 接触の状況を記録する: 「いつ、どこで、どのように発覚したか」を時系列でメモにまとめておきます。配偶者へのヒアリング内容も詳細に残しておきましょう。
証拠が不十分なまま違約金を請求しても、相手が「そんなメッセージは送っていない」「乗っ取り被害に遭った」などと言い逃れをするおそれがあるため、動かぬ証拠の確保が何よりも重要です。
3. 違約金の請求手続き:弁護士を通じた通知書の送付
証拠が揃ったら、次は不倫相手に対して違約金の請求を行います。
被害者ご本人が直接相手に連絡をして請求することも不可能ではありませんが、感情的な対立に発展しやすく、相手が居直ったり連絡を無視したりするケースが多く見られます。そのため、弁護士名義で「通知書(催告書)」を内容証明郵便で発送するのが一般的です。
弁護士名義の通知書には、主に以下の内容を記載します。
- 過去に締結した示談書の該当条項の指摘
- 今回のLINE送信が接触禁止条項の明確な違反にあたる事実
- 示談書に基づいた違約金(例:50万円など)の請求額
- 指定期日までの支払いがない場合、法的措置(給与差し押さえ等の強制執行)に移行する旨の通告
弁護士から法的なプレッシャーをかけることで、相手が事の重大さを認識し、任意の段階で違約金を支払ってくるケースも少なくありません。
4. 相手が支払いに応じない場合の「強制執行」の流れ
弁護士からの通知を無視したり、「そんな金はない」と支払いを拒否したりする場合、あるいは連絡自体がつかない場合は、法的な強制手段に移行します。ここで重要になるのが、「示談書をどのような形式で作成していたか」という点です。
ケースA:示談書を「公正証書」にしていない場合
通常の私文書(当事者間で署名・捺印しただけの示談書)である場合、すぐに相手の給与や預金を差し押さえることはできません。この場合、以下のステップを踏む必要があります。
- 裁判所への提訴(または支払督促の申し立て): 違約金請求の訴訟を提起し、裁判所で勝訴判決を得る(または裁判上の和解をする)必要があります。
- 債務名義の取得: 判決や和解調書など、強制執行を申し立てるための公的なお墨付き(債務名義)を手に入れます。
- 強制執行の申し立て: 債務名義を根拠に、相手の勤務先を特定して「給与の差し押さえ」や、銀行口座の「預貯金の差し押さえ」を実行します。
ケースB:当初の示談書を「執行受諾文言付き公正証書」にしていた場合
もし、最初の不倫示談を交わす段階で、公証役場において「強制執行認諾文言付き公正証書」を作成していた場合は、非常にスピーディーに回収が可能です。
公正証書に「違反した場合は直ちに強制執行に服する」という文言が入っていれば、わざわざ裁判を起こして判決を取る必要がありません。公正証書をそのまま執行機関(裁判所)に持ち込み、直ちに相手の給与や財産の差し押さえ(強制執行)手続きに入ることができます。
5. 違約金執行における実務上の注意点と弁護士のサポート
違約金の執行を成功させるためには、いくつかの実務的なハードルをクリアする必要があります。
- 相手の勤務先や財産の特定: 給与を差し押さえるためには、不倫相手の「現在の勤務先」を特定している必要があります。もし転職している場合などは、財産開示手続や第三者からの情報取得手続などを活用して勤務先を調査することになります。
- 違約金額の妥当性: あまりにも高額すぎる違約金(例:LINE1通につき1000万円など)は、公序良俗に反するとして裁判所で減額される可能性があります。一般的な相場(30万〜100万円程度)の範囲内で設定しておくことが、後の法的手続きをスムーズに進めるポイントです。
- 精神的負担の軽減: 不倫相手から再び連絡が来るだけでも、被害者の方にとっては大きなフラッシュバックや苦痛を伴います。代理人弁護士がすべてのやり取りを窓口として引き受けることで、精神的な負担を大幅に軽減できます。
まとめ:示談後のルール違反には毅然とした法的対応を
不倫の示談後に相手から再びLINEなどの連絡が届いた場合、それは単なるマナー違反ではなく、明確な契約違反(接触禁止違反)です。
「これくらいなら許すべきか」「下手に動いてまた関わりたくない」と泣き寝入りしてしまう方がいらっしゃいますが、それでは相手の行為を許容することになってしまい、さらなるエスカレーションを招きかねません。
示談書に違約金条項を適切に定めておけば、法的根拠をもってペナルティを科すことができます。証拠をしっかりと確保した上で、弁護士とともに毅然とした違約金請求および強制執行の手続きを進めていきましょう。公的な相談窓口や弁護士会等では、示談後のトラブルや強制執行のご相談についても多数の実績がございます。一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。