【「悪意の不法行為」に基づく損害賠償請求権として免責除外を主張できるほか、破産手続き終結後に差し押さえ等の法的措置を継続することが可能です。】不倫慰謝料は裁判所に非免責債権として認められる可能性が高いため、あきらめずに、破産手続きへの異議申し立てや将来の回収に向けた法的対策を弁護士へご相談ください。
不倫相手の「自己破産・管財人なし」発言の真意とは
不倫の慰謝料を請求した際、相手から「今、自己破産の手続きを進めているから払えない」「弁護士から管財人は付かないと言われているから大丈夫だ」と言われ、途方に暮れてしまう方がいらっしゃいます。
相手のこの発言は、法律用語でいう「同時廃止(どうじはいし)」という破産手続きを指している可能性が非常に高いです。
自己破産には、大きく分けて「管財事件」と「同時廃止事件」の2種類が存在します。
- 管財事件:債務者に一定以上の財産がある場合や、借金の原因に問題(浪費やギャンブルなど)があり、それを調査・管理するために裁判所から「破産管財人(弁護士)」が選任される手続き。
- 同時廃止事件:債務者に換価できる目立った財産がほとんどなく、破産管財人に支払う予納金も用意できない場合に、破産手続き開始決定と同時に破産手続きを終了(廃止)させる手続き。
- 同時廃止の場合の特徴:破産管財人が選任されないため、裁判所が直接書類審査を行い、スピーディーに免責(借金を帳消しにすること)に向けた手続きが進められます。
相手が「管財人が付いていない」と言った場合、それは手続きが簡略化された同時廃止であり、一見すると「財産の調査が入らないから楽に逃げ切れる」と相手が勘違いしているケースが見受けられます。しかし、管財人がいないからといって、不倫の慰謝料が完全に免除されるわけではありません。
同時廃止における債権者のリスクと正しい理解
同時廃止事件として破産の手続きが進められる場合、裁判所や破産者代理人(相手の弁護士)から、債権者に対して「破産手続開始決定通知書」や「意見申述期間」に関する書類が郵送されてきます。
この通知を受け取った際、多くの債権者は「破産するなら、もうお金は1円も回収できないんだ」と誤解してしまい、そのまま泣き寝入りしてしまいます。確かに、一般的な借金(消費者金融からの借入れやクレジットカードの利用残高など)であれば、免責許可決定が下りることで法的な支払い義務は消滅します。
しかし、不倫・浮気の慰謝料は、通常の経済的な借金とは法的性質が大きく異なります。相手がどれほど「自己破産するから請求しても無駄だ」と主張したとしても、法律上、請求自体を諦める必要は全くありません。
不倫慰謝料は「非免責債権」または「悪意の不法行為」に該当するか
自己破産の手続きにおいて、すべての借金や債務が免除されるわけではありません。破産法では、社会的に保護すべき必要性が高い債権や、債務者の悪質性が高い損害賠償請求権について、借金を帳消しにしない「非免責債権(ひめんせきさいけん)」として定めています。
破産法第252条第1項第2号では、「故意又は重過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」は免責されないとされています。
ここで多くの方が疑問に思うのは、「不倫は精神的苦痛を与えるものであり、身体を害するものではないから免責されてしまうのではないか」という点です。
実際、最高裁判所の判例や実務においては、身体に直接危害を加えたわけではない精神的損害に対する慰謝料は、原則として非免責債権には直ちに該当しないと解釈される傾向があります。しかし、ここで諦めてはいけません。不倫慰謝料の回収においては、別の強力なアプローチが存在します。
それが、「悪意の不法行為に基づく損害賠償請求権」としての主張です。
破産法第252条第1項第5号には、「債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」は免責されない旨が規定されています。ここでいう「悪意」とは、単なる「故意(わざと)」という意味を超えて、「被害者に精神的または肉体的な苦痛を与えることを積極的に意図していた場合」や、「人の権利を害することを認識しながら、あえてその権利を侵害した悪質なケース」を指します。
配偶者がいることを知りながら長期間にわたって不倫関係を継続し、家庭を崩壊させるような精神的苦痛を意図的・継続的に与え続けた場合、この「悪意の不法行為」に該当する可能性が十分に高まります。
管財人がいない中で債権者が取るべき具体的なアクション
相手が同時廃止で自己破産を進めており、管財人が付いていない場合、債権者(被害者側)は具体的にどのようなアクションを起こすべきでしょうか。適切なステップを解説します。
- ステップ1:裁判所からの通知書の確認と内容の精査 相手の代理人弁護士や裁判所から届いた「破産手続開始決定通知書」に記載されているスケジュールを必ず確認してください。債権者異議を申し立てるための「異議申述期間」が設定されています。
- ステップ2:債権者異議の申し立てを行う 定められた期間内に、裁判所に対して「この債権は悪意の不法行為に基づく損害賠償請求権であるため、免責許可を出すべきではない」という異議を申し立てます。この際、不倫の悪質性(長期間の隠蔽、婚姻関係の破壊、精神的ダメージの大きさなど)を裏付ける証拠(LINEのやり取り、写真、診断書など)を添えることが極めて有効です。
- ステップ3:破産手続き終結後の取り立て・差し押さえの準備 たとえ免責許可決定が下りてしまった場合であっても、「悪意の不法行為」に基づく債権であることを理由として、判決や公正証書などの債務名義を基に、破産手続き終結後に給与や財産の差し押さえ(強制執行)を継続・実行することができます。
自己破産を盾にする相手への心理戦と法的反論
不倫慰謝料の支払いを逃れようとする加害者は、しばしば「自己破産するから弁護士に頼んで帳消しにしてもらう」「裁判をしても無駄だ」と脅し文句のように口にします。これは、債権者に精神的なプレッシャーを与えて諦めさせるための常套手段です。
相手に管財人が付いていない同時廃止のケースでは、破産手続き自体が非常に短期間(数ヶ月程度)で終わることが多いため、相手は「すぐに借金がなくなる」と過信しがちです。
しかし、裁判所や破産手続きを行う弁護士は、すべての債権者の主張を無条件に聞き入れるわけではありません。正当な権利を持つ債権者が、法的な根拠に基づいて毅然とした態度で「異議」を述べ、悪質な不法行為であることを立証すれば、裁判所もその事実を無視することはできません。
また、仮に相手の破産手続きの中で免責が認められてしまったとしても、前述の通り「悪意の不法行為」による損害賠償請求権としての性質が認められれば、破産法の規定により免責の効力は及びません。つまり、破産が終わった後であっても、相手が社会復帰して得た給与などに対して法的な強制執行を行う道が残されています。
弁護士に相談・依頼する圧倒的なメリット
相手が自己破産の手続きを進めている、あるいは「管財人がいないから払わない」と主張している状況で、個人だけで対抗するのは極めて困難です。
裁判所の手続きや期限は厳格であり、法律用語や専門的な書面作成を素人が独力で行うのは時間的にも精神的にも大きな負担となります。公的な相談窓口や弁護士会等では、以下のようなサポートを通じて、ご依頼者様の正当な権利を守り抜きます。
- 裁判所への的確な異議申し立て:「悪意の不法行為」に該当することを証明するための法的根拠を整理し、説得力のある意見書や異議申し立て書を作成・提出します。
- 証拠の精査と戦略的アプローチ:相手の不倫の悪質性を立証するために、手元にある証拠の価値を最大限に高め、裁判所や相手方代理人にプレッシャーを与えます。
- 破産終結後の差し押さえ・回収支援:破産手続きが終わった後も、継続して給与差押えなどの強制執行手続きをサポートし、可能な限り慰謝料を回収するための実務的なサポートを行います。
「自己破産するから無理だ」と相手の言葉をうのみにして泣き寝入りしてしまう前に、まずは一度、男女トラブルや慰謝料請求の解決実績が豊富な夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士までご相談ください。あなたの権利を守るための最適な道筋を一緒に見つけ出します。