【弁護士による解決アプローチ】不確実な将来の相続を待つ必要はなく、現在の給与や預貯金といった現実的な財産をターゲットにし、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成することで確実な回収を目指すことが重要です。
不倫・浮気の慰謝料を請求した際、相手から驚くような言い訳をされることがあります。その一つが、「今は手元にお金がないけれど、将来親からアパートや不動産を相続する予定だから、その時にまとめて支払う」という言葉です。
被害者側としては、「それなら将来まとめてもらえるならいいか」と考えてしまいがちですが、法律実務の現場において、この言葉をそのまま信用して待つことは非常に危険です。今回は、将来の相続を口実にする不倫相手に対する正しい法的アプローチについて、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
なぜ「将来アパートを相続する」という言葉を信用してはいけないのか
不倫相手が「将来の相続」を持ち出す背景には、その場しのぎの時間稼ぎや、支払いをうやむやにしようという意図が隠れていることが少なくありません。法律上、この言い訳には大きな問題点がいくつか存在します。
1. 相続は「将来の不確実な権利」に過ぎない
まず大前提として、親が所有しているアパートは、現時点ではあくまで「親の財産」です。親が生存しているうちは、子どもがそれを自分の財産として処分したり、他人の借金の担保や返済にあてたりすることはできません。
また、将来的に遺言書の内容が変わったり、親の介護費用や医療費で財産が使い果たされてしまったり、あるいは相続税の支払いや他の相続人との遺産分割協議によって、目論見通りのアパートが手に入らない可能性も十分にあります。「将来手に入るはずの財産」をあてにした示談は、実質的に「絵に描いた餅」を信じているのと変わりません。
2. 時効の壁に阻まれる危険性がある
不倫の慰謝料請求権には消滅時効が存在します。一般的に、不倫の事実と相手を知った時から3年(または不倫開始から20年)が経過すると、時効によって請求権が消滅してしまいます。
相手の「将来相続するから」という言葉を信じて何年も待っているうちに、気がつけば時効が成立してしまい、一円も回収できなくなってしまったという最悪のケースも起こり得ます。相手に待つように言われても、法的な時効の管理は厳しく行わなければなりません。
将来の相続を待たずに現実的に回収するための法的アプローチ
では、手元に現金がないと主張する不倫相手に対して、どのように慰謝料を回収すればよいのでしょうか。公的な相談窓口や弁護士会等では、以下のような実務的なステップを踏んで解決を図ります。
- 現在の本人の給与や口座を調査・特定する:不動産がなくても、相手が働いていれば給与という「現在の財産」があります。
- 分割払いの合意と公正証書の作成:一括払いが難しい場合でも、現実的な範囲で分割払いに応じさせ、不払いがあった場合にすぐに差し押さえができる法的な書面を残します。
- 強制執行認諾文言付き公正証書の活用:裁判を起こさなくても給与などの差押えが可能になる強力な文書を作成します。
現在の収入や財産を対象にする理由
慰謝料の支払い義務は、あくまで「現在の不倫をした本人」が負うものです。親の財産ではなく、本人の現在の給与所得や預貯金口座、あるいは自動車などの動産を対象に交渉を進めるべきです。
もし相手が「今はお金がない」と言うのであれば、親の相続財産を待つのではなく、現在得ている給与の中から毎月計画的に支払わせるべきです。分割払いにすることで、確実に回収できる確率を高めることができます。
公正証書を作成して「即時差押え」の態勢を作る
口頭の約束や、単なる私的なメモ書きによる示談書では、相手が途中で支払いを放棄した際に再びトラブルになります。「やっぱり払えない」「親から相続できていないから待ってほしい」と言い訳を重ねられ、連絡が取れなくなるケースも後を絶ちません。
このような事態を防ぐために不可欠なのが、強制執行認諾文言付き公正証書の作成です。
この公正証書を公証役場で作成しておくと、万が一相手が慰謝料の支払いを滞納した際、裁判所の判決をわざわざ取らなくても、すぐに相手の給与や銀行口座の差押え(強制執行)の手続きに移ることができます。
「将来アパートを相続する予定だ」などと言い訳をする相手に対しては、この公正証書を突きつけることで、「口先だけの言い訳は通用しない」「不払いは即座に給与差押えという強制処分に繋がる」という現実を認識させることが可能です。
相手の経済状況や言い訳に惑わされないために弁護士ができること
不倫問題において、被害者ご本人が相手と直接交渉しようとすると、相手の巧妙な言い訳や、時には逆ギレ、居直りなどの心理的圧力に屈してしまいがちです。「将来相続するから待ってくれ」と言われ、押し切られてしまう方も少なくありません。
弁護士が代理人として交渉の場に立つことで、以下のような大きなメリットが生まれます。
- 言い訳を法的に論破する:相手の不毛な言い訳や引き延ばし工作を法的な観点からシャットアウトし、現実的な解決案を飲ませます。
- 正確な財産調査とプレッシャー:弁護士名義で通知書を送付することで、相手に事の重大性を認識させ、真剣な支払いに応じさせることができます。
- 確実な書面作成のサポート:将来の未払いを防ぐための法的効力の高い合意書・公正証書をスムーズに作成します。
まとめ:不倫相手の「将来の相続」発言には毅然とした対応を
不倫相手が口にする「将来親からアパートを相続する」という言葉は、支払いを先延ばしにしたいがための常套句であるケースがほとんどです。その言葉を真に受けて時間を経過させてしまうと、時効によって泣き寝入りせざるを得ない状況を招きかねません。
将来の不確実な相続財産ではなく、現在の給与や口座を対象とした現実的な回収ルートを構築することが、不倫慰謝料問題を確実に解決するための鉄則です。
公的な相談窓口や弁護士会等では、相手の経済状況や言い訳に応じた最適な解決プランをご提案しております。相手の言葉に惑わされず、確実な慰謝料回収を実現するために、ぜひ一度法テラスや弁護士会等の公的相談窓口へご相談ください。