慰謝料請求・増額交渉(被害者側)

不倫相手の「車・バイク」を差し押さえて動産競売で金銭化する

大阪弁護士会所属 弁護士 井上正人 監修

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、民法第709条(不法行為)、第719条(共同不法行為)、第770条(離婚原因)の規定および多数の不倫・浮気慰謝料請求・減額交渉の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q 不倫相手が慰謝料を払わない場合、相手の車やバイクを差し押さえて回収することは本当に可能ですか?
A 【車・バイクの動産差押えと強制執行】不倫相手が慰謝料の支払いに応じない場合、確定判決や和解調書などの債務名義があれば、相手名義の自動車や自動二輪車を対象とした「動産差押え」および「動産競売」による強制執行が可能です。相手の勤務先や銀行口座が不明であっても、自宅や駐車場に車があれば極めて有効な回収手段となります。
【弁護士による回収サポートと実務のポイント】確実に差し押さえるためには、車検証等で相手の単独所有を確認し、裁判所への適切な申し立てを行う必要があります。財産隠しを防ぎスムーズに金銭化するためには、強制執行に精通した弁護士への相談・依頼が確実です。

不倫の慰謝料を請求し、裁判で勝訴したり示談で合意したりしても、肝心の相手が「お金がない」「払いたくない」と言って支払いに応じないケースは少なくありません。相手の預貯金口座や勤務先が分からない場合でも、もし相手が「車」や「バイク」を所有していれば、それを差し押さえて金銭化し、慰謝料を回収できる強力な手段があります。

この記事では、不倫相手の所有する自動車や自動二輪車をターゲットにした強制執行である「動産差押え」および「動産競売」の手続きと、確実に回収するための実務的なポイントについて、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が分かりやすく解説します。

慰謝料回収における「動産差押え」とは何か

強制執行と聞くと、給与の差押えや銀行口座の差押えを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、相手の勤務先や口座が不明な場合や、資力がないと主張して逃げ回る相手に対しては、目に見える財産である「動産」を差し押さえる方法が極めて有効です。

法律上の定義において、自動車やバイク(一定の排気量以上のもの)は不動産ではなく「動産」に分類されます。したがって、裁判所に動産執行の申し立てを行い、執行官の手によって差し押さえることになります。

差押えを行うための前提条件

車やバイクを強制的に差し押さえるためには、大前提として「債務名義(さいむめいぎ)」と呼ばれる公的な文書が必要です。具体的には以下のいずれかを取得している必要があります。

  • 裁判での勝訴判決書(仮執行宣言付き判決を含む)
  • 和解調書または調停調書(裁判所での話し合いで作成されたもの)
  • 公正証書(強制執行認諾文言が記載されたもの)

話し合いの段階で口頭で「払う」と言われただけでは、残念ながら車を差し押さえることはできません。まずは法的根拠となる書面を確保することがスタートラインとなります。

車・バイクを差し押さえて金銭化する具体的な流れ

車やバイクを差し押さえてから、最終的に慰謝料として現金化するまでのプロセスは、概ね以下のステップで進行します。

1. 執行官への動産執行申立て

債務名義を取得したら、不倫相手の住民票上の住所地(または実際に車が保管されている場所)を管轄する地方裁判所の「執行官室」に対して、動産執行の申立てを行います。この際、相手がどのような車(メーカー、車種、車体色、ナンバープレート、車台番号など)を所有しているか、どこに駐車されているかといった情報をできる限り詳細に提供する必要があります。

2. 執行官による現場での差押え(執行)

申立てが受理されると、裁判所の執行官が実際に不倫相手の自宅や駐車場へ赴き、対象の車を差し押さえます。一般的には、車のハンドルに「差押封印票(赤紙)」と呼ばれる公示書が貼られ、車を勝手に動かしたり処分したりすることが法律で禁止されます。

なお、車の場合、車検証上の所有者が誰であるかが極めて重要です。相手の単独名義であれば問題なく差し押さえられますが、ローンが残っていて所有者がディーラーや信販会社になっている場合や、家族・第三者の名義になっている場合は、原則として差し押さえることができないため注意が必要です。

3. 動産競売による換金処分

差押えが行われた後、執行官によって車は競売にかけられます。これを「動産競売」と呼びます。裁判所の基準に基づき評価された価格をもとに買受人を募り、最高値をつけた落札者に売却されます。

売却によって得られた代金は、執行費用(執行官の手数料やレッカー代、保管費用など)が差し引かれた後、債権者であるあなたへの慰謝料の支払いに充てられます(配当)。

車を差し押さえる際の重要ポイントと注意点

車やバイクの動産執行は非常に強力な回収手段ですが、実務上はいくつかのハードルや注意点が存在します。あらかじめリスクやコストを把握しておくことが大切です。

事前のリサーチが成否を分ける

車を差し押さえるためには、正確な駐車場所を特定しなければなりません。不倫相手が勤務先の駐車場に止めているのか、自宅のガレージにあるのか、あるいは遠方の月極駐車場を借りているのかを突き止める必要があります。相手が警戒して車を別の場所に隠してしまうと、執行官が現場に行っても差し押さえられない(空振りになる)リスクがあります。

予納金や費用の準備が必要

強制執行の申し立て時には、裁判所に納める予納金や、執行官が現場に出向くための実費、場合によっては車を移動・保管するためのレッカー代や駐車場代といった予納金(予納郵券や執行費用)をあらかじめ納付しなければなりません。費用の目安は事案によって異なりますが、数万円から十数万円程度の初期費用がかかるケースが一般的です。費用倒れにならないよう、車の価値や回収見込み額を計算しておく必要があります。

残債(ローン)がある場合の壁

前述の通り、自動車ローンが残っている場合、車の所有権はローン会社(信販会社やディーラー)に留保されていることがほとんどです。この状態では、不倫相手は「使用者の名義」であっても「所有者」ではないため、あなたはこの車を差し押さえることができません。もし強行しようとしても、ローン会社から異議が申し立てられます。車を差し押さえるためには、車検証の所有者欄が不倫相手本人(または完全な自己所有)であることを事前に確認する必要があります。

車・バイクの差押えを確実に成功させるための弁護士活用法

不倫相手から確実に慰謝料を回収するために車やバイクの差し押さえを検討する場合、法的手続きの複雑さや相手の財産隠しのリスクを考慮すると、弁護士への相談・依頼が最も確実な近道となります。

弁護士は、受任後に弁護士会照会(185条照会)などの法的な調査手段を活用して、相手の財産状況や車両の登録情報を正確に把握することができます。また、差押えの申し立て書類の作成から、裁判所の執行官との綿密な打ち合わせ、実際の執行現場への立ち会い、さらには競売で得られた代金の配当手続きに至るまで、すべてのプロセスをワンストップで代理することが可能です。

「相手が財産を隠そうとしている」「判決を取ったもののびた一文払ってこない」とお悩みの方は、泣き寝入りする前に、豊富な強制執行の実績を持つ法テラスや弁護士会等の公的相談窓口へご相談ください。あなたの権利を最大限に守り、実効性のある回収手段をご提案いたします。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、交通事故の賠償問題をはじめ、事業者様を狙う求人広告詐欺の被害救済やオフィス・テナント等の原状回復トラブルなど、不測の事態に直面した皆様の精神的・経済的なご負担を少しでも和らげ、正当な権利の実現と円満な解決へと導くためのサポートを徹底して行っています。

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