【公正証書がない場合の法的対処と弁護士依頼のメリット】公正証書や裁判所の判決等の債務名義がない状態では、自力での強制執行はできません。その場合は、弁護士を通じて内容証明郵便による法的督促を行ったり、支払督促や訴訟などの法的手続きを進めて債務名義を取得する必要があります。弁護士に依頼することで、相手の勤務先の特定や財産調査、面倒な法的手続きをすべて一任でき、確実な回収へと繋げることができます。
不倫の慰謝料を請求した際、相手が一括での支払いに応じられず、「毎月3万円ずつ分割で支払う」という条件で合意するケースは少なくありません。しかし、最初はきちんと支払われていたものの、数ヶ月経った頃に連絡が取れなくなったり、「今月は払えない」と一方的にバックレられたりするトラブルが後を絶ちません。
約束を破られた側としては、怒りと同時に「もう二度と連絡がつかないのではないか」「このまま泣き寝入りするしかないのか」と深い絶望感を覚えることでしょう。
結論からお伝えすると、正しい法的準備と手順を踏んでいれば、途中でバックレられたとしても諦める必要はありません。特に「公正証書」を作成している場合や、弁護士のサポートを受けることで、相手の給与を差し押さえて強制的に回収することが可能です。
本記事では、不倫相手が分割払いを途中でバックレた際に、即座に給与差押えを実行するための具体的な条件と手順について、弁護士の視点から詳しく解説します。
1. 分割払いのバックレに対して「給与差押え」が最強の手段である理由
不倫相手が支払いを滞らせた時、電話やメールで催促を続ける人は多いですが、バックレるような相手は連絡を無視し続けます。また、自宅に赴くなどの行為は、場合によってはトラブルやストーカー規制法違反などに発展するリスクもあり、おすすめできません。
そこで最も確実で効果的なのが、国家権力を使って相手の財産を強制的に回収する「強制執行(差押え)」です。中でも給与の差押えは、相手にとって非常に強いプレッシャーとなります。
- 会社にバレる心理的プレッシャー: 給与差押えの通知が勤務先に届くため、会社に不倫の事実や金銭トラブルを知られることになります。これを極度に恐れるため、連絡を断絶していた相手であっても慌てて連絡してくるケースが多くあります。
- 確実な継続収入からの回収: 預貯金や財産が不明な相手であっても、定職に就いて給与を得ているのであれば、毎月の給与から確実に回収金を天引きすることができます。
ただし、この給与差押えを即座に行うためには、事前の準備が絶対条件となります。どのような準備が必要なのか、次項で詳しく見ていきましょう。
2. 即座に給与差押えを行うための絶対条件「公正証書」
「相手が払わないなら、すぐに裁判所で差し押さえてもらおう」と考えても、口約束や、当事者間で適当に作成した示談書だけでは、裁判所はすぐに差押えの手続きをしてくれません。
日本国では、自力救済の禁止(法律によらずに実力で権利を実現することの禁止)が原則です。相手の財産を差し押さえるためには、公的な「お墨付き」である「債務名義(さいむめいぎ)」が必要になります。
債務名義の代表的なものが以下の2つです。
- 執行受諾文言付き公正証書: 公証役場で作成する公文書。「万が一、支払いを怠った場合は、直ちに強制執行に服する」という文言(執行受諾文言)が含まれている必要があります。
- 裁判所の判決や和解調書: 裁判を起こし、勝訴判決を得たり、裁判所の調停・和解で合意に至ったりした場合に作成される文書です。
もし、慰謝料の合意をする際に「公正証書」を作成していれば、裁判を起こす時間と費用をかけずに、バックレが判明したその瞬間から即座に給与差押えの申し立てを行うことができます。
3. 分割払いで必ず入れておくべき「期限の利益喪失条項」の重要性
公正証書を作成していれば安心、というわけではありません。もう一つ重要なポイントが、合意書の中に「期限の利益喪失条項(きげんのりえきそうしつじょうこう)」が含まれているかどうかです。
分割払いは、本来であれば「全額を今すぐ払う必要はなく、決められた期日までは払わなくてよい」という債務者にとってのメリット(期限の利益)が与えられています。
もしこの条項がないと、たとえ相手が「今月の3万円」を滞納したとしても、現時点で請求できるのは「今月分の3万円のみ」になってしまいます。これでは、毎月滞納されるたびに差押えの手続きを行わなければならず、非常に非効率です。
そこで、以下のような条項を必ず合意書(公正証書)に盛り込んでおく必要があります。
- 条項の例: 「債務者は、分割金支払いを1回でも(または2回以上)怠ったときは、何らの催告を要せず、当然に期限の利益を失い、直ちに残金全額を一括して支払う」
この条項があれば、1回でも支払いが遅れた時点で、残りの慰謝料全額が一括で請求対象となります。その結果、残額の全額を回収するために、給与の差押えを一気に申し立てることが可能になるのです。
4. 公正証書がない状態でバックレられた場合の対処法
「相手が分割払いに応じると言ったので、普通の示談書だけ交わしてしまった」「口約束だけで公正証書を作っていない」という状態でバックレられた場合、前述の通り即座の給与差押えはできません。
この場合、以下のステップを踏む必要があります。
- 弁護士を通じた催告・法的督促: 内容証明郵便等を用いて一括請求を行い、任意の支払いを促します。弁護士名義で通知を送ることで、相手が事の重大さに気づき、連絡を寄越すケースも少なくありません。
- 交渉・合意のやり直し: 連絡がついた場合、改めて公正証書の作成を条件とした再交渉を行います。
- 裁判手続(支払督促・訴訟): それにも応じない場合は、裁判所に支払督促を申し立てるか、慰謝料請求訴訟を提起して裁判所の判決(債務名義)を獲得することになります。
裁判と聞くと大変そうに思われますが、証拠がしっかり揃っていれば、弁護士が代理人としてすべて遂行するため、ご自身が裁判所に出頭する負担を大幅に軽減することができます。
5. 給与差押えの手続きと回収における注意点
実際に公正証書を所持しており、給与差押え(債権差押命令の申し立て)を行う際の実務的なポイントと注意点を解説します。
勤務先を特定している必要がある
給与を差し押さえるためには、相手の「正確な勤務先の名称と所在地」が判明していなければなりません。会社名だけでなく、本社所在地や代表者名、正確な部署などが求められます。 不倫関係にあった当時は勤務先を知っていても、転職している可能性もあります。バックレられた後に勤務先が分からない場合は、弁護士の職務上請求や調査嘱託といった法的な手段を用いて勤務先を割り出す作業が必要になります。
差し押さえられる金額には上限がある
生活権の保護という観点から、給与の全額を差し押さえることは法律で原則として禁止されています。 手取り給与額(税金や社会保険料を控除した額)が「40万円以下の場合は4分の1まで」、「40万円を超える場合は30万円を超える部分全額」と法律で上限が定められています。 そのため、残債が高額な場合、毎月の給与差押えだけで全額回収するまでに数ヶ月〜数年かかるケースもあります。
6. 不倫相手のバックレにお悩みの場合は夕陽ヶ丘法律事務所へ
不倫の慰謝料を分割払いにしたものの、途中で音信不通になられたり、支払いを拒否されたりするストレスは、精神的にも非常に大きな負担となります。「もう諦めるしかない」と泣き寝入りしてしまう前に、まずは法律の専門家である弁護士にご相談ください。
公的な相談機関や専門窓口では、これまでに数多くの不倫・浮気慰謝料トラブルを解決に導いてまいりました。
- 手元の示談書や公正証書の内容が、差押えに使えるものかどうかの法的診断
- 相手の新しい連絡先や勤務先の特定に関するアドバイス・調査サポート
- 裁判所への給与差押え申し立て手続きの完全代行
- 相手との連絡や再交渉の代理
相手にこれ以上逃げ得を許さないために、私たちが全力でサポートいたします。一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。