【違約金条項の重要性と弁護士のサポート】口頭の約束や単なる金額の合意だけでは情報拡散を抑止できないため、違反時のペナルティとして違約金条項を設定します。実効性のある示談書の作成や不利な条件を防ぐためにも、早い段階で弁護士へ相談することをおすすめします。
不倫や浮気のトラブルが発覚し、いざ慰謝料の金額や支払方法について合意に至った際、多くの方が「これでようやく解決だ」と安心されます。しかし、口頭での約束や、単に「慰謝料を支払う・受け取る」という金額面だけの取り決めだけで終わらせてしまうと、後々取り返しのつかない大きなトラブルに発展するケースが少なくありません。
特に注意しなければならないのが、プライバシーの暴露や、SNSを通じた拡散といった二次被害です。
今回は、不倫の示談書を作成するにあたって、なぜ「互いの守秘義務」や「SNS投稿の禁止」、さらには「違約金条項」を盛り込むことが極めて重要なのか、弁護士の視点から詳しく解説します。
不倫の示談後に起こりがちな「二次被害」の実態
不倫問題が解決したように見えても、当事者間の感情的なしこりは簡単には消えません。示談後に以下のようなトラブルが発生する事例が後を絶ちません。
- SNSへの書き込みによる特定・さらし行為: X(旧Twitter)やInstagram、匿名掲示板などに、当事者の個人情報や不倫の事実、メッセージのスクリーンショットなどが投稿される。
- 職場や親族への暴露: 報復感情から、配偶者の職場や互いの実家、友人関係のコミュニティに不倫の事実を言いふらす。
- 口外禁止を破った情報共有: 「友達だから」「相談だから」という理由で、第三者に細かな内情を話してしまい、結果的に噂が広がってしまう。
このような事態が起きると、被害配偶者側は精神的な平穏を再び奪われるだけでなく、社会的信用を失うリスクに直面します。お金のやり取り(慰謝料の支払い)だけで解決したつもりでいると、こうした予期せぬ攻撃に対して無防備になってしまうのです。
なぜ「互いに」守秘義務を設定する必要があるのか
守秘義務条項を入れる際、多くの人が「加害者側(不倫をした側)が被害者側に口止めをするためのもの」だと考えがちです。しかし、実際には「互いに(双方に)」守秘義務を課すことが非常に重要です。
被害配偶者側のプライバシーを守るため
不倫をされた側(被害者)にとって、自分が配偶者の不倫に悩まされていたという事実や、プライベートな家庭内の問題は、他人に知られたくないデパートな情報です。もし加害者側が「自分も慰謝料を払わされた被害者だ」などと逆恨みし、周囲に言いふらしたりSNSに書き込んだりした場合、被害者の名誉やプライバシーが著しく侵害されます。
フェアな条件による実効性の確保
「あなた(加害者)はこの件を口外してはならない」とする片務的な条項よりも、「当事者双方が、本件に関する一切の事実、条件、金額について、正当な理由なく第三者に口外してはならない」という双務的な条項にする方が、契約としての公平性が保たれ、のちの解釈や運用においてもスムーズになります。
SNS投稿・第三者口外の完全禁止を定める条項の具体例
実務上、示談書にどのような文言を盛り込むべきか、その一例をご紹介します。法律文書としての正確性と、違反を防ぐための強い拘束力を持たせる必要があります。
第〇条(守秘義務)
1. 甲(被害者)および乙(加害者)は、本件示談の成立、本件示談の内容(慰謝料の金額、分割方法等の条件を含む)、および本件に至る経緯について、互いに正当な理由がある場合を除き、第三者に対して一切口外してはならないものとする。
2. 前項の第三者には、双方の親族、知人、友人、および勤務先の関係者等、一切の者が含まれるものとする。
3. 甲および乙は、X(旧Twitter)、Instagram、Facebook等のSNS、ブログ、インターネット掲示板、その他媒体の如何を問わず、本件に関する事項、誹謗中傷、個人を特定し得る情報を一切投稿、掲載、発信してはならない。
このように、対象となる範囲(親族や勤務先を含むこと)や、具体的な媒体(SNSやネット掲示板)を明示することで、言った・言わないの言い逃れを防ぐことができます。
「違約金(ペナルティ)」をセットで入れるべき決定的な理由
どれほど厳重な守秘義務やSNS禁止の条項を盛り込んでも、それだけでは「破った場合の抑止力」としては不十分な場合があります。口外禁止を破られた場合、法律上の一般的な損害賠償請求(民事裁判)を起こすことは可能ですが、裁判には時間と費用がかかり、「実際にどの程度の損害が発生したか」を金銭で証明することが非常に難しいというハードルがあります。
そこで重要になるのが、「違約金条項(ペナルティ条項)」です。
違約金条項の効果
- 強力な抑止力: 「もしSNSに投稿したり口外したりした場合、直ちに金〇〇万円を違約金として支払う」とあらかじめ定めておくことで、相手に強い心理的プレッシャーを与え、違反を未然に防ぐことができます。
- 損害の立証が不要: 通常の損害賠償請求では「精神的苦痛や経済的損害の額」を証明する必要がありますが、違約金条項があれば、違反行為その事実さえ証明できれば、合意した金額をそのまま請求することが可能になります。
実務上、違約金の金額は事案の性質によって異なりますが、慰謝料の総額や経済状況等を考慮して合理的な範囲(数拾万円から100万円程度など)で設定することが一般的です。高額すぎる金額は公序良俗に反して無効とされるリスクもあるため、専門家である弁護士に相談しながら適切な金額を設定することをお勧めします。
誓約事項を確実に履行させるための法的アプローチ
示談書の効力をより強固なものにするためには、私家版の示談書を作成するだけでなく、その形式や手続にも工夫が必要です。
公正証書にするメリット
作成した示談書を公証役場に持参し、「強制執行認諾文言付き公正証書」として作成しておけば、万が一、慰謝料の不払いが発生した場合や、違約金の支払義務が生じた際に、裁判を起こすことなく直ちに財産の差し押さえなどの強制執行手続きに移ることができます。公正証書にすることで、加害者側に対する「絶対にルールを守らなければならない」という心理的強制力も格段に高まります。
弁護士名義で通知・示談書を作成する効果
ご本人同士で交渉して作成した示談書の場合、「言いくるめられた」「よく理解していなかった」と後から反故にされるリスクがあります。弁護士が代理人として介入し、法的根拠に基づいた厳格な条項(守秘義務、SNS禁止、違約金)を盛り込んだ示談書を作成・締結することで、相手に法的重みを痛感させ、将来のトラブルを根本から断つことができます。
まとめ:安全で平穏な日常を取り戻すために
不倫・浮気問題の解決において、お金の決着をつけることはもちろん重要ですが、それと同じか、あるいはそれ以上に重要なのが「今後の平穏な生活を守るための防御策」です。
SNSの普及により、感情的なもつれからネット上にプライベートな情報が拡散され、取り返しのつかない二次被害に発展するケースは後を絶ちません。
「互いの守秘義務」「SNS投稿・第三者口外の完全禁止」「違反時の違約金設定」という3つの要素を盛り込んだ示談書を作成することは、あなたの尊厳とプライバシーを守るための強力な盾となります。
当事務所、法律事務所公的な相談窓口や弁護士会等では、被害者側の心情に寄り添い、将来の不安を徹底的に排除した実効性のある示談書の作成・交渉を数多くサポートしてまいります。不倫問題の解決や示談書の作成でお悩みの方は、ぜひ一度、法テラスや弁護士会等の公的相談窓口へご相談ください。