【弁護士による防衛と法的対抗手段】万が一、財産の仮差し押さえが行われた場合でも、保全異議申立てや事情変更による取消しなどの法的手続きで対抗できます。会社に知られるリスクを防ぎつつ適正額で解決するためにも、早めに弁護士へご相談ください。
不倫・浮気の慰謝料を請求されている方の中で、相手や相手の代理人弁護士から「このまま支払わないなら、給与を差し押さえる」「会社に連絡して給料を差し押さえる手続きに入る」と強く予告され、恐怖や焦りを感じている方は少なくありません。
会社の同僚や上司に不倫の事実や金銭トラブルを知られてしまうのではないかと考えると、精神的に追い詰められてしまいます。
しかし、日本の法律において、相手が勝手に個人の給与を差し押さえることはできません。給与差し押さえを実行するためには、厳格な法的手続きを経る必要があります。
本記事では、給与差し押さえの予告を受けた際に行うべき事前防衛策や、仮差し押さえに対する異議申立ての方法について、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
差し押さえ予告の法的意味と「いきなり給与は奪えない」理由
相手から「給与を差し押さえるぞ」と連絡が来ると、明日にも自分の給料が全額奪われてしまうのではないかとパニックに陥りがですが、冷静になって仕組みを理解することが最大の防衛策となります。
裁判上の債務名義がない場合の差し押さえは違法
法律上、給与などの財産を強制的に差し押さえる(強制執行する)ためには、原則として「債務名義(さいむめいぎ)」と呼ばれる公的なお墨付きが必要になります。
債務名義の代表的なものは以下の通りです。
- 裁判所の確定判決
- 和解調書、調停調書(裁判所での合意)
- 強制執行認諾文言付き公正証書(公証役場で作成した文書)
つまり、まだお互いに話し合いをしている段階や、相手から一方的に内容証明郵便が届いただけの段階では、相手に債務名義はありません。債務名義がない状態で相手があなたの勤務先に連絡し、「給料を差し押さえろ」と要求しても、会社はそれに応じる義務は一切ありません。
脅し文句としての「差押え予告」に屈してはいけない
悪質なケースでは、裁判を起こす前の段階であえて「給与差し押さえ」「財産差押え」という強い言葉を使い、心理的なプレッシャーを与えて高額な慰謝料を早期に回収しようとする請求者も存在します。
これに怯えて慌てて相手の言いなりになり、不当に高額な慰謝料の支払いに同意してしまうと、後から取り返しがつかなくなるおそれがあります。予告されたからといって、直ちに給与が差し押さえられるわけではないことをしっかりと把握しておきましょう。
相手が法的手続を進めてきた場合の「事前防衛策」
とはいえ、相手が本格的に裁判を起こしたり、支払督促の申し立てを行ったりした場合は話が別です。裁判等を通じて相手が勝訴すれば、正式な債務名義が取得されてしまい、最終的には本当に給与が差し押さえられてしまいます。
そのため、訴訟等の法的アクションを起こされた段階、あるいはその予兆がある段階で、適切な事前防衛策を講じる必要があります。
1. 答弁書や意見書による減額・無過失の主張
相手が裁判所に訴訟を提起した場合、自宅に裁判所からの「訴状」と「呼出状」が特別送達で届きます。これを無視して放置すると、相手の主張がそのまま認められる「欠席判決」となり、一発で相手の勝訴(債務名義の取得)が確定してしまいます。
訴状が届いたら、指定された期日までに「答弁書」を提出しなければなりません。答弁書では、以下の点を主張し、慰謝料の減額や請求の棄却を求めます。
- 請求された慰謝料額が法相場に比べて著しく高額であること(減額主張)
- 夫婦関係がすでに破綻していた時期の交際であったこと(因果関係の否定)
- 相手方の配偶者が独身だと偽っていた、あるいは結婚している事実を知るすべがなかったこと(無過失の主張)
ご自身だけで法的根拠のある書面を作成するのが難しい場合は、弁護士に依頼して代理で答弁書を作成・提出してもらうのが最も確実です。
2. 裁判外での早期示談・分割交渉
裁判が長引くことや、会社に裁判所からの書類が届くこと(特別送達の宛先を勤務先にしてしまうリスクなど)を避けたい場合は、裁判に発展する前、あるいは訴訟の初期段階で、弁護士を代理人として立てて「示談交渉」に持ち込むのが有効です。
専門の弁護士が間に入ることで、相手の感情的なトーンを和らげ、一括払いが難しい場合には現実的な分割払いの合意(ただし、和解条項に「期限の利益喪失条項」を盛り込むのが一般的です)を目指すことができます。
仮差し押さえ(保全処分)が行われた場合の対抗手段
相手が通常の裁判(本訴訟)を起こす前に、財産を隠されたり処分されたりするのを防ぐため、裁判所に対して「仮差し押さえ(保全処分)」の申し立てを行うケースがあります。
仮差し押さえが認められると、あなたの預貯金口座や給与の一部が一時的に凍結・差し押さえられる危険性があります。もし仮差し押さえの通知や決定が届いた場合は、迅速な法的対抗措置が必要です。
保全異議申立て(ほぜんいぎもうたて)
仮差し押さえの決定に対して不服がある場合、債務者(あなた)は裁判所に対して「保全異議申立て」を行うことができます。
保全異議の手続きでは、主に以下のような点を争います。
- そもそも相手の主張する慰謝料請求権(被保全権利)が存在しないこと、または著しく減額されるべき理由があること
- 仮差し押さえを行うほどの急迫の必要性(財産隠しのリスクなど)が実際には存在しないこと
この異議申立てにより、仮差し押さえの決定を取り消させたり、内容を修正させたりすることが可能なケースもあります。
担保金の供託による執行停止
仮差し押さえを取り下げる、あるいは執行を停止させるための実務的な方法として、裁判所が定めた「担保金(保証金)」を法務局に供託する方法があります。
現金や有価証券を担保として預けることで、仮差し押さえの効力を停止させ、給与や預貯金が凍結されるリスクを回避することができます。ただし、まとまった資金が必要となるため、弁護士と相談の上で慎重に判断する必要があります。
給与差し押さえの範囲と生活を守る法律のルール
万が一、裁判等で敗訴が確定し、本当に給与が差し押さえられる事態になったとしても、法律によって生活権を守るための制限が設けられています。すべての給料が一方的に奪われるわけではありません。
日本の民事執行法では、給与や賞与、退職金などの継続的収入に対する差し押さえについて、原則として「手取り額の4分の1まで」しか差し押さえてはならないと定められています(手取りが非常に高額な場合は例外規定もあります)。
また、生活維持が困難にならないよう、差し押さえが禁止されている最低限度の生活費(基準額)も法律で守られています。
とはいえ、会社に給与差し押さえの通知(債権差押命令)が届くと、経理担当者などを通じて勤務先に借金や慰謝料トラブルの事実が知られてしまうため、社会的信用や心理的負担の観点から、何としてもそこに至る前に防衛・解決することが重要です。
・専門窓口へのご相談
「給与を差し押さえる」という言葉は非常に強烈であり、受取人をパニックに陥れるには十分な破壊力を持っています。しかし、法律のルールを正しく知っていれば、相手の脅しに屈する必要は全くありません。
裁判や公正証書といった正式な債務名義がない段階での差し押さえは違法であり、仮に法的手段に移行された場合でも、適切な答弁や異議申立てを行うことで、慰謝料の減額や無過失の主張、差し押さえの回避は十分に可能です。
公的な相談窓口や弁護士会等では、不倫・浮気の慰謝料請求を受けてお困りの方、高額な請求や差し押さえ予告に悩む方からのご相談を数多く受託してまいりました。依頼者様のプライバシーを厳守し、会社に知られることなく穏便かつ有利に解決できるよう、最善の法的サポートを提供いたします。
一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。あなたの日常と生活を守るため、弁護士が全力で力になります。