【割合が修正される要素と弁護士相談の重要性】婚姻期間の長さ、不倫を主導した側かどうか、精神的苦痛の度合いなどの個別事情により負担割合が修正されることがあります。求償権の放棄や減額交渉を有利に進めるためには、示談書の条項作成も含めて不倫問題に強い弁護士へ早めにご相談ください。
不倫(不貞行為)の慰謝料問題を解決する際、しばしば問題になるのが「求償権(きゅうしょうけん)」です。
例えば、不倫相手に全額の慰謝料を支払った後、「自分だけが全額払うのは不公平だ。不倫をした配偶者にも自分の支払った分の一部を請求したい」と考えたときに行使するのが求償権です。
この求償権において、最も重要であり、かつトラブルになりやすいのが「2人の間で責任をどのように分担するか(負担割合)」という問題です。裁判所や実務において、なぜ原則として「5対5(50対50)」と算定されるのか、その法的根拠と実際の修正要素について、弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
1. 不倫の求償権と「5対5(50%:50%)」の原則とは
求償権とは、共同不法行為者の一人が被害者に対して損害賠償金の全額を支払った場合に、他の共同不法行為者に対して、自己の負担部分を超える金額について還付を請求できる権利を指します。
共同不法行為としての責任
不倫は、配偶者と不倫相手の2人が共同して夫婦の平穏な生活という法的利益を侵害した「共同不法行為」に該当します。法律上、被害を受けた側(配偶者)は、不倫相手のどちらか一方、あるいは両方に対して、損害賠償の全額(連帯債務)を請求することができます。
なぜ「5対5」になるのか
一方が全額を支払った後、不倫をした配偶者と不倫相手の内部的な責任割合をどう分けるかについては、法律の条文に具体的な数字が書かれているわけではありません。
しかし、裁判実務においては、特段の事情がない限り、「不貞行為は当事者双方の合意と協力によって成立したものであるから、責任の重さは対等である」と判断されます。そのため、内部的な負担割合は原則として「5対5(均等)」と算定されるのが一般的なルールとなっています。
2. 実務で「5対5」が適用される具体的なケース
実際に裁判や示談交渉の場では、どのような状況でこの5対5の原則が適用されるのでしょうか。典型的なケースを見ていきましょう。
- お互いに積極的であったケース:双方が好意を寄せ合い、ほぼ対等の立場で関係を持ち始めた場合
- 婚姻関係の破綻度が同程度の場合:すでに夫婦仲が冷え切っており、どちらか一方だけが責められるべきではない事情がある場合
- 証拠や事情が均等な場合:特別な主導関係や脅迫などがなく、通常の不倫関係であると認められる場合
このようなケースでは、不倫相手が先に被害者へ慰謝料全額(例えば200万円)を支払ったとしても、その後、不倫配偶者に対して求償権を行使し、半額の100万円を請求することが法的に認められます。
3. 「5対5」から割合が変動・修正される要素
原則は5対5ですが、すべてのケースでこの割合に固定されるわけではありません。裁判所は、個別の事情を総合的に考慮し、公平の観点から負担割合を修正(増減)することがあります。主な修正要素は以下の通りです。
① 不倫を主導した側(誘い出した側)の責任
不倫関係のスタートにおいて、どちらがより積極的に働きかけたかが重視されます。例えば、職場の上司が立場を利用して部下を執拗に誘った場合や、既婚者であることを隠して独身と偽り交際を迫ったようなケースでは、主導した側の責任が重く評価されます。
- 主導した側:6割〜8割程度の負担割合に引き上げ
- 誘われた側(被害者側面もある立場):2割〜4割程度に軽減
② 婚姻関係の実態と破綻の時期
不倫が始まる前の夫婦関係の状態も大きな判断材料となります。
- すでに長期間別居しており、離婚協議中であった場合、不倫による精神的苦痛の度合いが低く見積もられることがあります。
- 逆に、円満な家庭を一方的に壊すような悪質な不倫であった場合は、不倫当事者側の責任が重くなります。
③ 経済力や社会的立場の格差
かつては収入格差なども考慮されることがありましたが、近年の裁判実務では、単なる経済力の違いだけで内部の負担割合を大きく変えることは少なくなっています。ただし、立場を利用したハラスメント的な要素が絡む場合は、責任割合に影響を与えます。
4. 求償権をめぐるトラブルを防ぐ・解決するためのポイント
求償権の存在や負担割合は、不倫の慰謝料請求における大きな交渉カードとなります。ご自身が請求する側であっても、あるいは請求されて防衛する側であっても、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
- 示談書(合意書)における「求償権の放棄」条項の確認:慰謝料を支払う(または受け取る)際、将来のトラブルを防ぐために「求償権を放棄する」という条項を入れる合意が交わされることが多くあります。この条項があると、後から追加で請求することができなくなります。
- 一括請求か分割請求かの見極め:求償権を行使する場合、一括での支払いが難しい相手に対してどのように回収を図るか、現実的な計画が必要です。
- 専門家である弁護士への相談:「自分のケースでは5対5になるのか、それとも割合を変えられるのか」を正確に判断するには、過去の裁判例に基づいた法的な分析が不可欠です。
まとめ
求償権の負担割合は、原則として「5対5(50%:50%)」と算定されます。これは、不倫という共同不法行為において、当事者双方が同等の責任を負うという考えに基づいています。
しかし、実際のトラブルにおいては、不倫の主導性や婚姻関係の状況によって、この割合は柔軟に変動します。ご自身が置かれた状況で適正な負担割合がどうなるのか、またどのように交渉を進めるべきかでお悩みの方は、ぜひ一度、法テラスや弁護士会等の公的相談窓口へご相談ください。専門知識を持つ弁護士が、お客様にとって最も有利な解決へ向けてサポートいたします。