【弁護士による示談書作成のメリット】被害者が将来の不安を完全に断ち切るためには、当事者間だけの口頭での約束ではなく、法的に有効な強制力を持つ示談書を締結することが極めて重要です。弁護士に依頼することで、データの消去方法や具体的な違約金の設定を含む厳格な条項を作成し、相手方に心理的なプレッシャーを与えつつ、万が一の違反時にも迅速に法的な責任を追及できる万全の体制を整えることができます。
不倫や浮気のトラブルにおいて、慰謝料の金額や支払い方法(分割・一括)だけに目が向きがちですが、被害者側にとってそれ以上に重要な意味を持つのが精神的な安全の確保です。
配偶者と不倫相手が交際していた期間中、2人の間には数多くの写真、動画、そして生々しいメッセージのやり取り(LINE、SNSのDMなど)が蓄積されています。これらが外部に流出したり、将来的に脅しの材料に使われたりするリスクを断ち切るために、示談書には必ず「データ完全消去の誓約」を盛り込まなければなりません。
この記事では、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、示談書におけるデータ破棄特約の重要性、具体的な条文の書き方、そして万が一違反された場合の法的な対処法について詳しく解説します。
なぜ示談書に「データ完全消去の誓約」が必要なのか
不倫問題が発覚した際、被害者である配偶者が最も恐れることの一つが「プライベートなデータの流出」です。
スマートフォンやクラウドサーバーの普及により、撮影された写真や動画、テキストデータは、当事者の意図にかかわらず簡単に複製・保存・拡散できる状態にあります。ここで十分な対策を講じておかないと、以下のような二次被害が発生するおそれがあります。
- SNSやインターネット掲示板への写真・動画の無断投稿(リベンジポルノ被害)
- 職場や親族、知人へのLINE画面のスクリーンショットのバラまき
- 別れた後も連絡を取る口実としてのデータの保有・利用
こうしたリスクを未然に防ぎ、不倫関係を完全に清算させるための法的盾となるのが、示談書におけるデータ完全消去の特約です。
データ完全消去誓約の具体的な内容と記載項目
実効性のある示談書を作成するためには、曖昧な表現を避け、対象となるデータや消去の方法を具体的に特定して記載する必要があります。当事務所が実務で使用する代表的な条項の構成要素は以下の通りです。
1. 対象データの明確な特定
単に「すべてのデータ」とするだけでなく、どのような媒体や形式のものが対象になるのかを漏れなく列挙します。
- スマートフォン、パソコン、タブレット端末などの各種デバイスに保存された写真および動画
- LINE、SNSのダイレクトメッセージ、メール等の電磁的記録
- 紙媒体の写真や手紙などのアナログ資料
2. バックアップも含めた完全消去の義務付け
端末のローカルフォルダからデータを削除しただけでは、クラウド上のストレージやゴミ箱フォルダにデータが残っているケースが少なくありません。そのため、以下のような網羅的な表現を用います。
「甲(不倫相手)および乙(配偶者)は、本合意締結日直ちに、相互間における交際に伴い作成・取得・受領した一切の写真、動画、音声、電子メール、LINEその他のメッセージアプリの履歴について、自身の所持するすべてのスマートフォン、パソコン、その他の記録媒体およびクラウドストレージ等(バックアップデータを含む)から、完全に消去・破棄しなければならない」
3. 第三者への提供・開示の禁止
当事者がデータを自分で持っていなくとも、友人や知人に送信していたり、第三者に預けていたりしては意味がありません。第三者への拡散を防ぐための条項も同時に組み込みます。
実効性を高めるための「違反時のペナルティ(違約金)」設定
どれほど厳重な文言で誓約をさせても、それを破った場合のペナルティ(罰則)が明記されていなければ、相手方に心理的プレッシャーを与えることはできません。
データ完全消去の誓約条項とセットで、必ず違約金条項(ペナルティ)を設定することが重要です。
- データの消去を怠った場合、または秘密裏に保有・流出させたことが判明した場合
- 違反1回につき、あるいは発覚した時点において、金〇〇万円を違約金として直ちに支払うこと
- 違約金の定めは、別途被害者が被った実際の損害賠償請求を妨げないこと
このような厳しいペナルティをあらかじめ合意書に盛り込んでおくことで、不倫相手に対して「万が一データを残したり漏洩させたりすれば、経済的に大きな痛手を負う」という強い抑止力を働かせることができます。
万が一、データ流出や誓約違反が発覚した場合の法的対応
示談書を取り交わしたにもかかわらず、不倫相手が写真を所持し続けたり、SNSに画像を投稿したりした場合は、直ちに法的措置に移行する必要があります。
1. 損害賠償請求と違約金の徴収
示談書に記載された違約金条項に基づき、速やかに金員の支払いを請求します。また、プライバシー権の侵害や名誉毀損による追加の慰謝料請求も視野に入れます。
2. 発信者情報開示請求および削除請求
すでにインターネット上やSNSに写真や動画が投稿された場合は、プラットフォーム事業者やプロバイダに対し、投稿の即時削除および発信者の情報開示を求める法的手続きを進めます。
3. 刑事告訴の検討
悪質なケースや、脅迫・リベンジポルノ防止法違反(私事性画像記録の提供等被害防止法違反)に該当する行為が見られる場合は、警察への被害届の提出や刑事告訴も選択肢に入ります。
まとめ:安全な解決のために専門家である弁護士にご相談を
不倫・浮気トラブルにおける示談書の作成は、単に慰謝料の金額を取り決めるだけの作業ではありません。今後の生活の平穏を守り、プライバシーの安全を確保するための細心の注意が必要です。
インターネット上のテンプレートをそのまま流用した示談書では、今回解説したような細かいデータ破棄の規定や、実効性のある違約金の設定が抜け落ちているケースが多く見受けられます。
公的な相談窓口や弁護士会等では、依頼者様が一日でも早く精神的な苦痛から解放され、安心して日常を取り戻せるよう、個別の事情に応じたオーダーメイドの示談書作成をサポートしております。データ流出の不安を抱えている方や、万全の条件で示談をまとめたい方は、ぜひ法テラスや弁護士会の無料法律相談窓口のご利用をご検討ください。