【弁護士による実効性の高い示談書作成と法的措置のメリット】途中で連絡が取れなくなるリスクを防ぐため、この特約を設けた上で、さらに強制執行認諾文言付きの公正証書として作成しておくことが極めて有効です。万が一の滞納時に裁判を経ることなく即座に給与や預貯金の差押え(強制執行)に移行できるため、確実に慰謝料を回収するための強力な防衛策となります。
不倫や浮気の慰謝料請求において、高額な賠償金を一度に支払う資力が相手にない場合、分割払いに応じざるを得ないケースは少なくありません。
しかし、毎月の分割払いに合意したものの、数ヶ月後には連絡が取れなくなってしまったというトラブルは後を絶ちません。
このような事態を防ぎ、確実に慰謝料を回収するために絶対に欠かせないのが「期限の利益喪失特約」です。
本記事では、期限の利益喪失特約の重要性から、示談書における具体的な記載方法、さらに実効性を高めるための法的手段まで、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
分割払いに潜む大きなリスクと「期限の利益喪失」の仕組み
慰謝料の支払いを分割にする際、法的な防衛策を講じておかなければ、請求する側にとって非常に不利な状況を招くことになります。
ここでは、なぜこの特約が必要なのか、その基礎知識を分かりやすく解説します。
期限の利益とは何か
法律用語である「期限の利益」とは、簡単に言えば「支払期日が到来するまでは、お金を払わなくてよい」という債務者(支払う側)の権利を指します。
例えば、慰謝料150万円を毎月3万円ずつの50回払いで合意した場合、債務者は「毎月指定された期日までは、その月の分だけ払えばよく、残りの金額を今すぐ支払う義務はない」という利益(期限の利益)を持っています。
特約がない場合に起こる問題点
もし、示談書に期限の利益喪失に関する取り決めを記載していなかったとします。
相手が「今月は厳しいので来月にまとめて払う」「連絡なしに支払いが遅れた」という状況になったとき、法的にはどうなるでしょうか。
特約がない場合、債権者(請求する側)は、その都度「遅れた分の支払い」を催促することしかできません。
たとえ相手が何ヶ月も支払いを怠ったとしても、合意した全額について「今すぐ一括で払いなさい」と法的に強制することは原則としてできないのです。
これでは、途中で相手に逃げられてしまったり、毎月の督促に精神的なストレスを抱え続けたりする結果になってしまいます。
期限の利益喪失特約を定める具体的なメリット
分割払いの合意書や示談書に期限の利益喪失特約を設けておくと、以下のような強力なメリットが生まれます。
- 1回でも滞納した時点で、残額の全額を一括請求できる
- 相手に対する心理的なプレッシャーとなり、毎月の滞納を防ぎやすくなる
- 万が一の未払い発生時に、裁判などの法的手続きをスムーズに進められる
このように、この特約は分割払いにおける最大の防御策であり、実質的な債権回収の成功率を大きく左右する要素となります。
示談書への具体的な記載方法と文例
では、実際に示談書や和解契約書を作成する際、どのように期限の利益喪失特約を盛り込めばよいのでしょうか。
実務で使用される標準的な条文の構成と、重要なポイントを解説します。
実務で使われる文例
以下は、示談書等に記載する条文の典型的なサンプルです。
(期限の利益の喪失) 第〇条 甲(債務者)は、前条の分割金の支払いを怠り、その額が金〇〇円以上に達したとき(または「1回でも支払いを怠ったとき」)、あるいは次の各号のいずれかに該当したときは、何らの通知・催告を要せず、当然に本契約に基づく一切の債務について期限の利益を失い、直ちに残り金員全額を乙(債権者)に対して一括して支払わなければならない。 (1) 破産手続開始、民事再生手続開始、その他法的倒産手続の申立てがあったとき (2) 財産に対する仮差し押え、仮処分、強制執行の申立てを受けたとき (3) 連絡先や住所を変更したにもかかわらず、合理的な理由なくこれを乙に通知しなかったとき
記載における3つの重要ポイント
上記の文例を踏まえ、ご自身の示談書を作成・確認する際には以下の3点に注意してください。
- 発動条件を厳格にする 「1回でも支払期日に遅れたとき(一回失念型)」にするのか、「2回分を滞納したとき」にするのかを明確にします。確実性を重視するなら「1回でも怠ったとき」とするのが一般的です。
- 「通知・催告を要せず」の文言を入れる 通常、相手に催告(督促)を行わなければ一括請求できないと解釈される余地を防ぐため、「何らの通知・催告を要せず、当然に」という文言を必ず入れます。これにより、滞納が発生した瞬間に自動的に一括請求権が発生します。
- 破産や財産差押えなどのリスクも網羅する 単なる滞納だけでなく、相手が他の借金等で自己破産を申し立てた場合なども一括請求の対象に含めておくことで、債権者としての保全を図ることができます。
分割払いと期限の利益喪失特約の効力を高める最強の手段
いくら完璧な内容の示談書を作成したとしても、それが私的な書面(当事者間で署名・押印しただけのもの)である場合、相手が約束を破って一括金も支払わないとなれば、結局は裁判を起こして勝訴判決を得る必要があります。
裁判の手間や時間を省き、最も確実かつスピーディーに回収を実現するための方法を解説します。
強制執行認諾文言付き公正証書の活用
分割払いの示談をする場合、作成した合意書をただの紙きれで終わらせないために、公証役場で「公正証書」として作成することが強く推奨されます。
特に、公正証書の中に「強制執行認諾文言(きょうせいしっこうにだくもんごん)」という文言を必ず含める必要があります。
この文言が入った公正証書を作成しておくと、万が一相手が期限の利益を喪失し、一括金を支払わなかった場合に、裁判を経ることなく、直ちに相手の給与や預貯金口座、不動産などの財産を差押える(強制執行)ことが可能になります。
公正証書にするための条文の例
公正証書を作成する際には、先ほどの期限の利益喪失特約に加えて、最後に次のような一文を付け加えます。
「甲(債務者)は、本契約に基づく金銭債務の履行を怠り、期限の利益を喪失したときは、直ちに強制執行に服する旨を承諾した。」
この一文こそが、裁判所の判決と同等の強力な法的効力(執行力)を公正証書に与える鍵となります。
分割払いの交渉や示談書の作成でお困りの方へ
不倫・浮気の慰謝料請求において、分割払いは相手に支払いを実行させるための現実的な妥協点となる一方、一歩間違えると「うやむやになって一銭も回収できなかった」という最悪の結果を招くリスクを含んでいます。
「相手から分割払いを提案されたけれど、どのような条件で合意すべきか分からない」 「自分で示談書を作ったものの、期限の利益喪失特約が正しく機能するか不安」 「相手が公正証書の作成を渋っている、または連絡が取れなくなった」
このようなお悩みやトラブルに直面された場合は、一人で抱え込まずに、男女トラブルや慰謝料請求の解決実績が豊富な弁護士へご相談ください。
公的な相談窓口や弁護士会等では、依頼者様の権利と平穏な日常を守るため、法的効力の高い示談書の作成から公正証書の手続き代行、万が一の未払い発生時の強制執行まで、徹底的にサポートいたします。初回相談も承っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。