【弁護士によるサポートのメリット】公正証書の不備や紛失、相手方との示談内容の不備による執行不能のリスクを防ぐため、強制執行を見据えた文案作成や手続きの代理は弁護士に依頼することで確実かつスピーディーに進めることができます。
不倫や浮気の慰謝料トラブルにおいて、裁判をせずに話し合いで解決を図る際、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成することは非常に有効な手段です。この公正証書があれば、万が一相手方が慰謝料の支払いを滞らせた場合でも、裁判の判決を待たずに給与や預貯金などの財産を差し押さえることができます。
しかし、いざ強制執行を行う段階になって、「公正証書をどこにしまったか分からない」「正本と謄本はどう違うのか」と慌ててしまうケースが少なくありません。また、差押えを実行するためには、公正証書を持っているだけでは足りず、執行文付与という特別な手続きを経る必要があります。
本記事では、公正証書の正本と謄ポンの違いや厳重保管の重要性、そして強制執行の直前に行う執行文付与・送達証明書取得の具体的な手順について、法律実務の観点から分かりやすく解説します。
1. 公正証書の「正本」と「謄本」の決定的な違い
公正証書を作成すると、公証役場からいくつかの書類が交付されます。その中で最も重要なのが正本(せいほん)です。
- 正本(せいほん):公証人が作成した原本に基づいて作成される、原本と同一の効力を持つ文書です。強制執行をする際には、この正本の提出が法律上必須となります。一般的に、債権者(請求する側)用と債務者(支払う側)用にそれぞれ1通ずつ交付されます。
- 謄本(とうほん):原本の内容をそのまま複写した写し(コピーのようなもの)です。証明力はありますが、謄本では強制執行を行うことができません。内容は正本も謄本も同じであるため混同しやすいですが、法的効力において決定的な違いがあります。
- 原本(げんぽん):公証役場の厳重な金庫に半永久的に保管されるマスターデータです。紛失の心配はありませんが、一般の人が直接持ち出すことはできません。
実務上、債権者の手元には「正本」と「謄本」の両方が渡されることが一般的ですが、強制執行に使えるのは正本のみであるという点を強く認識しておく必要があります。
2. 正本の厳重保管と紛失時のリスク
公正証書の正本は、いわば「お金を引き出す権利が記載された小切手」のようなものです。そのため、その取り扱いや保管には細心の注意を払わなければなりません。
正本を紛失した場合のリスク
- 即座の強制執行ができない:相手方が任意の支払いを拒否した場合、正本が手元になければ、直ちに給与や預貯金の差押えの手続きを進めることができません。
- 再交付の手続きに時間がかかる:公正証書の正本を紛失した場合、作成した公証役場に申請して「正付(再交付)」の申し立てを行う必要があります。相手方の協力や確認が必要になるケースもあり、強制執行のタイミングが遅れてしまうリスクが生じます。
そのため、正本は自宅の目立つ場所や無造作に引き出しに入れておくのではなく、貸金庫や鍵付きの書類入れなど、紛失や盗難のリスクがない場所で厳重に保管してください。
3. 強制執行の前提となる「執行文付与」の手続き
相手方が慰謝料を支払わないため、いざ公正証書を使って強制執行(差押え)をしようと思い立ったとき、公正証書(正本)をそのまま裁判所に持って行っても、すぐに差押えは実行されません。
法的に強制執行をスタートさせるためには、以下の2つのステップをクリアする必要があります。
① 執行文付与の申し立て
執行文(しっこうぶん)とは、「この公正証書に基づき、債権者は債務者に対して強制執行をすることができる」ということを公証人が証明する文言のことです。- どこで行うか:公正証書を作成した公証役場で手続きを行います(原則として作成した公証役場でなければ付与できません)。
- 必要なもの:お手元の公正証書正本、本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)、印鑑、手数料(公証人手数料令で定められた所定の金額)が必要です。
- 手続きの意味:公正証書に記載された債務(慰謝料の支払いなど)が、本当に履行されていない(条件が成就した、または期限が到来した)ことを公証人に証明してもらい、正本の末尾に執行文を記載(または付綴)してもらいます。
② 送達証明書の取得
執行文付与と並んで絶対に忘れてはならないのが送達証明書(そうたつしょうめいしょ)の取得です。- 送達証明書とは:作成された公正証書が、確かに相手方(債務者)本人に届いた(送達された)ことを証明する書類です。
- なぜ必要か:法律上、債務者が内容を知らない状態で突然財産を差し押さえることは認められていません。「相手に確実に内容が通知されていること」を証明しなければ、裁判所は強制執行を受け付けてくれません。
- 取得方法:こちらも公正証書を最初に作成した公証役場で申請し、交付を受けます。公正証書作成時に同時に「郵便送達」の手続きを行っているケースがほとんどですが、証明書自体を別途取得する必要があります。
4. 実務上の注意点と弁護士に依頼するメリット
公正証書の作成から実際の差押えに至るまでの一連の流れは、法律知識がない方にとっては非常に煩雑で、平日に何度も公証役場や裁判所に足を運ぶ必要があります。
- 作成時のミスを防ぐ:「強制執行認諾文言」が正確に記載されていない公正証書は、いざという時に執行文が付与できず、ただの紙切れになってしまいます。
- 迅速なタイミングでの執行:相手方の財産隠しを防ぐためには、支払いが滞った直後に素早く執行文付与と送達証明書の取得を完了させ、裁判所への差押え申し立てを行うスピードが命となります。
- 手続きの心理的負担の軽減:不倫問題の当事者同士で直接連絡を取ることや、公証役場での複雑な書類手続きを自分一人で行うのは、精神的に大きな負担となります。
公的な相談機関や専門窓口では、慰謝料請求のための示談書・公正証書作成のサポートから、万が一の未払い発生時における執行文付与の代理、送達証明書の取得、さらには給与や預貯金の差押え(強制執行)手続きまで、ワンストップで代理人としてサポートいたします。
「公正証書を作ったものの、相手が払ってこない」「正本の保管方法や、これからの差押えの手順に不安がある」という方は、ぜひ一度、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士までご相談ください。豊富な実績と専門的知識をもとに、あなたの権利と正当な慰謝料を確実に守り抜きます。