建材メーカー訴訟における「シェア主張」と「共同不法行為(民法719条)」の理論

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、建設アスベスト給付金法、泉南アスベスト国賠訴訟判例、労災保険・石綿救済法および厚生労働省の最新認定基準に基づき、法律実務の視点からわかりやすく解説しています。

Q 複数のアスベスト建材メーカーが関与した現場で製品が特定できない場合、損害賠償はどうやって請求するのですか?
A 【民法719条の共同不法行為とシェア主張の仕組み】アスベスト建材メーカー訴訟では、現場で複数のメーカーの製品が混在し、どの製品を吸い込んで発症したか特定できない場合でも、民法719条の共同不法行為の理論が適用されます。これにより、被害者は特定のメーカーを厳密に特定できなくても、最高裁判例に基づき各メーカーの市場シェアや製品の危険性などを考慮した寄与度に応じて、損害賠償や和解による救済を求めることが可能です。
【証拠収集と弁護士無料相談による救済のポイント】当時の施工状況や現場の記憶が曖昧であっても、専門的な知識を持つ弁護士がカルテや就歴の調査、メーカーごとのシェア分析を行うことで、適切な賠償金請求への道が開けます。国からの最大1,300万円の給付金手続きや石綿救済法とあわせ、泣き寝入りせずに弁護士の無料診断を活用して正当な権利を速やかに主張することが重要です。

アスベスト(石綿)の被害をめぐり、国に対する損害賠償請求だけでなく、多くの建材メーカーに対しても法的責任を追及する訴訟が活発に行われています。

建設現場では、さまざまなメーカーが製造したアスベスト含有建材が同時に、あるいは時期を変えて使用されてきました。そのため、特定の被害者が「どのメーカーの製品を吸い込んで発症したのか」を完全に特定することは、実務上極めて困難です。

この難題を克服し、被害者の救済を図るために重要な役割を果たしているのが、民法上の共同不法行為(民法719条)の理論と、それに伴うシェア主張の考え方です。

アスベスト建材訴訟と責任追及の壁

建築作業に従事していた方や、そのご遺族がアスベスト関連疾患(中皮腫、肺がん、石綿肺など)を発症した場合、損害を賠償してもらうためには「加害者の行為と損害発生との間の因果関係」を証明しなければなりません。

しかし、数十年前の建設現場を思い返してみると、以下のような状況が一般的です。

  • 複数のメーカーが製造した内装材、外壁材、断熱材などが混在して使用されていた
  • 作業員自身も、どのメーカーの製品を取り扱っていたか正確に記憶していない
  • 作業現場の施工図面や納品書が残っていないことが多い

このように、加害者の特定が困難であるという理由だけで被害者が救済されないとすれば、それは著しい不公平を生むことになります。この不都合を解消するために、法律の解釈と裁判例の積み重ねによって発展してきたのが共同不法行為の理論です。

民法719条「共同不法行為」の基本構造

民法719条第1項前段では、「数人が共同して他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」と定めています。

通常、この規定は複数の人が示し合わせて悪事を働いたような場合をイメージさせますが、最高裁判所の判例(いわゆる建材メーカー訴訟に関する重要な司法判断など)では、必ずしも共同者間の意思の連絡(共謀)を必要としません。

客観的に見て、複数の事業者がそれぞれ危険なアスベスト含有建材を製造・流通させ、それらが同一の労働環境において混ざり合い、結果として労働者に健康被害をもたらしたという関連共同性があれば、共同不法行為が成立すると解釈されています。

これにより、被害者は関与したとされるメーカーのいずれに対しても、原則として損害の全額を請求する道が開かれます。

「シェア主張」とは何か?実務における役割

共同不法行為が成立する場合、理論上は加害者の1人が損害の全額を賠償し、その後で他の共同行為者に対して自分の負担部分を超える分について求償権を行使するという関係になります。

しかし、アスベスト訴訟においては、極めて多数のメーカーが存在し、それぞれが市場に供給した数量や時期、製品に含まれていたアスベストの含有量や飛散のしやすさ(発塵性)が大きく異なります。

そのため、訴訟や和解の場において、被告となった建材メーカー側は以下のような主張を展開することが多くあります。

  • 自社の製品が当該現場に存在したとしても、市場におけるシェアはごくわずかである
  • 他社の製品の方が圧倒的に多く使われていたため、全額の責任を負うのは不合理である
  • 製品の種類によってアスベストの危険性が異なるため、単なる頭数ではなく「寄与度」に応じて責任が分配されるべきである

これが、いわゆるシェア主張寄与度論と呼ばれるものです。

裁判所や和解協議においては、各メーカーの当時の市場占有率(シェア)や製品特性を考慮し、損害賠償額の分担や和解金の金額が実質的に調整される傾向にあります。

メーカー責任追及における弁護士の役割と立証活動

建材メーカーに対して損害賠償を請求し、適正な賠償金を引き出すためには、単に「アスベスト被害に遭った」というだけではなく、緻密な立証作業が必要となります。

法律事務所が代理人として活動する際には、以下のような点を綿密に調査・構築します。

  • 就労歴と現場の特定: どの時期に、どの地域で、どのような種類の工事に従事していたかを詳細にヒアリングする。
  • 建材の流通・使用状況の調査: 当該現場でどのメーカーの建材が採用されやすかったか、当時の業界慣行や施工記録を調査する。
  • シェアや危険性の立証: 該当するメーカー群の市場シェアや、製品からの石綿飛散に関する科学的・技術的データを分析し、法的責任を基礎付ける。

国に対する給付金請求(国との和解手続)と並行して、これら複数の建材メーカーに対する責任追及を行う場合、専門的な知識と豊富な交渉ノウハウが不可欠となります。

まとめ:泣き寝入りせず、専門家への相談を

アスベスト建材メーカー訴訟における共同不法行為の理論やシェア主張は、被害者が直面する「加害者特定の困難さ」という壁を乗り越えるための強力な法的武器です。

しかし、巨大な建材メーカーを相手に十分な賠償や和解を勝ち取るには、複雑な法的構成と証拠集めが求められます。

夕陽ヶ丘法律事務所では、アスベスト被害に苦しむ方々やご遺族の皆様をサポートするため、豊富な解決実績をもとに丁寧な無料相談を実施しております。「どのメーカーの責任を問えるかわからない」「自分のケースでも請求できるのか知りたい」といった疑問をお持ちの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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