東京電力福島第一・第二原子力発電所初期建設現場の耐火被覆

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、建設アスベスト給付金法、泉南アスベスト国賠訴訟判例、労災保険・石綿救済法および厚生労働省の最新認定基準に基づき、法律実務の視点からわかりやすく解説しています。

Q 昭和40年代の福島第一・第二原発の建設現場で耐火被覆作業に従事していましたが、国や企業への給付金や賠償金は請求できますか?
A 【給付金・賠償請求の対象と受給額について】昭和40年代に福島第一・第二原子力発電所の初期建設現場(原子炉建屋やタービン建屋など)で、アスベストを含む耐火被覆の吹付工事や周辺作業に従事し、中皮腫や肺がんなどの指定疾病を発症された元作業員やご遺族は、国に対する建設アスベスト給付金(最大1,300万円)や、元請企業に対する損害賠償請求の対象となる可能性があります。
【請求のポイントと注意点】当時の作業実態を示す就歴証明や、医療機関の診断書・カルテなどの証拠収集が重要となります。また、提訴期限(除斥期間)は原則として「死亡時から20年」など厳格なルールがあるため、受給資格や時効に不安がある方は、アスベスト訴訟に精通した弁護士による無料診断や相談を早めに受けることを強くおすすめします。

福島第一・第二原発の初期建設とアスベスト被害の背景

日本の高度経済成長期を支えた電力インフラの象徴である東京電力の福島第一原子力発電所および福島第二原子力発電所。これらの巨大プラントの建設工事が本格化したのは、昭和40年代(1965年前後)から昭和50年代にかけてのことでした。

原子力発電所の建設現場では、万が一の火災が発生した際にも放射性物質の拡散を防ぎ、建屋の崩壊を阻止するため、極めて高い耐火性能が求められます。そのため、鉄骨や壁面、配管周辺には大量の耐火被覆材や保温材が使用されました。

当時、優れた耐火性、断熱性、そして安価なコストを誇るアスベスト(石綿)は、最強の建築材料としてあらゆる場所で重宝されていました。発電所という極めて過酷な環境に耐えるため、アスベスト含有建材は大量に使用され、その施工現場では日常的に石綿の粉じんが舞い散っていたのです。

原子炉建屋・タービン建屋における耐火被覆吹付作業の実態

福島第一・第二原発の初期建設工事において、特にリスクが高かったのが「耐火被覆の吹付作業」や「保温材の切断・取付作業」です。

原子炉建屋やタービン建屋の内部は、巨大な鉄骨構造が組み上げられる複雑な空間であり、その多くは密閉または半密閉に近い状態で行われました。当時の建設現場における作業環境は、現代のような徹底した防じん対策や換気設備が十分ではなく、作業員たちはマスクすらせずに、あるいは簡易的なガーゼマスク程度で作業に従事していました。

  • 耐火被覆の吹付工: アスベストを含んだ吹き付け材をノズルで鉄骨に吹き付ける作業で、周囲に大量の粉じんが霧状に飛散しました。
  • 保温・耐配管工: 蒸気配管やタービン周りの断熱のために、アスベスト製の保温材をナイフで切断したり、巻き付けたりする際、粉じんがもうもうと立ち込めました。
  • 周辺作業員(他工種): 直接アスベストを扱っていなくても、同じ空間や直近で作業を行っていた電気工、配管工、内装工なども、漂うアスベスト粉じんを大量に吸入していました。

このような環境下で数カ月から数年にわたり作業を続けた結果、数十年を経た現在、中皮腫や肺がん、石綿肺などの深刻な健康被害が発症するケースが後を絶ちません。

国および建設資材メーカーに対する法的責任と救済の仕組み

アスベストを吸入したことによって中皮腫などの疾病を発症した場合、国に対しては「建設アスベスト給付金」を、また当時の元請け企業やアスベスト含有建材を製造していたメーカーに対しては「損害賠償請求」を行うことができます。

国は、昭和45年から昭和55年頃までの間に、屋内などの一定の作業場所において、アスベストにさらされるような作業に従事していた労働者について、その健康被害に対する責任を認めています。福島第一・第二原発の初期建設現場は、まさにこの時期の施工ピークと重なっており、支給要件を満たす可能性が非常に高い現場と言えます。

また、元請企業についても、労働者の安全を守る義務(安全配慮義務)を怠ったとして、最高裁判所の判決等に基づき、損害賠償責任が認められるケースが増えています。

給付金および損害賠償請求の主な要件

福島第一・第二原発の建設現場で働いていた方、あるいはご家族がアスベスト関連疾患と診断された場合、以下の要件を確認する必要があります。

  1. 対象となる期間での作業: 主に昭和45年10月1日から昭和56年9月30日までの間に、福島第一・第二原発等の建設現場で作業に従事していたこと。
  2. 対象疾病の発症: 中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚のいずれかに罹患していること。
  3. 就労の証明: 当時の雇用主からの証明、源泉徴収票、賃金台帳、年金記録、あるいは同僚の陳述書などにより、現場での作業歴が証明できること。

「自分がどのような建材を扱っていたか分からない」「元請け企業がどこだったか忘れてしまった」という場合でも、専門の弁護士が保有する資料や当時の施工実績データ、組合の記録などを照らし合わせることで、立証への道筋を見つけることが可能です。

時効に注意し、早めの相談・手続きを

アスベストによる健康被害に対する損害賠償請求には、除斥期間(権利を行使できる期間の制限)が存在します。損害賠償請求権は、原則として損害および加害者を知ったときから一定の期間が経過すると、権利が消滅してしまうおそれがあります。

また、国に対する建設アスベスト給付金についても、法律上の請求期限が定められており、時間が経過するほど受給のハードルが上がってしまう場合があります。

ご本人だけでなく、「すでに亡くなられたご家族が原発の建設現場で働いており、死因が中皮腫や肺がんだった」という場合であっても、ご遺族からの請求が法律で認められています。

東京電力福島第一・第二原発の初期建設現場で懸命に働いてこられた方々、そしてそのご家族の尊い権利を守るため、少しでも心当たりや不安な点がございましたら、アスベスト被害の解決実績が豊富な弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所へお気軽にご相談ください。専門スタッフが親身になってサポートいたします。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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