「既に花を手配した」と主張する高額キャンセル料への対抗策

公開日: 2026-03-01

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、葬儀トラブル・不当高額請求の減額・合意解約実務に基づき、民法90条(公序良俗・暴利行為)および消費者契約法に沿って最新の実務対応をわかりやすく解説しています。

Q 【読者の切実な疑問】葬儀のキャンセルを申し出たら「既に生花や祭壇の手配が終わっているから」と、数十万円もの法外な解約料を請求されました。本当にこの全額を支払わなければならないのでしょうか?
A

【結論と法的根拠】葬儀社が主張する高額なキャンセル料は、法的に無効である可能性が非常に高いです。消費者契約法第9条や民法第90条(公序良俗違反)を根拠に、事業者に実際に生じた損害を超える部分や不当に高額な違約金は支払う必要がありません。

【実務上の対抗・解決手順】その場での署名や支払いを避け、業者に対して実際の仕入伝票や発注書面など「実費の証明書面」の開示を求めます。証拠がない請求には応じず、必要に応じて弁護士などの専門家や消費生活センターへ相談し、適正な金額への減額交渉を行います。

大切なご親族を亡くし、深い悲しみと混乱の中にある遺族につけ込むように、法外な高額解約料を請求する悪質な葬儀トラブルが後を絶ちません。「葬儀プランを変更したい」「他の葬儀社に乗り換えたい」と伝えた途端、「既に生花を手配した」「特注の祭壇を発注済みだ」と高圧的に告げられ、見積mりの大半をキャンセル料として請求されるケースが多発しています。

葬儀社の言うがままに言い値で支払ってしまう方が後を絶ちませんが、法律上、事業者が損害を証明できないものや、不当に高額な違約金条項は無効となります。本記事では、生花の手配を口実にした高額キャンセル料に対する具体的な法的対抗策と、不当請求を跳ね返すための実務知識を解説します。

なぜ起きるのか?「生花手配済み」を口実にした高額キャンセルの手口

葬儀をキャンセル、あるいはプランを変更しようとした際、葬儀社が急に態度を硬化させ、法外な請求を行ってくる背景には、悪質な業者特有の手口が存在します。遺族の心理的動揺につけ込んだその実態を把握しておくことが、トラブルを防ぐ第一歩となります。

「発注証明」を出さないまま法外な金額を請求する手口

悪質な葬儀社によく見られるのが、「すでにキャンセルできない状態だった」と口頭で主張するだけで、実際の仕入伝票や発注書面を一切提示しないケースです。実際にはまだ手配すらしていない、あるいは一般的な仕入原価をごまかし、見積もり上の高額な販売価格そのままを「キャンセル料」として請求してくることが少なくありません。

遺族側としては「故人のために迷惑をかけてしまったのではないか」という罪悪感から、その場でお金を払ってしまったり、請求書をそのまま受け入れたりしがちですが、これこそが業者の狙い目です。

契約書に隠された「高額な違約金条項」の罠

葬儀の依頼時に交わした契約書の約款(小さな文字で書かれた部分)をよく見ると、「お客様の都合による解約は、見積もり総額の〇%を申し受けます」といった一律の高額違約金が設定されている場合があります。

しかし、後述するように、どれほど契約書に記載があったとしても、法律の制限を超える不当な条項は法的に無効と判断されます。契約書にあるからといって、無条件で全額を支払う義務はありません。

法的根拠に基づく対抗策:消費者契約法と民法を武器にする

葬儀社から法外なキャンセル料を請求された場合、明確な法律を根拠に毅然と対抗します。法的交渉や法的措置で用いる主な法律上の根拠は以下の通りです。

消費者契約法第9条(平均的な損害を超える損害賠償の無効)

消費者契約法第9条第1号では、消費者が支払う損害賠償の額(違約金を含む)について、「当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分」について、無効と定めています。

つまり、「生花を手配した」と主張する場合であっても、その生花を他の用途に回せなかったのか、実際の仕入原価はいくらなのかなど、事業者に実際に生じた具体的な損害(実費)を超える部分の請求は法律上認められません。数十万円ものキャンセル料が「平均的な損害」を大きく逸脱している場合、その請求の大部分は法的効力を失います。

民法第90条(公序良俗違反)による違約金の減免

葬儀という極限の精神的ストレス下において、十分な説明もないまま結ばされた高額な違約金約款は、民法第90条の「公序良俗に反する」として無効を主張できる余地があります。

遺族の無知や困窮につけ込み、不当に巨額な利益を得ようとする行為は、裁判においても厳しく制限される傾向にあります。

葬儀社から高額キャンセル料を請求されたときの正しい対処法

実際に高額なキャンセル料を突きつけられたとき、遺族が取るべき具体的なアクションを解説します。感情的になって言いなりになるのではなく、冷静かつ法的に正しい手順を踏むことが重要です。

その場で署名・支払いを行わない

葬儀社から「今すぐ払わないと裁判にする」「お骨を返さない」などと脅されるケースもありますが、その場で安易に示談書や合意書にサインをしたり、現金を支払ったりしてはいけません。一度支払いに同意してしまうと、後からその取り消しや返還請求が難しくなる場合があります。

「一度持ち帰って検討する」「弁護士や専門家に相談の上、改めて回答する」と伝え、その場での即答を避けてください。

「実費の証明書面」の開示を求める

葬儀社に対して、キャンセル料の根拠となる「実際の仕入伝票」「発注日時が証明できる書面」「キャンセル不能であった客観的な証拠」の書面による開示を求めてください。

悪質な業者の場合、この要求に対してまともな証拠を出せないことが多々あります。証拠がない請求には応じられない旨を伝えることで、相手の不当な要求を牽制することができます。

まとめ:不当な高額請求に屈しないための重要ポイント

「自分一人では葬儀社と交渉するのが怖い」「これ以上精神的な負担を増やしたくない」という場合は、葬儀トラブルに精通した弁護士などの専門家に相談することを検討してください。

専門家を通じて正式な法的根拠を示した書面を通知することで、強気だった葬儀社が態度を軟化させ、適正な実費のみの支払いやキャンセル料の減額に応じるケースがあります。

故人を静かに見送るべき大切な時間を悪質な葬儀トラブルによって台無しにされないためにも、不当な請求には安易に応じず、法的根拠を持って冷静に対処することが何よりも重要です。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、交通事故の賠償問題をはじめ、事業者様を狙う求人広告詐欺の被害救済やオフィス・テナント等の原状回復トラブルなど、不測の事態に直面した皆様の精神的・経済的なご負担を少しでも和らげ、正当な権利の実現と円満な解決へと導くためのサポートを徹底して行っています。

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