求人サイトが仕掛けるアクセス数捏造の罠とは
「求人広告を出せば、これだけの閲覧数が見込めます」「すでに多くの求職者があなたの会社ページを見ています」――。悪質な求人広告業者や無料求人商法の営業トークに乗せられ、高額な契約を結んでしまったものの、一向に応募が来ないというトラブルが後を絶ちません。
経営者や採用担当者が管理画面で見せられるアクセス解析データや閲覧カウンターの数値は、実は巧妙に偽装されたものであるケースが少なくありません。実態の伴わない広告費を支払わされないためには、業者が用いる捏造のからくりを知り、的確に対処することが極めて重要です。
経営者が信じ込んでしまうダッシュボードのウソ
多くの悪質な求人サイトでは、契約後に専用の管理画面(ダッシュボード)が提供されます。そこには「本日のアクセス数:〇〇件」「今月の求人ページ閲覧数:〇〇〇回」といったグラフが表示され、一見すると多くの求職者が自社に興味を持っているかのように錯覚させられます。
しかし、この数値の大部分は実際の求職者によるものではありません。業者は契約者を安心させ、解約や返金の要求を防ぐために、意図的にアクセス数を水増しするシステムを稼働させているのです。
ボットによる自動巡回と実績偽装の具体的なからくり
では、彼らは一体どのようにしてアクセス数を捏造しているのでしょうか。その手口の主流となっているのが、プログラム(ボット)を用いた自動巡回システムです。
ボット(プログラム)による機械的なアクセス水増し
悪質な業者は、自社サーバーから特定のプログラムを稼働させ、契約企業の求人ページに自動的かつ継続的にアクセスを繰り返します。人間の求職者が検索して閲覧しているわけではなく、プログラムが機械的にページを開閉しているだけです。
これによって、管理画面上のカウンターの数値だけが爆発的に跳ね上がる仕組みになっています。外見上は「人気の求人サイト」に見えますが、実際のコンバージョン(応募や問い合わせ)には一切結びつかないのはそのためです。
IPアドレスの偽装と閲覧履歴の工作
さらに巧妙な業者になると、単にアクセス回数を増やすだけでなく、複数の異なるIPアドレスを経由してアクセスしているように見せかける工作を行います。これにより、Googleアナリティクスなどの外部解析ツールを導入していないクローズドな環境であれば、経営者は本物の求職者が来ていると完全に信じ込んでしまうのです。
また、求人サイト内で架空の「お気に入り登録数」や「スカウト閲覧数」を自動生成する機能を備えているケースもあり、あらゆるデータを使って実績が順調であるかのように偽装します。
捏造を見抜き、不当な請求に対抗するための法律的アプローチ
もし「アクセス数が多くて効果があるはずだ」と誤認させられて締結した契約であれば、それは民法上の錯誤や、消費者契約法・消費者保護法理の類推適用、あるいは刑法上の詐欺罪に該当する可能性があります。
実態のないアクセス数で勧誘された場合、事業者は以下のようなステップで毅然と対応すべきです。
- 契約時の勧誘トークにおいて「多数の応募が期待できる」「閲覧数がこれだけある」と虚偽の説明がなされていなかったか、当時のメモや資料を確認する
- 業者が提示するアクセスデータの正当性に疑問を持ち、外部の信頼できるアクセス解析タグの設置を求めて拒絶された証拠を残す
- 不当な高額請求や電話督促に対しては、安易に支払いに応じず、求人広告詐欺に詳しい弁護士などの専門家に相談する
悪質業者との交渉や合意解約は専門家へ
自社だけで悪質な求人広告業者と交渉しようとすると、巧妙な言いまわしや脅し文句に屈してしまいがちです。特に、架空のアクセス数に基づいて「契約通りのサービスを提供した」と主張する業者に対し、法的根拠を持って反論するには専門的な知識が不可欠となります。
弁護士名義での通知書送付などを行うことで、相手が詐欺的な実績偽装の露見を恐れ、請求を断念したり合意解約に応じたりするケースは数多く存在します。泣き寝入りして高額な広告費を払い続ける前に、まずは現状の契約内容とアクセスデータの不審な点について、専門の法律家へご相談ください。