求人広告詐欺や悪質な無料求人商法による事業者間トラブルにおいて、最も恐ろしいのは「一度支払って(あるいは減額して)一件落着したと思ったのに、後日また別の名目で追加請求が来る」というケースです。このような不安を完全に断ち切るためには、トラブル解決の最終段階で「将来請求させない合意書(示談書・和解書)」を正しく締結することが不可欠となります。
口頭やメールの合意だけでは不十分な理由
悪質な事業者との交渉がようやくまとまると、経営者やご担当者としては「一刻も早くこの件から解放されたい」と感じるものです。しかし、電話での口頭の約束や、簡易的なメールのやり取りだけで解決とした場合、非常に大きなリスクが残ります。
相手の事業者が「話を聞いていなかった」「一部の合意であり、残金は別の担当部署が請求している」などと主張を変えてくることは珍しくありません。また、事業者の経営悪化や組織再編に伴い、債権が別の悪質なサービサーや回収代行業者に譲渡されてしまうケースもあります。
そのため、「今後一切の金銭的請求を行わない」という法的拘束力を持った書面(合意書・和解書)を交わすことが、自社を守るための絶対条件となります。
合意書に必ず盛り込むべき「清算条項」の実務
将来的な再請求を完全に封じるために最も重要なのが、「清算条項(不可逆的な債権債務の不存在確認)」です。夕陽ヶ丘法律事務所が実務で用いる和解書でも、この条項の文言には細心の注意を払っています。
清算条項には、主に以下のような内容を明確に記載します。
- 当事者間において、本件求人広告掲載契約に関する債権債務は一切存在しないことを相互に確認する。
- 乙(トラブルの相手方)は、甲(被害事業者)に対し、本件に関して名目・理由を問わず、今後一切の金銭的請求、その他のいかなる請求も行わないものとする。
- 本合意書に定めるもののほか、何らの債権債務が存在しないことを確認する。
この条項が記載された書面を双方の署名(または記名押印)のうえで保管してい万全の体制を整えておくことで、万が一の再請求に対しても「既定の和解によって解決済みである」という強い法的反論が可能になります。
「一部支払い」で和解する場合の注意点
トラブル解決のために、完全な請求放棄ではなく「解決金として一定額を支払うことで合意する」というケースも多く見られます。その場合、合意書には以下の点を必ず明記しなければなりません。
- 解決金の金額と、指定された期日までの正確な振込方法
- 当該解決金の支払いをもって、未払い代金や違約金などの全額の支払いに代えること(=これ以上の追加請求の禁止)
- 期限内に支払いが完了した時点で、すべての紛争が完全に解決したものとみなす旨の条件
曖昧な条件のまま金銭を支払ってしまうと、「それは着手金や一部弁済に過ぎず、残金がまだ残っている」と主張される口実を与えてしまうため注意が必要です。
悪質な相手から自社を守り抜くために
求人広告詐欺や無料求人商法を仕掛けてくる業者は、法の隙間を縫うような巧妙な手口を用いてきます。自社だけで相手との交渉や合意書のドラフト作成を行うと、相手にとって有利な隠し条項を見落としたり、必要な文言が抜けていたりする危険性があります。
「将来、再び請求されないか不安だ」「相手から送られてきた合意書の文言が妥当か判断できない」という場合は、事業者間トラブルや求人広告詐欺に精通した弁護士へ早めにご相談ください。夕陽ヶ丘法律事務所では、ご依頼企業の平穏なビジネス環境を取り戻すため、徹底した清算条項を含む確実な和解書作成と交渉の代理をサポートいたします。