求人広告詐欺の業者が突然裁判を起こしてきたら
悪質な求人広告詐欺や無料求人商法に引っかかり、高額な掲載料や違約金の支払いを拒否していると、業者が態度を硬化させて裁判を起こしてくるケースがあります。泣き寝入りを狙った脅し文句の電話や督促状だけでなく、実際に簡易裁判所や地方裁判所から訴状が届くと、経営者や担当者の方は大きな心理的プレッシャーを感じるでしょう。
しかし、こちらに理がある(契約の取消しや無効を主張できる)場合、相手の提訴は不当提訴にあたる可能性が高いと言えます。相手から一方的に訴えられたからといって防戦一方になる必要はありません。民事訴訟では、被告となった側が逆に相手を訴え返す反訴という非常に有効な対抗手段が用意されています。
「反訴」とはどのような法的手続きか
反訴とは、すでに係属している(裁判が始まっている)訴訟の中で、被告が原告に対して新たな請求を行う法的手続きのことです。
通常、裁判は「原告が訴えを起こし、被告がそれに反論する」という構図で進みます。しかし、悪質な詐欺業者のように、言いがかりのような理由で裁判を起こしてきた場合、被告側がただ「請求の棄却」を求めるだけでは不十分なケースがあります。
そこで、相手の請求を退けるだけでなく、こちらが被った実害や精神的苦痛に対する賠償を同じ裁判の土俵で同時に請求するのが反訴です。別々に裁判を起こす必要がないため、時間的・経済的な負担を抑えながら、相手に対して反撃を行うことができます。
悪質な業者に対して反訴で請求できる内容
求人広告詐欺や悪質な事業者間トラブルにおいて、不当な提訴をしてきた業者に対して反訴を行う場合、具体的にどのような損害を請求できるのでしょうか。主に以下の項目が挙げられます。
- 弁護士費用相当額(不法行為に基づく損害賠償)
- 精神的苦痛に対する慰謝料(法人であっても状況により認められるケースがある)
- すでに誤って支払ってしまった金銭の返還請求(不当利得返還請求)
特に重要なのが弁護士費用の請求です。悪質な業者との裁判を戦うためには、弁護士に代理人を依頼する必要があり、多額の費用が発生します。日本の法制度では、勝訴しても弁護士費用の全額が相手の負担になるとは限らないため、反訴を活用して不法行為責任(民法第709条)に基づき、その全額または一部を逆請求することが実務上非常に重要となります。
不当提訴が「不法行為」と認められる要件
ただし、裁判を起こされたからといって、無条件にすべてのケースで反訴による損害賠償が認められるわけではありません。単に裁判に負けたというだけでは、直ちに提訴が不法行為になるとは判断されないのが裁判所の傾向です。
業者の提訴が不法行為(損害賠償の対象)と認められるためには、以下のような事情が必要です。
- 請求の根拠が全く存在しないことを知りながら、あえて嫌がらせや脅しの目的で訴訟を提起したこと
- 自分の主張が法律上・事実上成り立たないことを容易に認識できたにもかかわらず、著しく相当性を欠く方法で提訴に踏み切ったこと
悪質な求人広告詐欺や、最初からだます意図があった無料求人商法の場合、契約書自体が違法であったり、説明義務違反が明白であったりします。そのような状況で裁判を起こしてくる行為は、まさに不当提訴にあたり、反訴の要件を満たす可能性が高くなります。
訴状が届いたら一刻も早く弁護士へ相談を
裁判所から特別送達などで訴状が届いた場合、答弁書の提出期限(通常は第1回口頭弁論期日の前日まで、あるいは指定された期日)が厳格に定められています。この期限内に適切な反論を行わないと、相手の主張がそのまま認められてしまう「擬制自白」となり、敗訴判決が出てしまう危険性があります。
業者の脅しや裁判というプレッシャーに屈してしまいそうになりますが、悪質な業者に対しては毅然とした対応が必要です。訴状を受け取ったら、放置せずに直ちに事業者間トラブルや詐欺被害に強い弁護士へ相談してください。
弁護士を代理人に立てることで、答弁書の作成はもちろん、相手の請求を退けるための法的な主張、そして必要に応じた反訴の提起をスムーズに行うことができます。不当な請求や裁判にお悩みの経営者の方は、泣き寝入りをせず、法的手段をフルに活用して悪質業者に対抗しましょう。