相手方が「少額訴訟(60万円以下)」を起こしてきた場合の通常訴訟移行手続き

公開日: 2026-09-02

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、事業者向け求人広告トラブル・無料求人商法の合意解約・請求停止実務に基づき、最新の法令および裁判例に沿ってわかりやすく解説しています。

Q 求人広告詐欺の業者から「少額訴訟(60万円以下)を起こす」と脅されたり、実際に裁判所から呼出状が届いたりした場合、どう対処すべきか?
A 【結論と法的根拠】少額訴訟は1回の期日で審理を終える簡易な手続きであり、悪質な業者が反論の機会を奪うために悪用するケースが目立ちます。しかし、被告には民事訴訟法第373条第1項に基づき、審理を通常の訴訟手続きに移行させる正当な権利(通常訴訟への移行申述)があります。
【実務上の対抗・解決手順】裁判所から呼出状が届いた際は、慌てずに答弁書と通常訴訟移行申述書を期限内に提出します。弁護士による受任通知の送達を活用することで、不当な請求や法的威圧を即座に停止させ、定額55,000円(2社以上は1社あたり44,000円の複数社まとめ割あり)でのスピーディーな0円解決を目指すことが可能です。

求人広告の掲載契約を巡り、解約を申し出た途端に悪質な業者から突然「裁判を起こす」「少額訴訟で一括請求する」と脅される事例が後を絶ちません。実際に簡易裁判所から特別送達で「呼出状」が届き、焦って言いなりになってしまう経営者の方も少なくありません。

特に60万円以下の金銭請求を対象とする「少額訴訟」は、原則として1回の期日で審理が結審してしまうため、十分な反論ができずに敗訴してしまうリスクを孕んでいます。しかし、事業者側には法律で認められた正当な対抗手段があります。本記事では、少額訴訟の仕組みと危険性を正しく理解し、通常訴訟へ移行するための具体的な法的手続きと解決への道筋を解説します。

求人広告詐欺における「少額訴訟」の悪用手口とリスク

悪質な求人広告会社やホームページ制作会社の中には、高額な違約金や未払い広告料を回収する手段として「少額訴訟」を好んで利用するケースが見られます。まずは、なぜ彼らが少額訴訟を選択するのか、その背景とリスクを知る必要があります。

少額訴訟とは何か?その特徴と狙い

少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用される、簡易裁判所の特別な訴訟手続です。主な特徴は以下の通りです。

  • 原則として審理を1回の期日(1日)のみで終わらせ、その場で判決を言い渡す。
  • 迅速な解決を図る反面、複雑な証拠調べや長時間の尋問は行われない。
  • 通常の裁判に比べて心理的・時間的な負担が少ないとされる。

悪質な業者は、この「1回で終わる」「反論の準備期間が短い」という特徴を利用し、経営者が十分な法的抗弁(錯誤取消や詐欺取消など)を主張する間を与えずに、半ば強引に判決や和解を引き出そうと狙っているのです。

B2B(事業者間)取引における法的位置づけ

前提として、被害に遭われた方は「消費者」ではなく「事業者(法人・個人事業主)」であるため、消費者契約法やクーリング・off制度は原則として適用されません。そのため、業者は「契約自由の原則」や「合意内容の有効性」を盾に強気に出ることが多くなります。

しかし、だからといって業者の不当な請求がすべて認められるわけではありません。虚偽の説明や重要事項の不実告知によって締結させられた契約であれば、民法第95条(錯誤)民法第96条(詐欺)に基づき、契約の取消しを主張することが可能です。業者は、こうした法的な反論を法廷でじっくり審理されることを恐れているため、あえて少額訴訟という簡易的な手続きを悪用するのです。

被告の正当な権利!通常訴訟への移行手続きとは

裁判所から少額訴訟の呼出状が届いた場合、そのまま泣き寝入りしたり、慌てて相手の要求通りに支払ったりする必要は一切ありません。民事訴訟法では、被告の防御権を保障するため、通常訴訟への移行制度が用意されています。

民事訴訟法に基づく「通常訴訟への移行申述」

少額訴訟を起こされた被告(この場合は経営者・店舗オーナー)は、法的な権利として、その事件を通常の訴訟手続きに移行させるよう求めることができます。

民事訴訟法第373条第1項では、被告が少額訴訟による審理及び裁判を異議なく受け入れたときを除き、被告が通常訴訟への移行を申し立てたときは、簡易裁判所は通常訴訟に移行させなければならないと定めています。

つまり、相手がどれほど「少額訴訟ですぐに決着をつける」と主張していても、あなたが「通常訴訟への移行」を希望する旨を裁判所に申し出れば、裁判所は通常の裁判手続きへ切り替えざるを得ないのです。

通常訴訟に移行させるメリット

少額訴訟から通常訴訟へ移行することには、以下のような大きなメリットがあります。

  • 十分な反論・主張の時間が確保できる: 1日で結審することはなく、書面(答弁書や準備書面)のやり取りを通じて、契約時の違法性や錯誤・詐欺について徹底的に主張できます。
  • 証拠の精査が可能になる: 業者側が提示した契約書や音声記録、営業トークのからくりについて、法的な観点から細かく反論を組み立てる余裕が生まれます。
  • 業者のプレッシャーに屈しない: 業者は通常訴訟になると弁護士費用や時間的コストがかさむため、徹底的に争う姿勢を見せることで、途中で請求を断念したり、和解(実質的な0円解決)に応じたりするケースが非常に多くなります。

裁判所から呼出状が届いたときの初期対応と実務上の注意点

簡易裁判所から特別送達(赤い封筒など)で訴状や呼出状が届いたときは、最も冷静かつ迅速な初期対応が求められます。ここで対応を誤ると、欠席裁判となり相手の請求がそのまま認められてしまう危険性があります。

1. 指定された期日と答弁書の提出期限を確認する

呼出状には、第一回口頭弁論期日の日時と、それまでに提出すべき「答弁書」の提出期限が明記されています。この期限を徒過しては絶対にいけません。必ず期限内に裁判所へ書類を提出する必要があります。

2. 通常訴訟移行申述書を併せて提出する

少額訴訟の呼出状である場合、答弁書とあわせて「少額訴訟移行申述書」を提出します。これにより、前述の通り手続きが通常の裁判へと切り替わります。自身で法的根拠を伴った書面を作成・提出することが不安な場合は、この段階で速やかに弁護士へ相談・依頼することが最善の防衛策となります。

3. 業者からの直接連絡を遮断する

裁判を起こされた動揺から、直接業者に電話をして交渉しようとする経営者様がいらっしゃいますが、これは避けるべきです。業者は言質を取ろうとしたり、さらに高圧的な態度で脅したりしてきます。裁判手続きに入った以上、すべての連絡窓口は弁護士に一元化するのが鉄則です。

弁護士による受任通知の活用と「0円解決」への道筋

求人広告詐欺や悪質な集客支援サービスとのトラブルにおいて、弁護士を代理人に立てることは圧倒的な抑止力となります。

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少額訴訟の脅しに屈することなく、適切な法的アプローチを踏むことで、不当な契約の無効化や金銭支払義務の不存在(0円解決)を勝ち取ることは十分に可能です。お一人で悩まず、まずは当事務所の専門ダイヤルまでご相談ください。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、交通事故の賠償問題をはじめ、事業者様を狙う求人広告詐欺の被害救済やオフィス・テナント等の原状回復トラブルなど、不測の事態に直面した皆様の精神的・経済的なご負担を少しでも和らげ、正当な権利の実現と円満な解決へと導くためのサポートを徹底して行っています。

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