時効のカウントをリセットさせる「時効の更新(旧:時効の中断)」にあたる3大行為

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、利息制限法、破産法、民事再生法、および多数の債務整理(任意整理・過払い金回収・個人再生・自己破産)の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q 借金の時効がリセットされる「時効の更新」とは具体的にどのような行為ですか?知らないうちにカウントがゼロになってしまう条件を教えてください。
A 【時効の更新(旧:時効の中断)とは】最終返済日から原則5年が経過することで成立する消滅時効の期間が、特定の法的行為や事実によってリセットされ、ゼロからカウントし直される仕組みです。
【注意すべき3大行為と弁護士相談のメリット】特に注意すべき行為は「裁判上の請求」「強制執行」「債務承認(借金の一部返済や支払い猶予の申し出など)」の3つです。時効期間が経過しているか不安な場合や、債権者から督促が届いた段階で早めに弁護士へ相談し時効援用手続きを依頼することで、不意の「債務承認」による時効のリセットを防ぎ、確実に借金の返済義務を消滅させることが可能です。

消滅時効の「更新」とは何か

借金には消滅時効が存在し、原則として最後のエブリデイ(最終返済日など)から5年(債権者が金融機関等の場合は基本的に5年)が経過すると、時効の援用手続きを行うことで法的に返済義務が免除されます。

しかし、この時効期間の進行中に、債権者側が法的手段に出たり、債務者側が借金の存在を認めるような行動をとったりすると、それまでに経過した時効期間がすべて無効となり、ゼロからカウントし直すことになります。これが民法上の「時効の更新」(旧用語:時効の中断)です。

時効の完成間近になってからこれらに該当する行為を行ってしまうと、これまでの期間が水の泡になってしまうため、正確な知識を持っておくことが不可欠です。

時効をリセットさせる3大行為の詳細

時効の更新事由は法律で厳格に定められていますが、実務上特に警戒すべきものは大きく分けて3つあります。

1. 裁判上の請求(訴訟提起や支払督促など)

債権者は、時効の完成を防ぐため、あるいは回収を行うために裁判所を利用して法的請求を行います。これが「裁判上の請求」です。

  • 訴訟の提起:債権者が裁判所に貸金返還請求訴訟を起こし、それが受理された場合。
  • 支払督促:簡易裁判所を通じて債務者に支払いを命じる手続き。
  • 調停の申し立て:裁判所の仲介による話し合いの手続き。

これらの裁判手続きが開始されると、原則としてその係属中は時効の進行がストップ(完成猶予)し、最終的に請求が認められる確定判決や和解などが成立した時点(または支払督促が確定した時点)で、時効が「更新(リセット)」されます。さらに、裁判によって権利が確定した後は、時効期間が新たに10年へと延びることになります。

2. 強制執行・担保権実行(差押えなど)

債権者がすでに判決や公正証書などの債務名義を持っている場合、あるいは担保(不動産抵当権など)を有している場合に行うのが「強制執行」です。

  • 財産の差押え:給与や預貯金、不動産などの財産を差し押さえる手続き。
  • 担保権の実行:抵当権に基づいて担保不動産を競売にかける手続き。

これらを実行・申し立てることにより、時効は更新されます。例えば、借金を長年放置していたところ、突然給与の差押えを受けたという場合、過去の時効期間はリセットされ、そこから再び時効のカウントが始まります。

3. 債務承認(最も起こりやすいリセット事由)

裁判沙汰になっていなくても、日常生活の中で最も頻繁に発生するのが「債務承認」です。民法では、債務者が借金の存在を認める(承認する)ことを、時効の更新事由として定めています。

債務承認に該当する具体的な行為には、以下のようなものがあります。

  • 一部弁済:時効期間が経過しているかどうかにかかわらず、元本や利息の一部を支払うこと。
  • 猶予の申し入れ(分割払いの交渉):「今は払えないので、少し待ってほしい」「毎月1万円ずつなら払えるので分割にしてほしい」と債権者に頼むこと。
  • 覚書や示談書の取り交わし:借金の存在や金額を確認する書面に署名・押印すること。

特に注意が必要なのは、債権者から「少しだけでもいいから返してほしい」「連絡が欲しい」と言われて電話口で返済を約束したり、少額を入金してしまったりするケースです。これにより、法律上は「借金を認めた」とみなされ、完成間近だった消滅時効が完全にリセットされてしまいます。

時効の援用を検討する際の注意点

消滅時効の恩恵を受けるためには、単に期間が経過しているだけでは不十分であり、内容証明郵便等を用いて債権者に対して「時効を援用する」という意思表示を行う必要があります。

時効の援用を行う前段階において、自ら債権者に連絡を入れてしまうと、前述の「債務承認」にあたる発言をしてしまい、時効のチャンスを失うリスクが非常に高くなります。

もし、長期間返済していない借金について督促状や裁判所からの通知が届いた場合は、安易に電話をかけたり、少額を入金したりせず、まずは法的期間の経過やこれまでのやり取りを確認し、慎重に対応することが重要です。

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