保有する「株式・投資信託・国債」の自己破産における換金・処分

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、利息制限法、破産法、民事再生法、および多数の債務整理(任意整理・過払い金回収・個人再生・自己破産)の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q 自己破産をすると、保有している株式や投資信託、国債などの金融資産はすべて没収されて処分されてしまうのですか?
A 【破産財団への組み入れと時価換金】株式や投資信託、国債などの金融資産は原則としてすべて破産財団に組み入れられ、破産管財人の手によって申立時や破産手続開始決定時点の時価で売却・換金処分され、債権者への配当原資となります。
【弁護士への相談による財産保護の検討】自由財産の拡張が認められる例外的なケースを除き、手元に残すことは困難ですが、借金問題の全体像を整理し生活再建をスムーズに進めるためにも、まずは弁護士に無料相談を行い適切な法的手続きと財産管理のアドバイスを受けることを強くおすすめします。

自己破産を検討する際、預貯金や不動産だけでなく、株式や投資信託、国債といった金融資産の扱いは重要な論点となります。現金以外の資産は、債権者に対する公平な配当を実現するため、厳格な法的ルールに基づいて処理されます。

ここでは、証券口座で保有する資産が自己破産の手続きにおいてどのように評価され、換金・処分されるのかについて、実務上の観点から詳しく解説します。

自己破産における金融資産の基本原則

自己破産は、債務者の経済的な再生を図る救済制度であると同時に、残された全財産を債権者に公平に分配する清算手続きでもあります。そのため、債務者が保有している財産のうち、生活必需品などの例外を除き、金銭的価値のあるものはすべて「破産財団」と呼ばれる換金・配当のための財産管理団体に組み入れられます。

株式、投資信託、国債などの有価証券は、容易に市場で売却して現金化できる性質を持つため、原則としてすべて処分の対象となります。

証券口座内の資産はいつの時価で評価されるのか

証券会社に預けている株式や投資信託、国債などの評価額は、日々価格が変動します。破産手続きにおいてこれらがどのように扱われるかは、価格の確定時期が大きく関係します。

  • 評価の基準時点:破産手続開始決定時(または破産申立時)の時価を基準として評価されます。
  • 売却・換金のタイミング:破産管財人が選任される事件(管財事件)の場合、破産管財人の管理のもとで証券口座内のすべての有価証券が売却され、日本円の現金に換価されます。
  • 価格変動のリスク:売却指令が出されるまでの間に株価や基準価額が下落・上昇することがありますが、最終的な換金価格をもとに破産財団が構成されます。

上場株式の処分手順

証券取引所に上場している株式を保有している場合、破産管財人は証券会社に対して処分を命じ、市場価格で速やかに売却します。売却代金は破産管財人名義の口座に移され、破産財団へ組み入れられます。株券が電子化されている現在、証券口座ごとの凍結と売却手続きがスムーズに進められます。

投資信託の処分手順

投資信託(ファンド)についても同様に、解約請求または買戻し手続きが行われます。基準価額に基づいて現金化され、破産財団に組み入れられます。なお、解約に際して信託財産留保額や税金が発生する場合がありますが、それら控除後の純額が換価金となります。

国債・地方債・社債の処分手順

国債などの債券についても、市場価格(あるいは中途換金ルールに基づく価額)で評価され、換金処分されます。個人向け国債なども例外ではなく、原則として換金対象となります。

少額管財事件と財産の処分の流れ

多くの裁判所において、財産がある場合の自己破産は「管財事件」(都市部の裁判所では一定の要件を満たせば「少額管財事件」)として扱われます。

  • 破産管財人の選任:裁判所により弁護士の中から破産管財人が選任されます。
  • 資産の調査と保全:管財人は、すべての金融機関や証券会社に対して残高照会を行い、申告漏れの資産がないか厳しく調査します。
  • 換金処分:確認された株式や投資信託は、管財人の判断と責任において売却・換金されます。
  • 配当の実施:換金された現金やその他の破産財団の財産は、最終的に債権者に対する配当に充てられます。

自由財産の拡張による例外的な救済

破産法には、生活の維持や再スタートのために特定の財産を手元に残すことを認める「自由財産の拡張」という制度が存在します(破産法第34条第4項)。

しかし、株式や投資信託、国債などの投資性資産は、余剰資金で行う性質のものであるため、生活必需品とはみなされません。そのため、これらを自由財産として残すことが認められるケースは極めて稀です。

例外的に、以下のような特定の小規模な積立等を除き、原則として保有を続けることは困難です。

  • 勤め先の財形貯蓄などで、会社の方針や契約上どうしても直ちに解約できない特別な事情がある場合(ただし換金不可能な期間の評価額に応じた調整が行われます)。
  • 裁判所の運用や管財人の裁量において、換価価値が極めて少額(例えば数千円程度)であり、換金にかかる費用や手間の方が上回ると判断される場合。

実務上の注意点とペナルティに関する誤解

株式や投資信託を保有している方が自己破産を申し立てる際、実務上特に注意すべき点があります。

財産隠しの厳禁

「破産すればどうせ没収されるなら、事前に売却して現金で隠しておこう」あるいは「親族の口座に移しておこう」といった行為は絶対に避けるべきです。これらは「財産隠し」(詐破罪に該当する可能性もある重大な違反行為)とみなされ、免責不許可事由(借金がゼロにならない理由)に該当するだけでなく、破産犯罪として刑事罰の対象になるおそれがあります。すべての資産は包み隠さず裁判所と破産管財人に申告しなければなりません。

家族名義の口座における注意

債務者本人の名義ではなく、配偶者や子供の名義であっても、実質的な資金拠出者が債務者である場合(名義預金や名義株など)は、実質的に債務者の財産と判断され、破産財団の組み入れ対象として調査を受けることがあります。透明性の高い正確な資産申告が不可欠です。

まとめ

自己破産手続きにおける株式、投資信託、国債などの金融資産は、例外なく換金処分され、破産財団に組み入れられるのが原則です。これらを隠すことは法的により重い不利益を招く原因となります。

正確な評価や手続きの流れについては、個別の資産状況や裁判所の運用方針によっても異なるため、法務の専門家である弁護士の助言を仰ぎながら、適正かつ誠実に手続きを進めることが何よりも重要です。

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