保有する「暗号資産(ビットコイン等)」の自己破産における処分基準

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、利息制限法、破産法、民事再生法、および多数の債務整理(任意整理・過払い金回収・個人再生・自己破産)の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q 自己破産するとビットコインやイーサリアムなどの暗号資産(仮想通貨)は没収されてしまいますか?
A 【自己破産における暗号資産の処分基準】保有する暗号資産は原則として換金処分の対象となり、取引所での評価額が20万円を超える場合は破産管財人によって日本円に換金され、債権者への配当原資(破産財団)に組み入れられます。なお、評価額の算定基準日は原則として破産手続開始決定時の時価となります。
【正確な申告と弁護士に依頼するメリット】暗号資産の隠匿や意図的な申告漏れは免責不許可事由や処罰の対象となるため正確な申告が不可欠です。事前の財産評価や適切な財産管理、迅速な手続きを進めるためにも、まずは借金問題に精通した弁護士へ無料相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。

自己破産における暗号資産(仮想通貨)の法的位置づけ

近年のデジタル資産の普及に伴い、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産を保有した状態で自己破産を申し立てる事例が増加しています。破産法において、暗号資産は財産的価値を持つものとして扱われます。現金や預貯金、株式などと同様に、破産者の財産(破産財団)を構成する要素となります。

そのため、自己破産を申し立てた場合、債務者が保有しているすべての暗号資産は裁判所に申告する義務があります。これを隠匿したり、申告を意図的に漏らしたりした場合には、免責不許可事由に該当するだけでなく、破産犯罪として処罰の対象になるおそれもあるため、正確な申告が不可欠です。

処分基準と評価額20万円の壁

破産手続きにおいて、保有資産の処分基準を分ける重要な目安として20万円ルールが存在します。

  • 評価額が20万円以下の場合:管財事件ではなく、同時廃止事件として処理される可能性が高まります。この場合、厳密な財産換金が行われないケースもあり、手元に残せる余地が生じることがあります。
  • 評価額が20万円を超える場合:原則として管財事件(または少額管財事件)へと移行します。破産管財人が選任され、取引所の口座から暗号資産をすべて売却して日本円に換金し、破産財団へ組み入れる作業を行います。

なお、評価額の算定基準日は、原則として破産手続開始決定時の時価となります。価格変動が激しい暗号資産の特性上、申し立ての準備段階から決定時にかけて価格が大きく変動し、20万円のラインを跨ぐケースもあるため、専門的な見地での慎重な価格把握が必要です。

取引所ごとの換金手続きと注意点

破産管財人が選任された場合、管財人は次のような手順で暗号資産の換金を進めます。

  1. 国内または海外の暗号資産取引所に対し、破産管財人名義で口座の凍結および残高照会を行う。
  2. 取引所に保管されているビットコインやその他の通貨を、管財人の指示に従って売却し、日本円に換金する。
  3. 換金された日本円を、破産管財人口座へ集約する。

ここで注意すべき点として、自己破産の申し立て前に慌てて暗号資産を売却し、その代金を使って特定の債権者にだけ返済(偏頗弁済)したり、家族に隠したりする行為は厳に慎むべきです。こうした行為は詐破罪を構成する可能性があり、免責が得られなくなる致命的な原因となります。

コールドウォレット等でオフライン保有している場合の調査

取引所の口座に預け入れられているだけでなく、ハードウェアウォレットやペーパーウォレットなどを用いて、オフライン(自己管理)で暗号資産を保有しているケースもあります。

ブロックチェーン上の取引履歴はすべて公開されているため、過去の入出金履歴や銀行口座からの送金記録をたどることで、破産管財人や裁判所は隠されたウォレットの存在を容易に突き止めることができます。したがって、オフラインで保有している場合であっても、すべての秘密鍵やウォレット情報を正直に申告しなければなりません。申告漏れが発覚した場合は、悪質な財産隠しとみなされ、手続きが極めて不利になります。

まとめ

暗号資産は、自己破産手続きにおいて重要な換金対象財産として厳しくチェックされます。評価額が20万円を超える場合は、取引所口座からの売却・換金を経て破産財団に組み入れられます。手続きを円滑に進め、不測の不利益を避けるためには、正確な時価評価の算定と、隠しごとのない誠実な財産目録の作成が求められます。

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