個人再生の「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」とは?
家を残して借金減額する仕組み

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、利息制限法、破産法、民事再生法、および多数の債務整理(任意整理・過払い金回収・個人再生・自己破産)の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q マイホームを残したままカードローンや借金を減らす方法はありますか?家を取られずに債務整理できる仕組みを教えてください。
A 【住宅ローン特則の仕組みと要件】個人再生の住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用すれば、住宅ローン以外の消費者金融やカードローンなどの借金を原則5分の1から最大10分の1に大幅圧縮しつつ、住宅ローンはこれまで通り支払い続けることでマイホームを手放さずに残すことができます。
【生活再建と弁護士相談のメリット】自己破産のように自宅が競売にかけられるリスクを回避し、住み慣れた家を守りながら生活の立て直しを図ることが可能です。複雑な裁判所の手続きや厳格な要件クリアが必要となるため、まずは弁護士に無料相談し、適用の可否や最適な債務整理プランを確認することをおすすめします。

マイホームを購入したものの、カードローンやクレジットカードの利用がかさみ、借金の返済が困難になってしまうケースは少なくありません。借金問題を解決するために自己破産を選択すると、所有しているマイホームは原則として競売にかけられ、手放さざるを得なくなります。

しかし、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用した個人再生の手続きを行えば、住み慣れた自宅を手元に残したまま、他の無担保債務を法的に大幅圧縮することが可能になります。ここでは、この住宅ローン特則の仕組みや利用するための要件、実務上の注意点について詳しく解説します。

住宅ローン特則(住宅資金特別条項)の基本的な仕組み

個人再生は、裁判所を利用して借金全体の総額を原則として5分の1から最大10分の1程度(最低弁済基準額による)に圧縮し、それを原則3年間(最長5年間)で分割返済していく法的手続きです。

通常の個人再生では、すべての債権者を平等に扱う必要があるため、住宅ローンも圧縮や整理の対象に含まれてしまいます。住宅ローンを整理の対象にしてしまうと、担保権を実行されて自宅が差し押さえられ、競売によって強制的に追い出されてしまいます。

そこで例外的に設けられたのが住宅ローン特則です。この特則を利用すると、住宅ローン債権者は圧縮の対象外(除外)となり、これまで通り約束通りの契約内容で返済を継続することができます。その一方で、消費者金融や銀行カードローンなどの住宅ローン以外の借金だけを大幅に減額できるため、家計の負担を劇的に軽くすることが可能になります。

住宅ローン特則を利用するための主な要件

住宅ローン特則は非常に強力な制度ですが、誰でも無条件に利用できるわけではありません。法律上、厳格な要件が定められています。主な要件としては以下の点が挙げられます。

  • 再生債務者自身が所有し、居住していること:対象となる住宅は、債務者自身が所有権を持っており、かつ実際に自分で住んでいる(または将来住む予定がある)建物でなければなりません。投資用物件や別荘などは対象外です。
  • 住宅の購入資金やリフォーム資金であること:住宅ローンは、あくまでその自宅の購入や建築、またはリフォームのために金融機関から借り入れたものでなければなりません。例えば、住宅ローンとは別に、その自宅を担保にして事業資金などを借り入れている場合は、原則として特則の対象外となります。
  • 住宅ローンの抵当権が設定されていること:対象の住宅に、住宅ローン債権者を抵当権者とする抵当権が登記されている必要があります。また、後順位の抵当権者(2番抵当権など)がいる場合は、その同意が必要になるケースがあります。
  • 住宅ローン以外の担保権がついていないこと:税金の滞納による差し押さえなど、住宅ローン以外の理由でその家が差し押さえられていないことが必要です。

滞納がある場合の注意点と解決策

住宅ローンの返済がすでに滞っている場合でも、一定の条件を満たしていれば住宅ローン特則を利用できる場合があります。ただし、放置しておくと手遅れになるため注意が必要です。

個人再生の申し立てを行う直前まで長期間にわたって住宅ローンを滞納していると、金融機関から一括返済を求められたり、競売の手続きが進められたりします。

住宅ローン特則では、滞納している返済分(遅延損害金や滞納利息を含む)を、再生計画の認可決定までの間に何らかの方法で解消するか、あるいは個人再生の再生計画の中で数年間にわたって分割して支払い直す(リスケジュールする)ことが認められています。これを「リスケジュール型の特則」と呼びます。ただし、通常の住宅ローン返済に加えて滞納分の分割支払いも上乗せされるため、再生期間中の毎月の返済額が重くなる点には十分なシミュレーションが必要です。

住宅ローン特則を利用する際の実務上の注意点

住宅ローン特則を利用するにあたっては、法務実務上、いくつかの重要な注意点があります。

第一に、保証人への影響です。住宅ローンに親族などが保証人や連帯保証人として入っている場合、個人再生で住宅ローン特則を利用して本人がそのままローンを支払い続ければ、保証人に請求がいくことは原則としてありません。しかし、保証人が付いている他の消費者金融等の借金については、個人再生によって本人の借金は減額されますが、保証人には一括請求が及ぶため、事前に保証人への十分な説明と配慮が必要となります。

第二に、住宅ローンの完済年齢や収入の安定性です。住宅ローン特則を利用する場合、原則としてローンの残期間や契約内容が大きく延長されるわけではありません(一部の例外を除き、当初の契約通りの終期を維持するのが基本です)。そのため、残りの返済期間や将来の収入見込みを考慮し、本当に完済まで無理なく支払い続けられるかどうかの厳格な審査が裁判所や監督委員によって行われます。

まとめ

住宅ローン特則(住宅資金特別条項)は、マイホームを手放したくないという方にとって非常に有効な債務整理の選択肢です。自宅という生活基盤を死守しながら、他の膨れ上がった借金を合法的に圧縮し、経済的な再スタートを切ることができます。

一方で、法律上の要件は非常に複雑であり、不動産の登記状況や住宅ローンの契約内容、滞納状況などを正確に調査・分析した上で申し立てを行う必要があります。自宅を守りつつ借金問題を根本的に解決したい場合は、正確な法的知識に基づいた慎重な手続きの選択が不可欠となります。

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