「可処分所得の2年分」が高すぎて給与所得者等再生を使えない時の対抗

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、利息制限法、破産法、民事再生法、および多数の債務整理(任意整理・過払い金回収・個人再生・自己破産)の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q 給与所得者等再生で「可処分所得の2年分」が高すぎて返済計画が立てられない場合、どうすればよいですか?
A 【対抗策の要点】給与所得者等再生の可処分所得の算出額が過度に高額で返済が困難な場合、債権者の過半数の不同意リスクがない限り、原則として「小規模個人再生」への切り替えを検討するのが最も有効な法的手法です。小規模個人再生であれば可処分所得の要件が適用されないため、最低弁済基準額や保有資産額(清算価値)を基準にした現実的な額へと大幅に返済負担を軽減できる可能性があります。
【弁護士介入のメリット】収入や経費の再計算、裁判所を通した適切な手続き選択、さらに受任通知の送付による借金の取り立て・督促の即日停止が行われます。個人再生は必要書類や法的要件が極めて複雑なため、債務整理に精通した弁護士に早期に相談することで、財産を守りながら無理のない返済計画と生活再建を確実に実現できます。

個人再生手続きには、大きく分けて「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類が存在します。安定した収入がある給与所得者であれば、原則としてどちらの利用も視野に入りますが、給与所得者等再生特有の要件である「可処分所得の2年分」の算出結果があまりにも高額になり、再生計画案の履行が現実的ではないケースが見受けられます。

本記事では、この可処分所得の壁に阻まれた際にどのような法的手法や実務上の対抗策が考えられるのかを詳しく解説します。

給与所得者等再生における「可処分所得の2年分」の壁

給与所得者等再生では、一般的な最低弁済基準額(債務総額や保有資産額に基づく基準)だけでなく、「可処分所得の2年分以上の金額を弁済しなければならない」という独自の要件が課されます。

可処分所得とは、年間の収入から税金や社会保険料、そして法律で定められた生活維持費(政令で定められた額)を差し引いた残額を指します。この可処分所得の2年分が、通常の最低弁済額や清算価値(保有資産の総額)よりも高くなる場合、その高額な金額を原則3年間(最長5年間)で分割して返済し続けなければなりません。

この要件により、収入が比較的多い場合や、生活維持費が低く算定されてしまう単身者の場合、通常の自己破産や任意整理、あるいは小規模個人再生と比較して、かえって返済負担が重くなるという矛盾が生じることがあります。

対抗策1:小規模個人再生への切り替え

可処分所得の2年分が高すぎて給与所得者等再生の計画が成り立たない場合の最も強力な対抗策は、小規模個人再生への切り替え(または最初からの選択)です。

小規模個人再生のメリット

  • 可処分所得の要件が適用されないため、計算上の高額な2年分縛りから解放される。
  • 最低弁済基準額(借金総額に応じた圧縮率)と清算価値のいずれか高い方の額を返済すればよいため、弁済額を大幅に抑えられる可能性がある。

小規模個人再生における最大のハードル

小規模個人再生では、「債権者平等の原則」と「債権者の過半数による不同意がないこと(議決権者数および議決権額の過半数の反対がないこと)」が要件となります。もし借入先の中に反対する意向を示す債権者がいる場合、再生計画案が否決されてしまうリスク(不同意リスク)が存在します。

そのため、小規模個人再生を選択するにあたっては、事前に債権者の性質や過去の対応実績を慎重に見極める必要があります。

対抗策2:不同意リスクの低い債権者構成を見据えた再申請と実務対応

小規模個人再生へ移行する際、または再申請を行う際には、債権者からの不同意を回避するための緻密な戦略が求められます。

  • 官公庁や保証協会等の動向把握: 住宅ローンや公的債権、あるいは保証会社が絡む場合、一定の基準に基づいて賛否を判断することが多いため、事前の傾向分析が不可欠です。
  • 一般債権者の数と額のバランス: 特定の大量債権者が反対に回るリスクを想定し、債権者の頭数や債権額の割合をあらかじめシミュレーションしておきます。
  • 給与所得者等再生と小規模個人再生の併用・選択変更のタイミング: 裁判所の書記官や担当裁判官との協議において、可処分所得要件の不合理性や生活実態に即した弁済計画の妥当性を説明し、適切な手続きへの移行を進めます。

収入や経費の計算における適正化の確認

可処分所得が高くなりすぎる原因の一つに、「必要経費や生活維持費の計算における見落とし」「収入の過大評価」が隠されているケースもあります。

可処分所得の算定では、年間の総収入から控除できる項目(税金や社会保険料など)が厳密に定められています。もし源泉徴収票や確定申告書の数値に誤りがあったり、特殊な事情による必要経費が十分に反映されていなかったりする場合、正しい数字に修正することで算定される可処分所得の額を引き下げられる可能性があります。

申告内容や家計簿の記載に漏れがないか、法律上の控除項目を正確に網羅できているかを今一度見直すことが、結果的に高すぎる基準への対抗策となります。

まとめ

給与所得者等再生において「可処分所得の2年分」が高すぎて利用できない場合は、小規模個人再生への切り替えを検討することが王道のアプローチとなります。

ただし、小規模個人再生には債権者による不同意リスクが伴うため、債権者の構成や反対リスクを十分に分析した上で手続きを進める必要があります。自らの収入状況、資産状況、そして債権者の顔ぶれを総合的に見極め、無理のない債務整理のルートを選択することが、生活再建への確実な一歩となります。

TOP