自営業者・フリーランス・個人事業主が利用できるのは「小規模個人再生」のみ

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、利息制限法、破産法、民事再生法、および多数の債務整理(任意整理・過払い金回収・個人再生・自己破産)の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q 自営業者やフリーランスが個人再生をする場合、どの手続きを選べばいいですか?給与所得者等再生は使えないのでしょうか?
A 【結論】自営業者やフリーランス、個人事業主が利用できる個人再生の手続きは、原則として「小規模個人再生」のみとなります。
【詳細と対策】収入の変動が大きい自営業者は法律上の要件を満たさないため「給与所得者等再生」は選択できません。小規模個人再生では借金を大幅に圧縮しつつ事業を継続できますが、債権者の過半数の反対がないことや安定した収入基盤の証明が必要です。複雑な要件や手続きをスムーズに進め、事業と生活を立て直すためにも、まずは借金問題に精通した弁護士への無料相談をご検討ください。

自営業者やフリーランス、個人事業主が借金の返済に窮したとき、事業や財産を守りながら債務を大幅に圧縮できる法的手続きとして個人再生があります。

しかし、個人再生には小規模個人再生給与所得者等再生の2つの種類が存在し、誰でもどちらでも自由に選べるわけではありません。特に自営業者の場合、法律上の要件により利用できる手続きが制限されます。

ここでは、自営業者・フリーランスが小規模個人再生しか利用できない理由と、手続きを進める上での実務的なポイントについて詳しく解説します。

個人再生の種類と自営業者の選択肢

個人再生は、裁判所の認可を得て借金の総額を原則として5分の1から最大10分の1程度に減額し、それを原則3年間(最長5年間)で分割返済していく手続きです。この手続きには以下の2種類があります。

  • 小規模個人再生:主に自営業者やフリーランス、個人事業主向けの制度。一般の債権者による議決権行使(反対意見の有無)のプロセスがある。
  • 給与所得者等再生:サラリーマンや公務員など、給与等の変動の少ない継続的な収入を得ている人向けの制度。債権者の反対意見を聞くプロセスがない代わりに、可処分所得の額に合わせた返済額を算定する。

法律の規定により、給与所得者等再生を利用できるのは「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みのある者で、かつ、その額の変動の範囲が小さく見込まれるもの」に限定されています。

なぜ自営業者は給与所得者等再生を利用できないのか

自営業者やフリーランス、個人事業主の収入は、景気の動向、取引先の状況、季節的な需要の変化などによって大きく変動します。毎月一定の給与が支払われる会社員とは異なり、売上から経費を差し引いた手元に残る利益(所得)は一定ではありません。

そのため、裁判所や法律の運用において、自営業者は「収入の変動の範囲が小さい」という要件を満たさないと判断されます。

仮に、毎月安定して一定の売上があるように見えるフリーランスであっても、法的な位置づけとしては事業所得者であるため、原則として給与所得者等再生の申し立ては認められません。したがって、自営業者が選択できる個人再生の手続きは、実質的に小規模個人再生のみとなります。

小規模個人再生の仕組みと自営業者がクリアすべきハードル

小規模個人再生は、小規模な事業者だけでなく、会社員やアルバイトなども利用できる一般的な個人再生の手続きです。しかし、自営業者がこの手続きを利用して借金を減額するためには、いくつかの重要なハードルをクリアする必要があります。

1. 債権者の意見聴取(書面決議)

小規模個人再生の最大の特徴は、再生計画案に対して、官報に公告された再生債権者らが異議を述べる機会がある点です。

具体的には、以下の条件を満たしてしまうと、再生計画案が不認可となってしまいます。

  • 議決権を持つ債権者の頭数の過半数が反対していないこと
  • 反対した債権者の債権額の合計が、全再生債権者の債権額の総額の2分の1を超えていないこと

消費者金融や銀行などの金融機関が相手であれば、過去に大きなトラブルがない限り、法律に従った適正な再生計画案に対して反対しないことが一般的です。しかし、個人的な借入(知人や親族からの借金)や、個人の取引先などが債権者に含まれている場合、反対に回るリスクがあるため注意が必要です。

2. 安定した収入の証明

小規模個人再生では、減額された借金を原則3年間(最長5年間)にわたって毎月確実に返済していく能力が求められます。

自営業者の場合、給与明細のような明確な証明書類がないため、以下の資料等をもとに、将来にわたって継続的かつ安定した収入を得られる見込みがあることを裁判所に示さなければなりません。

  • 確定申告書(直近数年分)
  • 帳簿書類や売上台帳
  • 現在の取引状況や契約書
  • 収支予定表

赤字経営が続いていたり、収入の波があまりにも激しかったりする場合、「返済計画の遂行可能性がない」と判断されてしまい、再生計画が認可されないおそれがあります。そのため、必要に応じて事業の立て直し計画なども併せて準備することが実務上重要となります。

まとめ

自営業者、フリーランス、個人事業主が借金問題の解決手段として個人再生を選ぶ場合、選べるのは原則として小規模個人再生のみとなります。

収入の変動が大きいという事業特性があるため、給与所得者等再生の要件を満たさない反面、小規模個人再生では債権者の同意(反対がないこと)や、今後の安定した返済能力の証明が厳しく審査されます。

手続きを円滑に進め、事業を継続しながら経済的再建を果たすためには、正確な収支の把握と、法律の規定に則った綿密な再生計画案の作成が不可欠です。事業主特有の財産関係や複雑な債権者との関係を整理しつつ、慎重に準備を進めることが求められます。

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