サービサーへ電話して「分割で払うので待って」と言ってしまった時の時効更新

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、利息制限法、破産法、民事再生法、および多数の債務整理(任意整理・過払い金回収・個人再生・自己破産)の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q サービサーからの督促電話で「分割で払うので待ってほしい」と言ってしまったのですが、消滅時効はリセットされてしまいますか?
A 【時効更新(リセット)のリスク】サービサーとの電話で「分割で払う」「少し待ってほしい」と伝える行為は、法律上の「債務の承認」に該当します。これにより、それまで経過していた消滅時効期間がリセットされ、ゼロから再スタートしてしまうリスクが極めて高くなります。
【弁護士による法的な抗弁と解決策】発言の状況や音声記録の有無、相手側の主張内容によっては、法的な抗弁や交渉の余地が残されている場合があります。不用意な追加の発言を控えて早めに弁護士へ相談し、時効援用の専門的な手続きや督促の差し止めを進めることが重要です。

消滅時効期間が経過している古い借金について、サービサー(債権回収会社)から突然督促の連絡が入ることがあります。その際、驚きや焦りから不用意に「少しずつなら払えます」「分割にして待ってください」と言ってしまうケースは少なくありません。

この何気ない一言が、借金の法的性質において非常に重い意味を持つことがあります。本記事では、電話での発言が消滅時効に与える影響と、時効更新を主張された場合の専門的な対応策について解説します。

サービサーへの電話発言が「債務の承認」になる理由

民法上、消滅時効の完成猶予や更新事由の一つとして「承認」が定められています。債務者が債権者に対して、自分に債務があることを認める旨の意思表示をすることを債務の承認と呼びます。

サービサーからの電話に対して以下のような発言をすると、債務の承認とみなされる可能性が極めて高くなります。

  • 「今は払えないが、来月になれば分割で支払える」
  • 「少し待ってほしい、まとまったお金ができたら払う」
  • 「元本だけなら返すので、利息や遅延損害金をまけてほしい」

これらはすべて、「債務が存在することを前提とした、支払いの猶予や減免の要請」にあたるため、法律上は借金を認めた(=承認した)ものとして扱われます。その結果、それまで経過していた時効期間はリセットされ、ゼロからの再スタートになってしまいます。

電話での会話における録音リスクと証拠化

サービサーは債権回収のプロフェッショナルであり、督促業務の電話の多くは通話内容が録音されています。

もし電話口で「分割で払います」と言質を取られてしまうと、その音声データは強力な債務承認の証拠として保存されます。後から「そんなつもりは言っていなかった」「脅されて言わされた」と主張しても、録音データが存在する場合には覆すことが非常に困難になります。

そのため、長期間返済をしていない古い借金についての督促状や電話があった場合は、ご自身の判断で安易に連絡を入れたり、返済の約束をしたりすることは避けるべきです。

時効更新を主張された場合の弁護士による抗弁交渉

サービサー側が「電話で分割返済の約束をした(=時効の更新があった)」と主張してきた場合であっても、直ちに諦める必要はありません。専門的な法務知識を持つ代理人が介入することで、以下のような観点から交渉や反論の余地を検討します。

1. 通話内容の正確性と法的評価の精査

サービサーから提供される録音記録やメモを確認し、本当に明確な「債務の承認」にあたる発言がなされていたのかを厳密に精査します。

単に状況を確認されただけであったり、具体的な返済期日や金額の合意に至っていなかったりする場合、法律上の「承認」とは評価されないケースもあります。

2. 脅迫や誘導による発言の主張

深夜の自宅への執拗な連絡や、高圧的な態度によって半ば強制的に言わされた発言である場合、意思表示の瑕疵(脅迫や心理的圧迫によるもの)を理由に、その有効性を争う余地が検討されることもあります。

3. 消滅時効以外の債務整理手段の活用

仮に時効の更新が確実であり、時効援用による解決が難しいと判断された場合でも、任意整理や個人再生、自己破産といった他の債務整理手続きに切り替えることで、月々の負担を法的に軽減することが可能です。サービサーとの個別交渉や法的手続きを通じて、生活の立て直しを図ることができます。

まとめ

サービサーからの督促電話で「分割で払う」と伝えてしまうと、消滅時効が更新されてしまう大きな法的リスクが生じます。万が一そのような発言をしてしまった場合でも、記録の詳細な確認や、状況に応じた柔軟な法務対応によって解決の糸口を探ることは可能です。古い借金や時効に関する通知が届いた際は、不用意な発言や連絡を控えることが何よりも重要となります。

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