【早期解決と法的拘束力】双方の合意に至れば「裁判上の和解調書」が作成されて事件が円満に終了します。過払い金請求や借金返済の減額・分割交渉を有利かつ確実に行うためには、法的な知識が不可欠となるため、弁護士などの専門家に相談して代理交渉を依頼することを強くおすすめします。
過払い金返還請求や借金の返済をめぐる裁判において、訴状が届いた被告が答弁書に「和解を希望する」と記載して提出するケースは少なくありません。裁判を徹底的に争うのではなく、話し合いによって早期に解決を図りたい場合の一般的な選択肢となります。
答弁書に和解希望の旨を記載して提出した後、裁判所や相手方(原告)との間でどのような手続きが進行するのか、実務上の流れを詳しく解説します。
答弁書提出後の基本的な裁判所の進行
答弁書が裁判所に提出されると、事件は本格的な審理フェーズではなく、和解に向けた調整フェーズへと移行するケースが一般的です。
第一回期日の扱いと期日出頭の要否
訴状に記載されている第一回期日(口頭弁論期日)は、多くの場合、被告が法廷に出頭しなくても裁判所が答弁書の内容を陳述したものとみなす「擬制陳述(ぎせいちんじゅつ)」の処理が行われます。
- 答弁書に「和解を希望する」「原告との間で話し合いによる解決を望む」と明確に記載していれば、初回からいきなり判決が言い渡されることはありません。
- 弁護士や司法書士を代理人として選任している場合、初回期日は代理人が出席するか、あるいは書類上の手続きだけで済むため、本人が直接法廷に出向く必要がないことがほとんどです。
電話会議システムや書面による協議
昨今の裁判実務では、法廷での対面による審理だけでなく、電話会議システム(遠隔地からの電話参加)やウェブ会議システム、あるいは書面のやり取りによって和解の協議が進められることが増えています。
- 裁判官を仲介役として、あるいは当事者間での直接交渉の期間として、一定の猶予期間(数週間から1ヶ月程度)が設けられます。
- この期間内に、被告側(または被告代理人)から原告側に対して、具体的な和解案や支払いの意思表示がなされます。
期日や協議における具体的な話し合いの内容
和解を前提とした協議において最も重要な焦点となるのは、和解金の金額と支払い方法(分割回数など)の二点です。
一括返済か分割返済かの協議
過払い金の返還請求裁判などの場合、原告側(消費者側)は原則として一括返済を求めることが多いですが、被告側の資力状況によっては分割払いが検討されます。
- 分割回数については、通常は3回から最大で12回程度(事案や金額によってはさらに長期)の範囲で協議されることが多いです。
- 分割払いの合意をする場合、「毎月末日までに金〇万円ずつ支払う」といった具体的な弁済スケジュールを明確にします。
期限の利益喪失条項の付帯
分割払いで和解をする場合、和解条項の中に「期限の利益喪失条項(きげんのりえきそうしつじょうこう)」が盛り込まれるのが通例です。
- これは、分割金の支払いを一度でも怠った場合、残額を一括して直ちに支払わなければならないという条件です。
- この条項があることにより、和解後に約束が破られた際、原告側はすぐに強制執行(財産の差し押さえ等)の法的手続きに移ることが可能になります。
和解成立から裁判終了までの流れ
双方の合意がまとまると、正式な和解調書が作成され、裁判は終了に向かいます。
和解調書の作成
和解内容について原告・被告(またはその代理人)の合意が成立すると、裁判所がその内容を記載した「和解調書(わかいちょうしょ)」を作成します。
- 和解調書は、確定判決と同一の強い法的効力(債務名義)を持ちます。
- 万が一、取り決めた期日に支払いがされなかった場合、裁判を起こし直すことなく、給与や預貯金などの差し押さえ強制執行を申し立てることが可能になります。
訴えの取り下げまたは和解による終了
和解条項に合意し、調書が作成されると、裁判は実質的に解決(結審)となります。
- 和解金が一括で即座に支払われるケースでは、入金を確認した後に原告側が「訴えの取り下げ」を行うこともあります。
- 分割払いの長期和解の場合は、和解調書に基づく形で事件が終了し、最後の支払いが完了するまで和解条項が効力を持ち続けます。
和解交渉における実務上の注意点
答弁書で「和解を希望する」と意思表示をした後、放置しているだけでは自動的に有利な条件で和解がまとまるわけではありません。
- 相手方代理人(原告側の弁護士等)から連絡や和解案の提示があった場合は、誠実かつ迅速に対応することが求められます。
- 無理な分割回数や現実的ではない金額を提示しても合意に至らないため、自身の経済状況に見合った現実的な返済計画や和解案をあらかじめ想定しておくことが大切です。
- 裁判所からの通知や期日指定の書類が届いた際は、内容をしっかりと確認し、期限内に必要な書面を提出するよう注意してください。