「ボーナス(賞与)・退職金」に対する給与差押えの適用(手取りの1/4〜1/2)

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、利息制限法、破産法、民事再生法、および多数の債務整理(任意整理・過払い金回収・個人再生・自己破産)の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q 借金の滞納で給与が差し押さえられた場合、毎月の給与だけでなくボーナスや退職金も対象になってしまうのでしょうか?
A 【差押えの範囲】借金の滞納による強制執行では、毎月の給与だけでなくボーナス(賞与)や将来受け取る退職金も差押えの対象に含まれます。原則として税金や社会保険料を控除した手取り額の4分の1(高額な場合は2分の1)が差し押さえられ、勤務先を通じて債権者に支払われます。
【生活再建と弁護士相談】給与やボーナスへの差押えを回避・解除するには、債権者との個別交渉による和解や、裁判所を介した任意整理・自己破産・個人再生などの債務整理手続きが必要です。弁護士に相談し受任通知を発送することで、督促や法的手続きを速やかにストップし、生活の立て直しを図ることができます。

借金の返済を滞納し、債権者から裁判上の請求や支払督促の申し立てを経て債務名義(判決や和解調書など)を取得されると、最終的に給与や財産の差押え(強制執行)が行われます。

多くの人が「毎月の給料」だけが差押えの対象になると誤解しがちですが、実際にはボーナス(賞与)や退職金も給与等の一部として法的な差押えの対象に含まれます。本記事では、ボーナスや退職金に対する差押えの仕組みと計算方法、生活への影響について法務の観点から解説します。

ボーナス(賞与)に対する給与差押えの仕組み

民事執行法において、給与や賞与、退職金などの継続的給付に対する債権は、まとめて「給与等」として扱われます。そのため、毎月の給与に対して行われた差押えの効力は、その後に支給されるボーナスにも及びます。

差押えの範囲(手取りの4分の1)

  • 原則として、ボーナスの支給額(手取り額)の4分の1が差押えの対象となります。
  • ただし、手取り額が非常に高額である場合(政令で定める金額、通常は月給換算で約60万円を超える部分など)は、2分の1までが差押えの対象となります。
  • 差押えの計算の基礎となるのは、税金や社会保険料を控除した後の「手取り額」です。

毎月の給与からすでに4分の1が差し押さえられている場合であっても、ボーナスが支給される月には、そのボーナスの手取り額に対しても同様に4分の1(または2分の1)の差押えが実行されます。

退職金に対する給与差押えの仕組み

退職金も給与の性質を持つ後払い賃金とみなされるため、差押えの対象となります。ただし、退職金はその性質上、老後の生活資金としての重要性が高いため、通常の給与とは異なる保護規定が存在します。

退職金差押えの具体例と割合

  • 退職金についても、原則として支給額(手取り額)の4分の1が差押えの対象となります。
  • 将来受け取る予定の退職金自体をあらかじめ差し押さえることは、確実な金額が確定していないため原則としてできません(退職手当等債権の差押え)。
  • 実際に退職金が支給されるタイミング、あるいは退職が決まって金額が具体化した段階で、裁判所を通じて差押命令が発令されます。

中小企業退職金共済制度(中退共)などの外部積立型の退職金についても、受給権が発生した段階で差押えの対象となるケースがあります。

給与・ボーナス・退職金差押えがもたらす影響

給与差押えの大きな特徴は、裁判所から勤務先(会社)に対して直接「差押命令書」が送達される点です。これにより、勤務先が債権者の代わりに給与やボーナスの一部を天引きして支払う義務を負うことになります。

勤務先に借金が発覚する

給与差押えが行われると、会社人事部や経理部を通じて手続きが進められるため、勤務先に借金の滞納や裁判上のトラブルがあることが確実に発覚します。懲戒解雇などの不利益を受けることは法律上制限されていますが、社内での信用低下や精神的な負担は避けられません。

生活費の急激な不足

毎月の給与に加え、ボーナスからも強制的に一定割合が天引きされるため、家計の資金繰りが急速に悪化します。生活維持が困難になるほどの打撃を受けることが少なくありません。

差押えを回避・解除するための法的手続

一度開始された給与・ボーナス・退職金の差押えを自力で止めることは、債権者と個別に全額一括返済の合意をするか、全額を完済する以外に原則として方法はありません。

しかし、法的整理の手続きを活用することで、状況を根本から解決または一時的に停止させることが可能です。

任意整理による解決

弁護士や司法書士に依頼して任意整理の受任通知を債権者に発送すると、通常は取立行為や訴訟手続が一時中断します。ただし、すでに給与差押えの「差押命令」が確定して実行されている段階では、任意整理の交渉だけでは差押えを直接止めることが難しいため、通常は個人再生や自己破産といった裁判所を介した手続きが検討されます。

個人再生・自己破産による差押えの効力停止

裁判所に対して個人再生や自己破産の申し立てを行い、「破産手続開始決定」や「個人再生の開始決定」、あるいは強制執行の「中止命令」を得ることができれば、給与やボーナスに対する差押えの効力をストップさせることができます。 すでに差し押さえられて会社に留保されている金員についても、状況に応じた法的対応により回収や解除の道を探ることが可能です。

まとめ

ボーナスや退職金に対する給与差押えは、毎月の給与と同様に手取り額の4分の1が対象となります。ボーナス支給月には一時的に大きな金額が差し押さえられるため、生活への影響が非常に大きくなります。

給与やボーナスの差押予告通知が届いた段階、あるいはすでに差押えが実行されてしまった段階であれば、放置するほど状況は悪化します。手遅れになる前に、債務整理に関する法的な専門知識を持つ専門家へ早めに状況を説明し、適切な法的措置を講じることが重要です。

TOP