【生活再建と弁護士相談のメリット】給与差押えを受けるほどの状況は、従業員本人の借金問題がすでに深刻化しているサインです。会社からの通知や社内でのトラブルを防ぎつつ根本的な解決を図るためには、弁護士に依頼して任意整理や自己破産、個人再生などの債務整理を速やかに進めることが不可欠です。弁護士が介入することで、督促や差押えを停止させ、借金の減免や生活再建に向けた法的なサポートを受けることができます。
会社宛てに裁判所から特別送達で「債権差押命令正本」が届いた場合、総務部や人事部の担当者は突然の通知に戸惑うことがあります。しかし、これは従業員の借金や税金滞納等に関して裁判所が下した法的な強制執行命令であり、会社側には厳格な対応義務が生じます。
放置すると会社が法的な責任を問われるリスクもあるため、正確な実務知識を持って対処する必要があります。
債権差押命令が届いたときに会社総務部が最初に行う確認
裁判所から書類が届いたら、まずは内容を精査し、誰に対するどのような申し立てであるかを確認します。
- 事件番号と当事者の確認:差押えの対象となっている従業員(第三債務者に対する被保険者・被雇用者)が本当に在籍しているか確認します。
- 差押債権者の確認:どの債権者(銀行、消費者金融、サービサー、市区町村など)からの申し立てであるかを確認します。
- 請求金額の確認:執行対象となる総額(債権額および執行費用)を確認します。
なお、この段階で従業員本人を呼び出し、差押えの事実を伝えて事情を確認することも重要ですが、会社としての法的義務の履行は従業員の同意の有無に関わらず進めなければなりません。
給与差押えにおける「天引き計算」の法的ルール
給与や賞与などの債権が差し押さえられた場合、全額を天引きできるわけではありません。生活保護法等の趣旨を踏まえ、法律によって差押えが禁止されている範囲(差押禁止債権)が定められています。
給与支給額に応じた計算方法
- 手取り額が44万円以下の場合原則:手取り額(所得税や社会保険料などを控除した残額)から33万円を控除した残額が差押えの対象となります。つまり、手取りが33万円以下の場合は、原則として給与を差し押さえることはできません。
- 手取り額が44万円を超える場合:手取り額の4分の1を超える部分が差押えの対象となります(ただし、養育費や婚姻費用などの家族法上の債権の場合は、上限が手取りの2分の1に引き上げられます)。
総務担当者は、この法定計算式に則り、毎月の給与からいくらを控除して債権者に支払うべきかを正確に算出する必要があります。
裁判所と債権者への「陳述書」返送実務
債権差押命令正本には、通常「陳述書」という用紙(または回答書)が同封されています。第三債務者である会社は、この陳述書に必要事項を記入し、定められた期限内(通常は差押命令送達後から2週間以内など)に裁判所および差押債権者(またはその代理人弁護士・司法書士)の双方へ提出する義務があります。
陳述書に記載する主な項目
- 債権の存否:差押えを受けた従業員が自社に現在在籍しているかどうか。
- 債権の額:将来の給与見込み額や、差押え対象となる具体的な手取り額の概算。
- 他の差押えの有無:すでに別の債権者から差押命令を受けていないか(競合関係の有無)。
この陳述書の内容に虚偽があったり、正当な理由なく提出を怠ったりすると、民事執行法の規定に基づき、会社が損害賠償責任を負う可能性があるため注意が必要です。
実務上の重要な注意点:退職時や複数差押えの処理
給与差押えの執行期間中には、いくつかの実務上のトラブルやイレギュラーが発生することがあります。
従業員が退職した場合
差押えの通知が届いた後に従業員が退職や解雇となった場合、会社はもはや給与を支払う義務がなくなるため、その旨を速やかに裁判所と差押債権者に書面で届け出る必要があります。退職日や最終給与(退職金含む)の算定額についても正確に報告します。複数の債権者から差押えが届いた場合(競合)
1人の従業員に対し、異なる債権者から次々と差押命令が届く場合があります。これを差押えの競合と呼びます。この状態になると、会社は個別の債権者に直接給与の一部を支払うことができなくなります。 原則として、差押えられた金額分を法務局へ「執行供託」し、その事情を裁判所に届け出なければなりません。供託の手続きは複雑になるため、必要に応じて専門家や裁判所の担当書記官に確認することをおすすめします。まとめ
裁判所からの債権差押命令正本の受領は、会社総務部にとって突発的かつ慎重な対応が求められる業務です。法律で定められた計算ルールに従って正確に給与から控除し、期限内に陳述書を提出することが会社を守る基本となります。法務知識を正しく理解し、冷静に手続きを進めることが求められます。