【財産保護と減額維持のために弁護士へ早めの無料相談を推奨します】退職金の正確な評価額の算出や清算価値保障原則への対策は複雑であるため、借金減額のメリットを最大限に守るためには、債務整理に精通した弁護士へ早期に相談し適切なサポートを受けることが極めて重要です。
個人再生手続きを進める際、避けて通れない重要な概念が清算価値保障原則です。これは、自己破産をした場合に債権者に配当されるであろう財産の総額(清算価値)以上の金額を、個人再生の弁済金として支払わなければならないというルールです。
この清算価値を計算する上で、多くの債務者が不安を抱く資産の一つが退職金です。将来受け取る予定の退職金がどのように評価され、再生計画に影響を与えるのか、実際の事例を交えて法的な仕組みを解説します。
個人再生における退職金の評価方法と清算価値
退職金は、現時点で実際に手元にある現金や預金とは異なり、今会社を辞めた場合にいくら支給されるかという退職金見込み額を基準に評価されます。
実務上、退職金債権は将来の不確実性や税金控除などを考慮し、一律にその見込み額の8分の1(または5分の1)を清算価値として計上するのが一般的です。
- 退職金見込み額が1,600万円の場合、その8分の1である200万円が清算価値として算出される。
- 算出された200万円は、他の預貯金や自動車などの資産価値と合算され、全体の清算価値を構成する。
このように、退職金だけで200万円もの評価額が清算価値に組み込まれると、総弁済額が跳ね上がってしまうのではないかと懸念される方が少なくありません。
最低弁済額との比較:清算価値が上回らないケース
個人再生における総弁済額は、「清算価値」と「法律上の最低弁済額」を比較して、より高額な方の金額に設定されるというルールがあります。
法律上の最低弁済額は、借金の総額(負債総額)に応じて以下のように定められています。
- 負債総額が100万円未満:全額
- 負債総額が100万円以上500万円未満:100万円
- 負債総額が500万円以上1,500万円未満:負債総額の5分の1
- 負債総額が1,500万円以上3,000万円未満:300万円
- 負債総額が3,000万円以上5,000万円未満:負債総額の10分の1
ここで重要になるのが、「清算価値が最低弁済額を下回っている場合」の扱いです。
実際の事例:退職金評価額が最低弁済額枠内に収まったケース
例えば、負債総額が600万円ある債務者のケースを想定します。
- 負債総額600万円に対する最低弁済額:120万円(5分の1ルール)
- 退職金評価額(200万円)やその他の財産を合わせた総清算価値:150万円
この事例では、清算価値(150万円)が最低弁済額(120万円)を上回っているため、原則として総弁済額は150万円に引き上げられることになります。
しかし、もし負債総額が1,200万円であり、法律上の最低弁済額が240万円(5分の1ルール)であった場合はどうでしょうか。
- 退職金評価額を含む総清算価値:200万円
- 法律上の最低弁済額:240万円
このケースでは、退職金評価額が200万円と高額であっても、それが法律上の最低弁済額(240万円)の枠内にすっぽりと収まることになります。その結果、清算価値が最低弁済額を超えることがないため、弁済額が追加で引き上げられることなく、最低弁済額である240万円のままで再生計画が認可されるという現象が起きます。
これが、「退職金評価額が清算価値に組み込まれたが最低弁済額内で収まり認可された」状態の実態です。
退職金を巡る実務上の注意点と対策
退職金評価額が最低弁済額の枠内に収まり、無事に認可を得るためには、正確な資料の準備と適切な申立てが不可欠です。実務上、注意すべきポイントを整理します。
- 退職金証明書の取得:勤務先から「退職金支給見込額証明書」を発行してもらう必要があります。会社の規定に基づき、現在の勤続年数で退職した場合の正確な金額を算出してもらうことが求められます。
- 退職金規程の添付:証明書だけでなく、会社の退職金規程(就業規則の一部)も裁判所に提出し、算定根拠を明らかにしなければなりません。
- 退職金がない場合の対応:会社に退職金制度自体が存在しない場合や、中小企業退職金共済(中退共)などの外部積立で換価が難しい場合の証明方法についても、それぞれの規約に基づいた対応が必要です。
個人再生は、住宅ローンチーやその他の借金を大幅に圧縮しつつ、マイホームなどの財産を手元に残せる非常に有効な法的手続です。退職金という大きな資産がある場合でも、負債総額とのバランスや最低弁済額との比較を行うことで、無理のない返済計画で認可を勝ち取ることが十分に可能です。
正確な資産評価と法的な見通しを立てるためには、個別の負債状況や財産内容に応じた綿密なシミュレーションを行うことが重要となります。