個人再生の「履行テスト(テスト返済・履行可能性テスト)」とは?
実施方法

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、利息制限法、破産法、民事再生法、および多数の債務整理(任意整理・過払い金回収・個人再生・自己破産)の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q 個人再生の「履行テスト(テスト返済)」とは何ですか?どのような目的で実施され、いくら積み立てる必要があるのでしょうか?
A 【履行テストの制度概要と目的】履行テスト(テスト返済・履行可能性テスト)とは、個人再生の認可後に予定されている毎月の分割返済額と同額を、手続期間中(数ヶ月間)に裁判所指定の口座へ毎月積み立てる実技試験のことです。裁判所が、債務者に将来へ向けて安定した収入があり、原則3年から最長5年の長期分割返済を最後まで継続できる経済的信用力・返済能力があるかを厳格に審査するために実施されます。
【積立金の行き先と弁護士相談のメリット】毎月積み立てたお金は消えてなくなるわけではなく、手続が無事に終了した後に原則として手元に戻ってくるか、予納金や管財人費用・将来の弁護士費用などに充てられます。万が一、テスト期間中に積立が遅れたり失敗したりすると、再生計画の認可が下りず個人再生が不認可となる重大なリスクがあります。確実にテストを乗り切るためには、借金問題に精通した弁護士へ早期に相談し、適切な家計管理や法的手続きのサポートを受けることが不可欠です。

個人再生を検討する際、多くの債務者が耳にする重要な実務手続きの一つが履行テスト(テスト返済、あるいは履行可能性テスト)です。個人再生は、借金の総額を大幅に圧縮(原則として5分の1から最大10分の1程度)した上で、それを原則3年間(最長5年間)で分割返済していく法的手続です。

裁判所がこの再生計画を認可するためには、債務者が「将来にわたり継続して収入を得る見込みがあること」、そして「圧縮された債務を確実に完済できる能力があること」を証明しなければなりません。そのための実証試験として行われるのが履行テストです。

ここでは、履行テストの具体的な目的、実施方法、積立金の扱い、そして失敗した場合の法的リスクについて詳しく解説します。

履行テストの目的と法的背景

個人再生の申立てを行うと、裁判所は「本当にこの人は毎月決まった金額を何年も払い続けられるのだろうか」という点を厳格に審査します。どれほど綿密な再生計画案を書類上で作成しても、実際に返済する資力がなければ意味がありません。

そこで、多くの裁判所(東京地方裁判所をはじめとする主要な裁判所)では、再生計画認可前の手続期間中(およそ半年から数ヶ月間)に、実際に将来返済していく予定の金額と同額の現金を、毎月指定された口座へ積み立てさせる運用をとっています。これが履行テストです。

このテストを通じて、家計の収支バランスを見直し、計画通りにお金を残して積立に回す習慣が身についているかを実践的に証明することになります。

履行テストの具体的な実施方法と期間

履行テストの具体的な流れとルールは、おおむね以下のようになります。

  • 対象額の決定: 再生計画案に基づいて算定された「毎月の返済予定額(例:月額4万円など)」がテストの積立額として指定されます。
  • 積立口座の開設と入金: 代理人弁護士または管財人の指定する口座、あるいは自身の専用口座に対して、毎月決められた期日までに指定金額を振り込みます。
  • 実施期間: 申立ての直後から、再生計画が認可されるまでの間(通常は3ヶ月から半年程度、案件によってはそれ以上)継続します。
  • 証拠の提出: 毎月振り込んだことが証明できる通帳のコピーや振込明細書を、裁判所や担当弁護士・管財人に提出します。

よくある疑問:積み立てたお金の行き先は?

履行テストのために毎月積み立てたお金は、裁判所や弁護士が没収するわけではありません。手続が無事に終了し、再生計画が認可・確定した後は、原則として手続費用や将来の返済原資、あるいは債権者への配当原資等に充てられるか、手続終了後に返還・精算されます。そのため、無駄に消えてしまうお金ではなく、将来の返済に向けた貯金としての側面も持っています。

履行テストを失敗・滞納した場合のリスク

履行テストは、単なる形式的な事務手続きではなく、個人再生の成否を分ける極めて重要な試験です。以下のような状況に陥った場合、手続に重大な支障が生じます。

  • 期日までの入金忘れや滞納: 指定された期日までに入金が確認できない場合や、数ヶ月にわたって滞納した場合は、裁判所から「返済能力なし」と判断されるリスクが高まります。
  • 家計の破綻: 積立が原因で生活費が足りなくなり、新たな借入れ(闇金や消費者金融からの借入)に手を出してしまったことが発覚した場合も、手続継続が困難になります。

もし履行テストの期間中に経済的な事情で入金が難しくなった場合は、速やかに担当専門家へ状況を報告し、適切な法的アドバイスを受ける必要があります。正当な理由(予期せぬ減給や医療費の発生など)がある場合は、裁判所と協議の上で対応策を検討することになりますが、単なる管理不足による不履行は自己都合による失敗とみなされやすいので注意が必要です。

履行テストを確実にクリアするためのポイント

履行テストをスムーズに乗り切り、無事に再生計画の認可を得るためには、以下の心構えと対策が重要です。

  • 家計簿の徹底的な見直し: 浪費癖や不要なサブスクリプション契約などを見直し、毎月の積立額が確実に捻出できる生活スタイルへ早めに移行します。
  • 給与振込口座と積立口座の動線確保: 給与が入ったら生活費と積立金を計画的に振り分ける仕組みを作り、うっかり使い込んでしまうリスクを防ぎます。
  • 早期の専門家相談: 申立て前の準備段階から、自身の収入で本当にテストをクリアできるか不安がある場合は、法務の専門家と綿密にシミュレーションを行うことが不可欠です。

履行テストは、債務者にとって負担に感じられることもありますが、見方を変えれば、「借金が大幅に減額された後の新しい生活を安全にスタートさせるための予行演習」でもあります。このテスト期間を通じて健全な家計管理の習慣を身につけることが、再生後の生活再建を成功させる最も確実な近道となります。

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