通勤や仕事・介護で「車が絶対に必要」な場合の個人再生での車維持交渉

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、利息制限法、破産法、民事再生法、および多数の債務整理(任意整理・過払い金回収・個人再生・自己破産)の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q 個人再生をするとローン中の車は引き揚げられてしまう?通勤や介護で絶対必要な場合に手元に残す方法はありますか?
A 【車維持の法的手法】マイカーローンが残る車は原則として引き揚げられますが、ローンの完済や別除権協定の締結、あるいは所有権留保の解除といった実務的な交渉を行うことで、車を手元に残せる可能性があります。
【弁護士への早期相談の重要性】地方都市での通勤や仕事、家族の介護など車が不可欠な事情がある場合、裁判所の運用や個別の状況に応じた適切な法的アプローチが必要です。生活の基盤を守るためにも、まずは弁護士に無料相談を行い最適な解決策を提案してもらいましょう。

地方都市での通勤、日々の営業活動、あるいは要介護者の通院送迎など、生活や仕事の基盤として車が絶対に欠かせないという方は少なくありません。

しかし、住宅ローン以外の一般的なマイカーローンを組んで購入した車には、多くの場合所有権留保という担保が設定されています。

債務整理の一つである個人再生を検討する際、この車がどう扱われるのか、そして車を手元に残すための交渉方法について法的観点から詳しく解説します。

個人再生でマイカーローン中の車がどうなるか

個人再生手続きを弁護士や司法書士に依頼し、裁判所に申し立てを行うと、借金全体の減額や返済計画の再構築が可能になります。

しかし、マイカーローンが残っている車は、法的には信販会社やディーラーが所有権を持っている状態(担保権が設定されている状態)です。

所有権留保と引き揚げのリスク

法的な仕組みとして、ローンが残っている車は別除権の対象となります。

債務整理の手続きが開始されると、ローン会社(債権者)は担保権を行使して車を引き揚げ、売却して残債の回収に充てることが認められています。

そのため、何もしなければ裁判所の申し立てと同時に車を手放さざるを得なくなるのが原則です。

通勤や仕事で必要でも原則は変わらない

「仕事で毎日使っている」「地方で公共交通機関がないため通勤に不可欠である」「家族の介護に車が必須である」という理由があったとしても、法律上の担保権の効力自体が消滅するわけではありません。

したがって、車を維持するためには、法的な制度を活用した特別な交渉や手続きが必要となります。

車を手元に残すための具体的な交渉・解決手法

車をどうしても手放せない場合、いくつかの法的手法や実務上の交渉ルートを検討することになります。

それぞれの条件やメリット・デメリットを理解しておくことが重要です。

ローンの完済時期が近い場合の「自力完済」

個人再生の申し立てを行う直前に、第三者(親族など)の協力を得てマイカーローンの残債を全額一括返済してしまう方法です。

ローンが完済されれば所有権留保が外れ、車は自身の完全な財産(自由財産または清算価値の計算対象)となります。

ただし、個人再生の申し立て直前の偏頗弁済(特定の債権者だけに優先して返済すること)とみなされないよう、事前に専門家へ相談して慎重にタイミングを見極める必要があります。

自動車ローンを完済している場合

もしマイカーローンをすでに完済しており、車検証上の所有者が自分自身になっている場合は、車は引き揚げられません。

ただし、車の査定額(価値)が20万円を超える場合、個人再生の清算価値保障原則に基づき、その車の資産価値が再生計画の弁済総額に上乗せされる点に注意が必要です。

別除権協定の活用

裁判所の運用やローン会社との合意が前提となりますが、別除権協定を結ぶことで車を手元に残せるケースがあります。

  • ローン会社に対して、個人再生手続き中もこれまで通り毎月のローン返済を継続することを申し出る
  • ローン会社がそれに同意し、裁判所の許可が得られれば、車を引き揚げられずにそのまま乗り続けることができる

ただし、この方法はすべてのローン会社が応じるわけではなく、特に銀行系マイカーローンや一部の信販会社では認められにくい傾向にあります。

また、個人再生の対象外であるローンを支払い続けることになるため、家計の収支バランスを厳しく審査されます。

自動車を維持するための実務上の注意点

車を残す交渉を進めるにあたっては、裁判所や債権者に対して正当な理由と客観的な証拠を示す必要があります。

必要性の証明

「なぜその車が絶対に不可欠なのか」を証明できなければ、裁判所や債権者の理解を得ることは難しくなります。

  • 公共交通機関の運行本数が極めて少ない地域の地図や時刻表
  • 仕事の業務内容や、通勤ルート・距離を証明する書類
  • 家族の要介護認定を証明する書類や通院スケジュール

上記のような資料を準備し、車が生活維持の生命線であることを示すことが不可欠です。

家計収支の健全性

車を維持するということは、車検費用、自動車税、任意保険料、ガソリン代などの維持費が継続して発生することを意味します。

個人再生後の減額された借金を返済しながら、これらの維持費をしっかりと支払い続けられる家計収支であることを、再生計画案で証明できなければなりません。

維持費の負担があまりに重く、再び家計が破綻すると予想される場合、裁判所から認可を得られない可能性が高まります。

まとめ:状況に応じた早めの専門家への相談が不可欠

通勤や仕事、介護のために車がどうしても必要な場合であっても、個人再生手続きにおける車の扱いは法的に複雑な判断を求められます。

  • マイカーローンが残っている車は原則として引き揚げの対象となる
  • ローン完済や別除権協定など、状況に応じた維持のための法的アプローチを検討する
  • 車が必要不可欠である客観的な証明と、維持費を含めた家計の健全性が求められる

自己判断で車を残そうと無理な返済を続けたり、特定の債権者に不適切な返済を行ったりすると、かえって手続きが不利になるおそれがあります。

車の維持を希望する場合は、申立前の段階から債務整理の実務に精通した弁護士や司法書士などの専門家へ早めに状況を伝え、最適な解決方針についてアドバイスを受けることが何よりも確実な道となります。

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