【生活再建・弁護士介入のメリット】財産の評価や同時廃止になるかの判断は専門的な知識を要するため、自己判断せず弁護士へ早めに相談することで、財産を適切に守りながら負担の少ない手続きを進めることが可能です。
自己破産の手続きを進める際、避けて通れないのが同時廃止事件と管財事件(少額管財含む)の振り分け問題です。破産を申し立てる債務者にどのような財産があるかによって、手続きの道筋や費用、期間が大きく異なります。その分かれ目となるのが、実務上「20万円の壁」と呼ばれる基準です。
この記事では、どのような資産が対象となり、20万円という基準がどのように運用されているのかについて、破産法制の実務を踏まえて詳しく解説します。
自己破産における「同時廃止」と「管財事件」の違い
自己破産手続きには、主に2つの種類があります。それぞれの特徴を理解することで、なぜ資産の額が重要になるのかが見えてきます。
- 同時廃止事件:破産管財人が選任されず、破産手続開始決定と同時に破産手続が終了(廃止)する手続きです。費用が安く抑えられ、期間も数ヶ月程度で免責許可決定に至ります。
- 管財事件:裁判所によって破産管財人(主に弁護士)が選任され、債務者の財産の調査・換価処分や、免責不許可事由の有無の調査を行う手続きです。官報公告費用のほかに、管財人への報酬(予納金)として最低20万円以上を裁判所に納付する必要があります。
債務者にめぼしい財産がなく、免責不許可事由もない場合は同時廃止となりますが、一定以上の財産がある場合や調査が必要な場合は管財事件へと移行します。
手元資産を分ける「20万円の壁」の具体的な基準
裁判所が管財事件にするか同時廃止にするかを判断する際、最も重視する指標の一つが一つの財産の価値が20万円を超えるかどうかという点です。これを「20万円の壁」と呼びます。
この20万円という金額は、破産法上の「破産財団をもって破産手続の費用を弁償するに足りないとき」という規定(破産法第216条)や、実務上の少額管財の運用基準に基づいて設定されています。
1. 預貯金
口座にある預貯金の残高が単体で20万円を超えている場合、あるいは複数の口座の合計や、近い将来に受け取る予定の金銭を含めて高額な場合は、原則として管財事件の対象となります。2. 自動車・バイク
自動車やバイクについては、査定額が20万円を超えるかどうかが大きな基準となります。査定書などを取得して価値を証明しますが、ローンが残っている場合でも、車両の価値自体が20万円を超えていれば管財事件として扱われるのが一般的です。3. 生命保険の解約返戻金
加入している生命保険や学資保険などに解約返戻金がある場合、その返戻金見込額が1契約あたり(あるいは全体の合算で裁判所により異なる)20万円を超えるかどうかが判定されます。20万円を超える場合は、原則として解約して換価するか、同等額を財団組入金として現金で納付することが求められます。4. 退職金見込額
現在勤務している会社を自己都合退職した場合に支給される退職金についても評価対象となります。退職金見込額が大きく、基準(一般的には80万円や100万円など裁判所の基準による、あるいはその算出額の一定割合)を超える場合、管財事件となる可能性が高まります。「20万円」の計算方法と注意点
20万円の壁を考える際、いくつかの重要な実務上のポイントがあります。
- 個別の資産ごとの判断か合算か:基本的には個々の財産(預貯金、車、保険など)ごとに20万円を超えるかを判断しますが、預貯金については複数口座の合計で見られることが多いです。
- 自由財産の拡張:破産手続開始決定後も手元に残せる財産(自由財産)の範囲は法律で定められていますが、裁判所の運用や地域(管轄)の破産管財人の運用基準によって、自由財産の拡張が認められるケースもあります。
- 財産隠しは厳禁:20万円を超える資産があるにもかかわらず、それを申告せずに隠そうとすると、免責が許可されない(免責不許可事由に該当する)だけでなく、悪質な場合は詐欺破産罪などに問われるおそれがあります。
まとめ:正確な財産評価と準備の重要性
同時廃止と管財事件の分かれ目となる「20万円の壁」は、破産手続きの負担(費用や期間)を大きく左右する重要な境界線です。
自身の持っている預貯金、自動車、保険、退職金などの価値がいくらになるのかを正確に把握し、適切に申告することが、円滑な債務整理の第一歩となります。裁判所の運用基準は地域によって細かな違いがあるため、申し立てを検討する段階で、事前に正確な財産調査を行っておくことが極めて重要です。