自己破産申し立てにおける「陳述書(破綻に至った経緯)」の書き方と添削

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、利息制限法、破産法、民事再生法、および多数の債務整理(任意整理・過払い金回収・個人再生・自己破産)の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q 自己破産の陳述書(破綻に至った経緯)はどのように書けば裁判所の審査に通りやすくなりますか?
A 【書き方の要点】借入れの開始から現在に至るまでの経緯や生活苦の原因を客観的な事実に基づき論理的に説明し、浪費やギャンブルなどの免責不許可事由がある場合は真摯な反省と家計の赤字構造の改善策を自分の言葉で具体的に記載することが重要です。
【法的サポート】陳述書の不備や虚偽記載は免責許可決定の遅れや不許可リスクにつながるため、弁護士の添削や指導を受けて正確かつ説得力のある書類を作成し、スムーズな生活再建を目指すことを強くおすすめします。

自己破産を申し立てる際、裁判所へ提出する書類の中で、申立人の人柄や生活状況を最も雄弁に語るのが陳述書(破綻に至った経緯)です。

多くの裁判所では、所定の書式が用意されており、借入れの開始から現在に至るまでの人生の軌跡、そしてなぜ支払不能に陥ってしまったのかを文章で説明することが求められます。

裁判官や管財人は、この陳述書を通じて「免責不許可事由(浪費やギャンブルなど)はないか」「本当に破産せざるを得ない状況だったのか」「反省し、生活を立て直す意思があるか」を厳しく審査します。

本記事では、審査において好印象を与え、かつ正確に実情を伝えるための陳述書の具体的な書き方と添削のポイントについて詳しく解説します。

陳述書が自己破産手続きにおいて持つ重要な意味

裁判所は、膨大な数の破産申し立て書類を限られた時間の中で審査します。通帳のコピーや家計簿といった数字上のデータだけでは、どのような背景で生活が破綻したのかのドラマや、申立人の苦悩までは見えにくいものです。

陳述書は、その数字の裏側にある「生きた事実」を裁判官に伝える役割を果たします。

  • 借入当初はどのような目的で、返済のあてがあったのか
  • 予期せぬライフイベント(病気、失業、離婚、親族の支援など)がどのように影響したのか
  • どの時点で生活の破綻に気づき、なぜそこから抜け出せなくなったのか
  • これまでの借生活に対する反省と、今後の生活再建の具体的な展望

これらを自分の言葉で筋道立てて書くことにより、裁判所からの信頼を得やすくなります。

「破綻に至った経緯」を書く際の基本構成

陳述書を書き始める前に、全体の構成を整理することが大切です。一般的には、時系列に沿って以下の4つのブロックに分けて記述すると読みやすくなります。

  1. 借入れの開始と初期の状況:いつ、どのような理由で初めて借入れをしたか。当時の収入と返済状況について。
  2. 借金が増加した時期と要因:なぜ借金が膨らんでいったのか。医療費、失業、生活費の不足、あるいは遊興費など、具体的なターニングポイントを記載します。
  3. 支払不能に至る経緯:借金の返済のために別のところから借りる(自転車操業)状態になり、ついに返済が完全にストップした経緯。
  4. 現在の状況と今後の決意:現在の就労状況、家計の立て直し策、反省の言葉と再出発への誓い。

項目別の具体的な書き方と注意点

ここからは、各項目を執筆する際の具体的なコツと、審査でマイナスになりやすいポイントを解説します。

1. 借入れの始まりと当時の状況

最初は生活費の補填やまとまった出費(引越し費用や家電の買い替えなど)がきっかけであることが多くあります。この時点では「毎月の給料から十分に返済できる見込みがあった」ことを明確に示します。

安易な気持ちで借りたのではなく、やむを得ない事情があったことを論理的に説明しましょう。

2. 借金が増加した理由の書き方(浪費・ギャンブルがある場合)

もっとも注意が必要なのが、ギャンブル、浪費、株やFX、仮想通貨などが原因で借金が膨らんだ場合です。これらは免責不許可事由に該当する可能性があります。

ここで嘘をつくことは絶対に避けてください。通帳の履歴やキャッシングの明細から隠し立てはすぐに発覚します。

重要なのは、「事実を隠さず、かつ深刻な反省を示し、現在は完全に断っていること」を強調することです。

  • 「ストレスからパチンコにのめり込んでしまった」という場合であれば、何がストレスの原因であり、現在はそれをどう解消しているかを書きます。
  • ギャンブルを断つために、相談機関に通った実績や、家族による金銭管理の仕組みができていることを併記すると説得力が増します。

3. 収入減や生活苦の客観的証明

リストラ、会社の倒産、残業代のカット、病気による休職など、収入が減ったことが原因である場合は、その時期と減少額を具体的に書きます。

たとえば、「令和〇年〇月に勤務先が倒産し、失業保険受給期間中の半年間は収入が激減したため、生活費を維持するためにカードローンを利用せざるを得なかった」というように、時期と因果関係を明確にします。

診断書や離職票などの客観的な証拠資料と内容が一致していることが大前提となります。

4. 真摯な反省と今後の生活再建計画

陳述書の締めくくりとなる部分は、裁判官の心証を左右する最も大切な箇所です。単に「申し訳ありませんでした」と謝罪するだけでは不十分です。

「今後は二度と借金に頼らないために、どのような生活を送るのか」という具体的な行動計画を示します。

  • クレジットカードをすべて破棄し、今後は現金またはデビットカードのみで生活すること
  • 家計簿を毎日つけ、収支のバランスを徹底的に管理すること
  • 借金に頼らず、身の丈にあった生活水準を維持することの誓い

このような具体的なコミットメントを記載することで、裁判所は「この人であれば破産手続きを経て人生をやり直せる」と判断しやすくなります。

自己流の文章におけるリスクと添削の重要性

陳述書を自分で作成する際、以下のような失敗をしがちです。

  • 感情論に走りすぎる:「世の中が悪い」「会社が給料を上げてくれないからだ」といった他責的な表現が多い。
  • 言い訳ばかりが目立つ:自分の責任を認めず、正当化する記述が目立つと、裁判官の心証を大きく損ねます。
  • 事実関係が時系列で矛盾している:通帳の動きと陳述書の記述が食い違っていると、虚偽の申告を疑われます。

裁判所に提出する陳述書は、単なる日記や作文ではありません。法的な手続きにおける公式な供述書です。そのため、提出前に客観的な視点から内容をチェックし、論理の破綻や不適切な表現がないかを厳しく見直す(添削する)作業が不可欠です。

専門家のサポートを受けることで、ご自身のこれまでの人生の経緯を丁寧にヒアリングし、法的に適切な表現への修正や、客観的な証拠資料との整合性の確認を行うことができます。これにより、裁判所からの無用な誤解や追加の照会を防ぎ、スムーズな手続きの進行が可能となります。

まとめ

自己破産の申し立てにおける陳述書は、過去の失敗を責め立てるためのものではなく、生活苦に陥った背景を正しく理解してもらい、経済的な再生のチャンスを得るための大切な手続きです。

事実を正直に、かつ論理的かつ客観的に記載し、真摯な反省と今後の再建に向けた決意を示すことが、免責許可への確実な一歩となります。文章の書き方に不安がある場合や、どのように自身の状況をまとめるべきか悩んだときは、法務の専門家に相談しながら慎重に作成を進めることをお勧めします。

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