夫婦で総額1,200万円の借金を抱え「夫婦同時破産」で一括免責を獲得した例

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、利息制限法、破産法、民事再生法、および多数の債務整理(任意整理・過払い金回収・個人再生・自己破産)の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q 夫婦ともに借金があり総額が1,200万円に膨らみました。夫だけではなく夫婦同時に自己破産を申し立てることはできますか?また費用や手続きの負担は軽くなりますか?
A 【法的手続きの要点】夫婦それぞれが多額の借金を抱えている場合、同一の裁判所へ同時に自己破産を申し立てる「夫婦同時破産」が有効です。これにより、夫の750万円と妻の450万円、総額1,200万円の債務を一括して整理し、すべての借金の免責許可を得ることが可能です。
【生活再建と弁護士介入のメリット】同一裁判所で同時に手続きを進めることで、予納金などの裁判所費用や書類準備の負担を効率的に抑えることができます。また、弁護士へ早期に相談して受任通知を発送すれば、すべての債権者からの督促が即座に停止し、法的保護のもとで安心して家計の立て直しと生活再建へ向かうことができます。

夫婦のどちらか一方だけでなく、夫婦ともに多額の借金を抱えてしまうケースは決して珍しくありません。生活費の補填から始まり、互いに隠し事をしているうちに借金が雪だるま式に膨らみ、家庭全体の収支では到底返済できない状態に陥ることは多々あります。

このような状況において、それぞれの名義の借金を同時に整理する法的手続きが夫婦同時破産です。今回は、総額1,200万円の借金を夫婦同時の自己破産によって解決した事例をベースに、その仕組みやメリット、実務上の注意点を詳細に解説します。

夫婦同時破産に至る背景と総額1,200万円の内訳

今回の事例における主な背景は、夫が過去の自営業の補填や生活費の不足分を補うために作ったカードローンの借入、そして妻が家計の圧迫から逃れるための買い物やリボ払いによる借入でした。

  • 夫の借入状況:消費者金融や銀行カードローンなど複数社から合計750万円
  • 妻の借入状況:クレジットカードのリボ払いやショッピング枠の現金化、消費者金融から合計450万円
  • 世帯全体の状況:世帯年収は共働きで一定の水準があったものの、毎月の利息の支払いが元本を侵食し、すでに破綻状態であった

夫婦それぞれが別々に借金を重ねていたため、お互いに具体的な残高を正確に把握できていないまま限界を迎えました。最終的に家計全体の再建が不可能と判断し、夫婦揃って自己破産を選択することになりました。

夫婦同時破産を選択するメリット

夫婦が同時に自己破産を申し立てることには、法務実務上、いくつかの大きなメリットが存在します。

裁判所の手続きを同期させられる

夫婦の一方だけが先に破産した場合、もう一方が残された借金の督促や返済に苦しみ続けることになります。同時に申し立てを行うことで、家計の清算プロセスを一つのタイムラインで進めることができ、精神的な負担を軽減させることができます。

予納金や費用の最適化

自己破産の手続きにおいて、財産が少ない場合や免責不許可事由の調査が必要な場合、裁判所に予納金(管財費用)を納付する必要があります。個別に申し立てるよりも、同一の破産管財人が選任されるなどして、裁判所や専門家との調整がスムーズに進むケースがあり、全体の負担をコントロールしやすくなります。

実務上注意すべきポイントと懸念点

夫婦同時の自己破産は強力な解決手段ですが、いくつかの実務上のハードルや注意すべき点が存在します。

  • 家計の混同と財産の切り分け: 夫婦共有の財産(家具、自動車、預貯金など)がある場合、それぞれがどの範囲の財産を保有しているのかを明確に区別して申告する必要があります。
  • 保証人問題: もし夫の借金に妻が保証人になっていたり、その逆のパターンがある場合、両者が同時に破産すると連帯して債務が整理されますが、第三者が保証人になっている場合はその人へ請求が及ぶため注意が必要です。
  • 免責不許可事由の有無: ギャンブルや浪費などが原因である場合、個別にその程度が審査されます。妻の「買い物」が過度の浪費とみなされるかどうかも、陳述書などで丁寧に経緯を説明する必要があります。

夫婦同時破産から免責獲得までの流れ

実際の法的手続きは、以下のようなステップで進行します。

  1. 受任通知の発送: 弁護士や司法書士などの専門家が債権者に対して受任通知を発送し、借金の取立てや返済をストップさせます。
  2. 申立書類の作成: 夫婦それぞれの家計収支表、財産目録、陳述書を作成します。世帯としての家計簿を共有しつつ、個別の債務を正確に洗い出します。
  3. 裁判所への同時申し立て: 同一の地方裁判所に対し、夫婦それぞれの破産・免責申立書を同時に提出します。
  4. 破産手続開始決定と管財人の選任: 資産状況等に応じて同時廃止または管財事件に振り分けられます。総額が大きく複雑な場合は管財事件となり、破産管財人が選任されます。
  5. 債権者集会と免責許可決定: 管財人による調査を経て債権者集会期日が開かれ、最終的に裁判所から借金の支払い義務を免除する「免責許可決定」が下されます。

まとめ

夫婦合わせて1,200万円という多額の借金であっても、法的な手続きである自己破産を正しく活用すれば、ゼロから生活を立て直すことが可能です。夫婦バラバラに対応するのではなく、同時期に手続きを進める「夫婦同時破産」を選択することで、家計の清算を一度に終わらせることができます。

借金問題は一人で抱え込み、隠し続けることで事態を悪化させる傾向にあります。法的整理を視野に入れ、早期に正確な法的アドバイスを得ることが、経済的再生への確実な第一歩となります。

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