自己破産の「免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)」とは?
破産法252条の規定

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、利息制限法、破産法、民事再生法、および多数の債務整理(任意整理・過払い金回収・個人再生・自己破産)の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q ギャンブルや浪費で借金を作ってしまったのですが、自己破産しても免責されないのでしょうか?
A 【免責不許可事由と裁量免責】浪費や賭博による借入れは破産法252条に定める免責不許可事由に該当しますが、これだけで直ちに自己破産が諦めになるわけではありません。実務上は、反省の色を示し、誠実に裁判所の調査に協力することで、裁判所の裁量により免責が許可される「裁量免責」が認められるケースが大部分です。
【弁護士への相談と早期対応】免責不許可事由がある場合の自己破産は、ご自身の判断だけで進めると大きなリスクを伴います。正確な事実関係の申立てや上申書の作成など高度な法的対応が不可欠となるため、まずは債務整理に精通した弁護士に無料相談を行い、個別の状況に応じた最適なサポートを受けることが生活再建への確実な第一歩となります。

自己破産を検討する際、多くの人が不安に感じるのが「免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)」という言葉です。これは、裁判所から借金の返済義務を免除してもらう(免責許可を得る)にあたり、「免責を認めない」とされる一定の事由を指します。

破産法第252条第1項には、どのような場合に免責が許可されないのかが詳細に規定されています。この記事では、同条に定められる具体的な内容と、万が一該当してしまった場合の対応策について詳しく解説します。

免責不許可事由とは何か(破産法252条の趣旨)

自己破産制度の本来の目的は、経済的に破綻してしまった誠実な債務者に、人生の再スタート(再起)の機会を与えることにあります。

しかし、借金を作った原因が著しく不誠実であったり、破産手続において裁判所や債権者を欺くような行為があったりした場合まで、無条件で借金を帳消しにすることは公平に反します。そのため、破産法では一定の行為を免責不許可事由として定め、モラルハザードの防止と債権者平等の原則を維持しています。

破産法252条1項に定められる主な事由の一覧

破産法252条1項には、大きく分けて10号までの項目が規定されています。実務上問題になりやすい主な事由は以下の通りです。

  • 第1号:財産隠匿・損壊・不利益処分 破産財団となるべき財産を隠したり、壊したり、債権者に不利益な処分をしたりする行為。
  • 第2号:虚偽の負担増加行為 借金の理由を偽って新たな借入れをしたり、不当に高金利で物を買ったりして、破産財団の価値を減少させる行為。
  • 第3号:特定の債権者に対する偏頗(へんぱ)弁済 特定の債権者だけを優遇して優先的に借金を返済する行為(親族や知人からの借金を優先的に返すケースが代表的です)。
  • 第4号:浪費・賭博その他の射幸行為 ギャンブル(パチンコ、競馬、株取引、FX、仮想通貨など)や、身分不相当な浪費によって過大な債務を負った、または財産を減少させた行為。
  • 第5号:詐術による信用取引 すでに支払い不能の状態であるにもかかわらず、それを隠して「返済能力がある」と偽り、クレジットカードで高額な商品を購入したり現金を借り入れたりする行為。
  • 第8号:裁判所の調査に対する協力義務違反 破産手続において、裁判所や破産管財人による説明を拒んだり、虚偽の説明をしたりする行為。
  • 第10号:過去の免責から一定期間が経過していないこと 過去に自己破産等で免責許可を受けてから7年以内に、再び免責許可の申立てをする行為。

実務上最も多く見られる「浪費や賭博」の判断基準

相談の中で特に多いのが、第4号の「浪費や賭博」に関する懸念です。

裁判所や破産管財人は、単に「パチンコをした」「ブランド品を買った」という事実だけで一律に免責を不許可にするわけではありません。収入や資産の状況に照らし合わせて、その支出が客観的に見て社会通念上許容される範囲を超えているかどうかが総合的に判断されます。

例えば、毎月の収入が20万円である人が、毎月15万円をギャンブルにつぎ込んで借金を膨らませたような場合は、明確に浪費や賭博に該当するとみなされやすくなります。

免責不許可事由に該当した場合の解決策:裁量免責とは

仮に上記の不許可事由に該当する行為があったとしても、直ちに自己破産が絶望的になるわけではありません

破産法252条第2項には、「裁量免責(さいりょうめんせき)」という規定があります。これは、たとえ免責不許可事由が存在する場合であっても、破産に至った経緯、その後の反省の態度、生活再建に向けた取り組みなどを総合的に考慮し、裁判所の裁量によって例外的に免責を許可するという制度です。

実務においては、以下のような対応をとることで、裁量免責が引き出されるケースが数多く存在します。

  1. 事実の包み隠さない申告 裁判所や破産管財人に対して隠し事をせず、誠実にすべての事実を告げることが大前提となります。
  2. 反省と生活改善の姿勢 なぜそのような行為に至ったのかを深く反省し、二度と同じ過ちを繰り返さないための具体的な家計管理の改善策を書面などで示します。
  3. 破産管財人手続の利用(管財事件) 免責不許可事由がある場合、同時廃止ではなく「管財事件」や「少額管財事件」として扱われます。破産管財人が選任され、財産の調査や更生のための監督が行われるため、費用と時間はかかりますが、管財人の調査に全面的に協力することが免責への近道となります。

まとめ

自己破産の免責不許可事由は、一見すると非常に厳格なルールのように思われます。しかし、法律の趣旨は「過去の過ちを決して許さない」ということではなく、「反省したうえで真面目にやり直す意思のある人を救済する」点にあります。

もし過去の借入れの理由や破産手続中の行動に不安がある場合でも、自己判断であきらめてしまうのは早計です。正確な法的知識を持ち、個別の事情に応じた適切な対応を行うことで、生活再建への道を切り開くことは十分に可能です。

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