「2次利用キャンペーン」を謳う悪質な求人詐欺の手口
「以前利用した無料求人サイトのデータを、特別に再掲載します」「2次利用キャンペーン適用中なので、手続きだけでずっと無料です」――。そんな甘い言葉で事業者の電話を鳴らし、勝手に過去の求人データを無断使用してネット上に再公開する悪質な業者が後を絶ちません。
このような手口は、いわゆる無料求人商法や悪質求人広告詐欺の典型例です。最初は「無料」と信じ込ませて申込書や同意書にサイン(または口頭での合意)をさせ、後日になって法外な掲載料を請求してくるケースが多発しています。
勝手に掲載されたデータが発端に
被害に遭う事業者の多くは、過去に別の求人媒体や、お試し期間中の無料プランを利用した経験があります。悪質な業者はそのデータベースを不正に流用するか、ネット上の公開情報を無断でスクレイピングし、自社のサイトに勝手に掲載します。
その後、突然電話をかけてきて「御社の求人ページが自動更新されています」「このままでは有料に切り替わりますが、2次利用キャンペーンの申込書をご返送いただければ無料で継続できます」などと虚偽の説明を行います。ここで焦って書類にハンコを押してしまうのが、トラブルの引き金となります。
後日届く高額な請求書と脅し文句
書類を返送してしばらくすると、今度は「キャンペーン適用外だった」「契約条項に記載がある」として、数十万円から百万円単位の高額請求書が送りつけられます。
事業者が「そんな話は聞いていない」「契約した覚えはない」と抗議しても、業者は「申込書にサインがある」「録音データがある」と強気に出ます。中には、弁護士名義の書面を使ったり、法的手続きを匂わせたりして精神的に追い詰めてくる悪質なケースも少なくありません。
届いた請求や電話督促に対する正しい法的対処法
もし「2次利用キャンペーン」を口実にした不当な請求や執拗な電話督促に悩んでいる場合、絶対に慌てて支払いに応じてはいけません。毅然とした態度で、法的根拠に基づいた対処を行うことが重要です。
以下に、実務上有効となる具体的なステップを解説します。
1. 契約書の控えと当時のやり取りを保全する
まずは、相手から送られてきた申込書や契約書の控え、メールのやり取り、発着信履歴などの証拠をすべて手元に集めて保全してください。
- 申込書に記載された小さな文字の規約(いわゆる裏面約款など)を確認する
- 電話を受けた日時や担当者の名前、やり取りした内容を詳細にメモに残す
- 相手が「無料」と嘘をついた証拠がないか振り返る
2. 消費者契約法や民法上の「錯誤・詐欺」を主張する
事業者間の取引であっても、相手が欺瞞(ぎまん)的な手段を用いて誤認させ、本来締結しないような不利な契約を結ばせた場合、契約の無効や取り消しを主張できる余地があります。
- 詐欺・強迫による取消し(民法第96条):無料と偽るなどして誤認させた場合の主張
- 錯誤による無効(民法第95条):重要な認識に錯誤(勘違い)があった場合の主張
- 公序良俗違反(民法第90条):社会的相当性を著しく欠く悪質な勧誘手法に対する主張
3. 内容証明郵便による「請求拒絶通知」の送付
口頭での抗議だけでは、業者は言った言わないの水かけ論に持ち込もうとします。そのため、弁護士の名前や代理人名義、あるいは自社名にて、内容証明郵便を用いて一切の支払いを拒絶する旨の通知を送るのが効果的です。
内容証明郵便を送ることで、相手に対して法的法的措置も辞さない姿勢を示すことができ、執拗な督促がピタッと止まるケースも多くあります。
トラブルを未然に防ぐためのチェックポイント
悪質な求人広告業者による被害を防ぐためには、日頃から社内体制を整えておくことが何よりも大切です。以下のポイントを社内で共有しておきましょう。
- 不審な「再掲載」や「キャンペーン」の電話があったその場で即答しない
- 過去に利用した媒体であっても、契約内容や規約を必ず書面で確認する
- 「無料」という言葉だけに惑わされず、裏面や注釈の細かい文字まで必ず目を通す
- 広告掲載の決定権を持つ責任者以外が、安易に署名や捺印をしないルールを徹底する
万が一、すでに書類を返送してしまったり、高額な請求書が届いていたりする場合は、一人で悩まずに求人広告詐欺や事業者間トラブルに精通した弁護士へ早期に相談することをお勧めします。専門家の介入により、迅速かつ安全に解決できる可能性が大きく高まります。