店舗の「バイト募集」の貼り紙を狙う巧妙な詐欺手口とは
飲食店や小売店などの店頭に、「アルバイト募集」「スタッフ急募」と書いた手作りの貼り紙を掲示している店舗は少なくありません。経営者や店長にとって、少しでも求人コストを抑えて人材を確保するための身近な手段です。
しかし最近、この店舗の貼り紙をピンポイントで狙った悪質な詐欺的営業が急増しています。
突然店にかかってきた電話で、あたかも行政機関や公的な媒体、あるいは既存の求人サイトの関連会社であるかのように装い、言葉巧みに有料の求人広告契約を結ばせようとする手口です。
本記事では、この「貼り紙を狙った求人広告詐欺」の実態と、請求書が届いてしまった際の正しい対処法について、弁護士の視点から詳しく解説します。
「写真が掲載されている」と言葉巧みに誘導する手口の実態
この悪質な手口の最大の特徴は、ターゲットとなる店舗の情報を事前にリサーチし、具体的な状況を告げて電話をかけてくる点にあります。
事業者が被害に遭う典型的な流れは以下の通りです。
- 業者が実際に店舗を訪れるか、ストリートビュー等で「アルバイト募集」の貼り紙を確認する
- 店舗へ突然電話をかけ、「そちらの店頭にある募集の貼り紙、あるいはインターネット上に掲載されている写真について確認事項がある」と告げる
- 「無料の媒体に掲載している情報の確認」「掲載内容の更新手続き」「写真の掲載許可の確認」などと、あたかも事務的な確認作業であるかのように装う
- 担当者が油断した隙に、音声ガイダンスや口頭で同意をとりつけ、後から高額な有料求人広告の契約書を送りつけてくる
彼らは「確認」や「無料」といった言葉を巧みに使い、相手に警戒心を抱かせないように巧妙な話術を用います。忙しい営業時間中に電話を受けると、経営者や店長も深く考えずに「はい」と答えてしまいがちですが、それが有料契約への同意とみなされてしまうのです。
届いてしまった高額請求への法的対処法
もし、このような手口で不本意な有料求人広告の契約を結ばされてしまった場合、高額な請求書が届いたとしても、安易に支払いに応じるべきではありません。
法律上、事業者間の契約であっても、欺罔(ぎもう)行為や錯誤によって締結された契約は、無効や取り消しを主張できる余地があります。以下のステップに沿って冷静に対処しましょう。
契約書面や通話録音の確認を行う
まずは、業者と交わした契約書、申込書、そして可能であれば当時のやり取りを記録したメモなどを確認します。どのような説明を受けて契約に至ったのか、重要事項の説明に虚偽がなかったかを精査します。
内容証明郵便によるクーリングオフや契約解除の通知
事業者間の契約には原則としてクーリングオフ制度は適用されませんが、特定商取引法上の問題や、民法上の詐欺・錯誤に基づく取消しを主張することが可能です。専門的な法的根拠を記載した内容証明郵便を業者に送付し、契約の無効や解除を通知することが有効です。
弁護士などの専門家に相談する
悪質な求人広告事業者は、独自の利用規約などを盾に「契約は有効であり、裁判を起こす」などと威圧的な督促を行ってくるケースが少なくありません。自社だけで対応していると精神的な負担も大きいため、事業者間トラブルや無料求人商法に精通した弁護士に早めに相談することをおすすめします。
店舗の貼り紙を狙った悪質な営業手法は、法令上のグレーゾーン、あるいは明確な違法行為スレスレのラインを突いてきます。不審な電話や身に覚えのない高額請求に直面した際は、一人で悩まずに専門家のサポートを受けながら毅然とした対応をとりましょう。