申込書の控えを紛失しても焦る必要はない理由
無料求人商法や悪質な求人広告詐欺の被害に遭った際、「契約書や申込書の控えを会社の金庫から紛失してしまった」という相談を経営者やご担当者から数多く受けます。手元に証拠がないと不安になり、相手の執拗な電話督促や脅しに屈して支払ってしまうケースが後を絶ちません。
しかし、控えがないからといって泣き寝入りする必要は一切ありません。契約は当事者双方の合意によって成立するものであり、控えを失くしたからといって、相手方の主張する内容がすべて正当になるわけではないからです。むしろ、トラブル解決の第一歩として、相手方が保管している契約書面を開示させる手続きを踏むことが極めて有効です。
手元に控えがない場合の法的リスクと心構え
自社に控えがない場合、相手方は「高額な違約金を支払う合意があった」「中途解約できない特約が存在する」など、自社に有利な嘘の条件を後出ししてくるリスクがあります。
しかし、ここでパニックになってはいけません。相手がどのような根拠に基づいて請求を行っているのか、その客観的な証拠を書面で提示させることが何よりも重要です。
相手方業者に対して契約書の開示請求を行う手順
手元に申込書や契約書の控えがない場合、相手方業者に対して「契約書面の開示(写しの交付)」を正式に求めることになります。口頭で請求しても相手が対応を渋ったり、記録が残らなかったりするため、書面を用いた厳格な手続きが必須です。
内容証明郵便を活用した開示請求の重要性
電話やメールでの請求は、相手に無視されたり「言った・言わない」の水掛け論に発展したりするおそれがあります。そのため、内容証明郵便を使用して開示請求を行うのが最も確実かつ効果的です。
内容証明郵便を活用するメリットは以下の通りです。
- いつ、誰が、どのような内容の請求を行ったかを公的に証明できる
- 相手方に対して、法的な対応を準備している強い意思表示になる
- 相手の不誠実な対応や無視の証拠を蓄積できる
内容証明を作成する際は、単に「契約書を見せろ」とするのではなく、「貴社が主張する契約の成立根拠および、署名押印済みの申込書・契約書等の全ての関連書類の写しを速やかに送付されたい」と具体的に記載することがポイント悪質な業者であればあるほど、法的根拠に基づいた書面が届くことで、その後の強硬な態度がトーンダウンするケースも少なくありません。
弁護士が介入して隠し持っている契約書を暴く方法
悪質な求人広告業者の場合、電話口では高圧的な態度であっても、いざ「書面での開示」を正式に求められると、都合の悪い事実(例えば、重要事項の説明不足や、勝手に特約が書き加えられていた事実など)が発覚することを恐れ、開示を渋る傾向があります。
このような場面において、弁護士が代理人として介入することが決定的な解決手段となります。
弁護士照会や法的手続きを視野に入れた対応
弁護士が受任通知を送り、契約書の開示を請求した場合、相手方は弁護士法に基づく照会や、将来的な民事訴訟(裁判)を意識せざるを得なくなります。訴訟となれば、裁判所を通じて相手方に契約書等の書面の提出を強制的に命じる手続き(文書提出命令など)の申し立ても視野に入るため、相手は手元に隠し持っている契約書や申込書を出さざるを得なくなるのです。
求人広告詐欺や無料求人商法において、業者が提示してくる契約書には、法的な不備や消費者契約法違反、公序良俗違反(民法90条違反)といった無効事由が隠されていることが多々あります。
一人で悩まず専門家へ相談を
会社の金庫から申込書の控えを失くしてしまったという焦りにつけ込み、相手は法外な金額を請求してきます。しかし、プロの法律家が相手の根拠書類を精査することで、不当な請求を退け、既払金の返還交渉や合意解約への道筋を開くことが十分に可能です。
もし自社の控えが紛失してしまい、相手からの督促にどう対応すべきか迷っている場合は、一人で抱え込まず、事業者間トラブルに精通した弁護士へ早めにご相談ください。