那覇地裁令和8年4月17日和解(不法行為損害賠償反訴・満額支払和解)の要点
【実務上の対抗・解決手順】悪質業者は「弁護士がつく前に中小企業が驚いて支払うこと」を狙っており、実際に弁護士が介入した訴訟の大半は業者の取下げ・請求放棄・ゼロ和解で終わっています。まずは弁護士から受任通知を送付して窓口を一本化し、毅然と支払拒絶を行うことが最善の防御策です。
事案・裁判上の和解の基本情報
| 項目 | 詳細データ |
|---|---|
| 裁判所・担当部 | 那覇地方裁判所 民事第2部(山田悠一郎裁判官) |
| 和解成立年月日 | 令和8年(2026年)4月17日(裁判上の和解成立) |
| 事件番号 | 令和7年(ワ)第727号 |
| 事件名 | 不法行為に基づく損害賠償請求事件(反訴) |
| 終局結果・内容 | 広告会社側が本訴請求を放棄した上、被害企業に対し反訴請求額満額(30万円)を支払う和解が成立 |
| 主な争点・適用法条 | 民法第709条(不当勧誘・不当提訴による不法行為損害賠償請求) |
| 公刊資料・出典 | 一般社団法人消費者法ニュース発行会議『消費者法ニュース 148号』 / 担当・髙良祐之弁護士(沖縄弁護士会)訴訟報告 |
1. 事案の背景と経緯(時系列)
- 大量提訴の背景(27件中22件で業者の請求が排斥): 無料求人営業を行っていた広告会社が、全国の事業者に対して大量の広告料金請求訴訟(各請求額は約60万円)を提起していました。全国の担当弁護士の連絡会が把握していた27件のうち、実に22件が業者側の訴え取下げ・請求放棄・ゼロ和解で終了しており、裁判では業者の請求がほとんど排斥されていました。しかし業者側は請求が通らなかっただけで経済的損失を被らないため、「数打てば当たる」形式で不当訴訟を繰り返す危険性がありました。
- 本件の具体的な経過:
- 令和6年7月30日:被害企業が電話勧誘を受けて申込み。その後高額請求を受けたため、同年9月9日に担当弁護士より受任通知兼支払拒絶通知を発送。
- 令和6年11月28日:広告会社が東京簡易裁判所へ訴訟提起(本訴)。企業側弁護士の移送申立てにより、令和7年1月31日に那覇簡易裁判所への移送決定。
- 令和7年5月29日〜6月2日:広告会社が「訴えの取下書」を提出して逃げようとしたものの、企業側は「取下げ不同意書」を提出して本訴を続行。
- 令和7年6月13日〜7月8日:企業側より不法行為に基づく損害賠償請求(30万円)の反訴を提起し、さらに広告会社の銀行口座に対する仮差押え決定を取得。
- 令和7年7月31日:追い詰められた広告会社が「本訴の請求放棄」の上申書を提出(これにより業者の請求権は完全に消滅)。その後、反訴は職権で那覇地方裁判所へ移送され審理が継続されました。
2. 裁判上の結果と意義(反訴請求満額30万円の支払い)
- 「訴えの取下げ・本訴放棄による逃げ得」を許さなかった徹底追及: 通常、業者側が本訴の請求を放棄すれば企業の支払義務はなくなるため訴訟は終了しますが、それでは企業が被った被害が回復されず、業者側の抑止にもなりません。本件では被害企業の同意のもと反訴を続行し、会社実態を問う求釈明や調査嘱託申立てを通じて厳しく追及を続けました。
- 反訴請求満額(30万円)を支払わせる和解の成立: 裁判所からの和解勧告(当初の低額案を拒否し増額された提案)を経て、令和8年(2026年)4月17日、広告会社側が反訴請求金額満額(30万円)を支払う内容での裁判上の和解が成立しました。広告会社側が逆に賠償金相当額を支払わなければならなくなった事実が公的に確定し、同種商法を行う業者に対する強い警鐘となりました。
3. 実務への示唆と対抗策
- 弁護士が介入した案件では業者側が圧倒的に不利: 上記の通り、全国の弁護士が連携して対応した同社の訴訟では、把握分27件のうち22件が「取下げ・請求放棄・ゼロ和解」で終わっており、さらに本件では逆に30万円を支払わせる結果となっています。
- 「東京の裁判所に訴える」と脅されても地方への移送や反撃が可能: 業者は自社の所在地(東京など)の簡易裁判所に提訴して遠方の事業者の出頭を諦めさせようとしますが、弁護士を通じて管轄移送の申立てや徹底抗戦を行うことができます。
- 訴訟前の早期段階で受任通知を送付することが最善: 業者が狙っているのは「弁護士に相談する前に事業者が驚いて振り込んでしまうこと」です。請求書や督促の電話が来た段階で直ちに弁護士へ相談し、受任通知を送付して窓口を一本化することが最も確実な防衛策です。

