那覇簡裁令和3年10月21日判決(詐欺取消し・請求棄却)の要点
【実務上の対抗・解決手順】電話で「無料」と強調された経緯がある場合、FAX書面に小文字で自動更新が書かれていても詐欺取消しを法的に主張することが考えられます。弁護士から受任通知を送付して窓口を一本化し、法的に契約取消しを通知することが有効です。
判例の基本情報
| 項目 | 詳細データ |
|---|---|
| 裁判所 | 那覇簡易裁判所 |
| 判決年月日 | 令和3年(2021年)10月21日判決 |
| 事案名 | 無料掲載期間終了後の自動更新規定による有料求人広告掲載料請求事件 |
| 判決主文 | 原告(インターネット広告業者)の請求を棄却する |
| 主な争点・適用法条 | 民法第96条第1項(詐欺による意思表示の取消し・不作為による欺罔) |
| 公刊資料・出典 | 愛知県弁護士会 消費者委員会『消費者問題速報 VOL.201(2022年2月)』 |
1. 事案の概要(認定事実)
- 電話勧誘とFAX申込書の小文字約定: 事業者(被告)は、令和元年11月20日、インターネット広告業等を営む事業者(原告)から電話勧誘を受け、FAX送信されてきた書面を用いて求人情報の広告掲載申込みを行いました。
- 14日間の掲載期間と4日以上前の書面拒絶ルール:
同FAX書面には、小文字のフォントで以下の約定が記載されていました。
- 求人情報を掲載する期間は14日間とし、契約終了日の4日以上前に書面での申し出がない限り自動更新され、以降の更新も同様とする。
- 1単位期間(14日間)ごとに求人情報掲載料金を支払う。
- 無料キャンペーンが適用される場合、初回掲載期間の料金は発生しないが、自動更新を拒絶する手続きを経ない限り更新後の掲載料金が当然に発生する。
- 請求と提訴: 業者は、期限内に更新拒絶の申し出がなく有料契約として更新されたと主張して掲載料金を請求し、提訴しました。これに対し被告側は、有料契約の不成立、詐欺取消し、錯誤無効を主張して争いました。
2. 裁判所の判断(判旨のポイント)
裁判所は、FAX書面の送付により有料の広告掲載契約自体は成立しているとしつつも、以下の通り業者側の詐欺(不作為による欺罔)を明確に認定し、詐欺取消しを認めて業者の請求を棄却しました。
- 3度にわたる「無料」の強調と有料移行ルールの不説明: 業者の勧誘担当者は、契約日までに被告代表者へ3度も勧誘電話をかけ、その都度「利用料は無料である」ことのみを強調しました。一方で、「無料掲載期間が終了する4日以上前までに書面で更新拒否を通知しなければ自動更新となり、有料契約に自動移行する」という契約ルールについては電話口で何ら説明を行いませんでした。
- 公的機関・マスコミ・弁護士会の注意喚起から「詐欺の故意」を認定: 裁判所は、平成31年4月から令和元年11月25日にかけて、厚生労働省、全国求人情報協会、毎日新聞等のマスコミ、および沖縄県弁護士会を含む各県の弁護士会が、同種業者の勧誘手法は「事業者の錯誤に付け込んだ商法である」旨の注意喚起を大々的に行っていた事実を認定しました(本件の勧誘電話は令和元年11月20日)。これに基づき、業者自身も自らの勧誘手法に問題があることを十分に認識しており、「被告代表者を錯誤に陥らせ、その錯誤によって契約申込みをさせようとする故意があった」と認定しました。
- 結論(不作為により錯誤を深めさせた詐欺取消しの成立): 自動更新や有料移行に意識が向かないよう誘導した結果、被告代表者は有料契約へ自動移行する契約であることを全く理解していなかったとし、「原告は、被告代表者の錯誤をその不作為によって深めて本件契約の申込みをさせたといえる」と判示して詐欺取消しを認め、業者の請求を棄却しました。
3. 実務への示唆と対抗策
- 「FAXに小文字で書いてあるから詐欺ではない」という反論を打ち破る判例: 本判決は、FAX書面に小文字で約定が書かれていたとしても、電話口で「無料」を繰り返して自動更新ルールに意識が向かないよう誘導し説明しなかったこと(不作為)自体が「詐欺」にあたると認定しています。
- 「無料だと何度も言われた」「最終確認でも無料と言われた」経緯が重要: 勧誘電話を受けた回数や、担当者に「本当に無料ですね?」と確認した際のやり取りは、不作為の詐欺を立証する重要な事実となります。
- 弁護士による取消通知の送付と窓口一本化: 詐欺による取消し(民法96条)は、相手方に対する意思表示によって効力を生じます。弁護士が代理人として受任通知を送付し、法的に正確な取消しの意思表示を行うとともに連絡窓口を一本化することで、不当な支払いを拒絶し、相手方からの請求停止・請求断念を目指すことが有力な法的対抗手段となります。

