営業マンに騙された!
民法第96条「詐欺による意思表示」の取消が認められる要件

公開日: 2026-08-02

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、事業者向け求人広告トラブル・無料求人商法の支払拒絶・請求停止実務に基づき、最新の法令および裁判例に沿ってわかりやすく解説しています。

求人広告の営業マンに「最初は無料」「採用できなければ費用はかからない」などと口頭で言われ、よく確認せずに契約書にサインをしたところ、後から高額な請求書が届いたというトラブルが後を絶ちません。こうした悪質な勧誘の手口に対しては、民法第96条に基づく「詐欺による意思表示の取消し」を主張することが、法的対抗手段として検討されます。

Q 求人広告の営業マンに「無料」や「すぐ採用できる」と虚偽の説明をされ、高額な契約を締結させられました。民法第96条の詐欺を理由に契約を取り消して支払いを拒否できますか?
A 【結論と法的根拠】「最初の数ヶ月は完全無料」などと虚偽の説明をして誤認させ、高額な求人広告契約を締結させた場合、民法第96条に基づく「詐欺による意思表示の取消し」を主張することで、契約の効力を否定し、支払義務の不存在を主張することが法的な対抗手段となります。営業マンによる故意の欺罔行為(不実告知・重要事項の不告知)を主張・立証することで、不当な請求の排除を目指します。
【実務上の対抗・解決手順】営業マンとの商談時の録音、見積書やメッセージ等の証拠を速やかに保全した上で、弁護士による受任通知を迅速に送付します。これにより、悪質な広告業者からの直接連絡の停止を申し入れ、詐欺取消の主張を通じて金銭負担の発生を回避し、請求停止・請求断念を目指します。

民法第96条「詐欺による意思表示」とは何か

契約を結んだ後に「だまされた」と気づいた場合、法律上どのように救済されるのでしょうか。民法第96条第1項では、「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる」と定められています。

求人広告詐欺の文脈においては、営業マンが意図的に虚偽の説明をしたり、重要事項を隠したりすることによって、経営者や採用担当者に「これは無料のプランだ」「成果報酬型である」と誤認させ、有料の広告契約書に署名・押印させることが典型的な詐欺にあたります。

取消権が認められれば、契約は遡って効力を失います。つまり、最初から契約が存在していなかったものとして扱われるため、高額な広告掲載料や違約金の支払義務がないことを主張する根拠となります。

詐欺取消が認められるための4つの要件

求人広告の契約を取り消すためには、単に「騙された気がする」と主張するだけでは足りません。法的に詐欺取消の主張が認められるためには、以下の4つの要件を満たしていることを論理的に主張・立証する必要があります。

1. 相手方による欺罔(ぎもう)行為があったこと

営業マンが意図的に嘘をついた、あるいは告げるべき真実を告げなかった(不実告知や重要事項の不告知)という行為が必要です。

  • 「無料トライアル期間が終わるまで自動課金されない」と虚偽の説明をした
  • 契約書に小さく記載された高額な有料プランの存在を隠して契約書を渡した

このような行為が明確な欺罔行為に該当します。

2. 相手方に「人を欺く故意」があったこと

営業マンやその背後にいる事業者が、被害者を錯誤に陥れようという故意(悪意)を持っていたことが必要です。単なる説明不足や担当者の勘違いではなく、意図的にだます意図があったかどうかが問われます。

3. 被害者が錯誤に陥ったこと

営業マンの欺罔行為によって、被害者が「この求人広告は無料(または低リスク)である」と誤った認識(錯誤)をしてしまった因果関係が必要です。「もし本当の料金体系を知っていれば契約しなかった」と言える状態であることがポイントです。

4. 意思表示(契約の締結)をしたこと

その誤認がなければ契約書にサインしなかったにもかかわらず、欺網行為を信じ込んでしまったがゆえに、契約の意思表示をしてしまった事実が要件となります。

求人広告詐欺で詐欺取消を主張するための立証のポイント

事業者間の取引であっても、民法上の詐欺取消の主張は可能です。「プロの商売人なのだから契約書をよく読まなかった方が悪い」と相手方業者は主張してきますが、巧妙な勧誘や、契約書と口頭説明の乖離がある場合には、取消しの余地が十分にあります。

実務上、最も重要なのは証拠の確保です。

  • 営業マンとの商談時の録音データ
  • 「無料」と記載されたチラシ、メール、チャット履歴
  • 契約書面の不備や、説明内容と約款の矛盾点

これらを整理し、内容証明郵便などを用いて「民法第96条に基づく詐欺取消権の行使」を通知するのが一般的な法的アプローチとなります。

詐欺取消を検討する際の注意点と弁護士への相談

詐欺を理由に契約を取り消す場合、取消権の行使期間に注意しなければなりません。民法第126条により、詐欺による取消権は、「追認をすることができる時から5年間」、または「行為の時から20年」を経過すると時効によって消滅します。さらに、相手方から執拗な電話督促を受けている場合、安易に一部入金したり「支払猶予」の合意をしたりすると、詐欺の事実を認めた(追認)とみなされ、後から取り消せなくなる危険性があります。

悪質な求人広告トラブルや無料求人商法に巻き込まれ、高額な請求に悩んでいる場合は、ご自身だけで対応せず、事業者間トラブルや詐欺被害に強い弁護士へ早期に相談することをおすすめします。弁護士名義で内容証明郵便を送付することにより、業者からの督促を速やかに停止し、合法的に契約の無効化や支払拒絶の主張を行うことが可能となります。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、交通事故の賠償問題をはじめ、事業者様を狙う求人広告詐欺の被害救済やオフィス・テナント等の原状回復トラブルなど、不測の事態に直面した皆様の精神的・経済的なご負担を少しでも和らげ、正当な権利の実現と円満な解決へと導くためのサポートを徹底して行っています。

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