賃貸物件を退去する際、ベランダの汚れについて高額な清掃費用を請求され、納得がいかないと悩む方は少なくありません。特に契約書に「ベランダ清掃特約」が記載されている場合、すべて借主がその費用を全額負担しなければならないのでしょうか。
この記事では、ベランダ・バルコニーの清掃特約の法的有効性や、専用使用権がある共用部の原状回復における注意点、過剰なクリーニング代をカットするためのポイントについて弁護士が詳しく解説します。
【減額交渉と対処法のポイント】管理会社から提示された高額な特別清掃費や高圧洗浄代に対しては、善管注意義務違反に該当する放置(ゴミの蓄積や排水溝の詰まり等)がない限り、通常の自然損耗分の費用負担を拒否できます。請求明細の根拠を確認し、通常損耗分の清掃費の支払い義務はない旨を毅然と主張して減額交渉を行いましょう。
ベランダ・バルコニーは「共用部」だが専用使用権がある
マンションやアパートのベランダやバルコニーは、火災時などの避難経路としても使用される法律上の共用部です。しかし、居住者が専用で使用できる権利(専用使用権)が与えられているため、その扱いは室内とは少し異なります。
共用部であっても、日常的な清掃やゴミの撤去などは、基本的にその部屋を使っている借主の責任(善管注意義務)とされています。そのため、落ち葉の放置や排水溝の詰まりをそのままにして放置した結果生じた損害については、借主が責任を問われることがあります。
一方で、風雨にさらされることで自然に発生する床の黒ずみや経年劣化レベルの汚れは、居住していれば当然に生じるものと言えます。
「ベランダ清掃特約」は本当に有効なのか?
賃貸借契約書に「退去時はベランダの特別清掃費として〇万円を徴収する」「専門業者による高圧洗浄代は借主負担とする」といった特約が盛り込まれているケースが見受けられます。
裁判例や消費者契約法に照らし合わせると、このような特約がすべて有効になるわけではありません。特約が有効と認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 契約締結時に、借主に対して特約の内容と費用負担について明確な説明がなされていること
- 賃料などの他の条件と比較して、借主にとって一方的に不利益な内容ではないこと
- 汚れの程度を問わず一律に高額な費用を負担させるような、公序良俗に反する内容ではないこと
通常の生活によって付着した汚れに対する過大な清掃義務を課す特約は、消費者契約法第10条(民法の規定よりも消費者の権利を制限し、義務を加重する条項は無効とする)により、無効と判断される可能性が高いといえます。
過剰なクリーニング代をカットするためのポイント
退去時に管理会社や大家から「ベランダの特別清掃代」として高額な見積もりを提示された場合、泣き寝入りして支払う必要はありません。以下のポイントを確認して適正な金額へ是正を求めましょう。
- 契約書と重要事項説明書を再確認する 特約の記載があるか、その内容に具体性があるかを確認します。サインや押印がある場合でも、内容が不当であれば争う余地があります。
- 入居時や退去時の状態を写真に残しておく 入居直後からの汚れだった場合や、日常的に清掃を行っていたことが証明できれば、借主の責任を否定しやすくなります。
- 国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を盾にする ガイドラインでは、通常損耗の修繕費用は賃料に含まれているという考え方が基本です。特別清掃が必要なほどの「著しい汚損(ペットによる汚れや深刻な放置汚れなど)」がない限り、通常の清掃費用の請求は不当であると主張できます。
ベランダの清掃費に限らず、退去費用全般に納得がいかない場合は、安易に合意書にサインをしないことが重要です。「特約があるから」と言われても、法的に無効なケースは多々あります。請求額に疑問を感じたら、専門知識を持つ弁護士などの第三者に相談することをおすすめします。
原状回復・退去費用の高額請求でお悩みの方へ
国交省ガイドラインに基づき、弁護士が適正金額への減額交渉・返還請求をサポートします。諦めて支払う前に、まずはお気軽にご相談ください。