自然災害(地震・台風・大雨)による建物損傷は借主の原状回復義務になるか

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」、民法(通常損耗・経年劣化の減価償却ルール)、および多数の退去費用減額・敷金返還交渉の裁判実務に基づきわかりやすく解説しています。

賃貸物件に住んでいる際、地震や台風、大雨といった自然災害によって窓ガラスが割れたり、雨漏りが発生したりすることがあります。このような予測不能な災害による損傷について、退去時の原状回復義務はどちらにあるのでしょうか。

借主の責任ではないと分かっていても、大家さんから「借りていたのだから直してほしい」と言われて困惑するケースは少なくありません。

今回は、自然災害による建物損傷と借主の原状回復義務の関係について、法律上のルールや具体的な判断基準を分かりやすく解説します。

Q 自然災害(地震・台風・大雨)による賃貸物件の損傷は、借主が原状回復の費用を負担して退去しなければなりませんか?
A 【借主の負担責任について】いいえ。地震や台風、大雨などの自然災害による窓ガラスの破損や雨漏り、浸水などは不可抗力であり、借主の故意・過失や善管注意義務違反には該当しないため、借主に原状回復義務や修繕費用の負担はありません。修繕義務は民法上、貸主側にあります。
【不当請求への対処法について】もし貸主や管理会社から「借り主なのだから直してほしい」と高額な修繕費用を請求された場合は、国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドラインに基づき、借主の責任外である旨を主張して支払いを拒否してください。応じてもらえない場合は、消費生活センターや専門の弁護士への相談が有効です。

自然災害による損傷は「不可抗力」であり借主の責任外

賃貸借契約において、借主が負う原状回復義務の範囲は、基本的には借主の「故意・過失」または「善管注意義務違反」によって生じた損耗や破損に限られます。

地震や暴風、集中豪雨といった自然災害は、人間の力では避けることのできない「不可抗力」に該当します。したがって、自然災害によって以下のような被害が生じたとしても、借主に法的責任は発生しません。

  • 台風の飛来物によって窓ガラスが割れた
  • 大雨による浸水で床材が傷んだ
  • 地震の揺れで壁のクロスに亀裂が入った

国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも、自然災害や経年変化といった借主の責めに帰さない事由による損傷の修繕費用は、原則として貸主(オーナー側)が負担すべきと明確にされています。

貸主の修繕義務と借主の対応手順

自然災害によって部屋が損傷した場合、建物を本来の状態に維持・管理する義務(修繕義務)を負うのは貸主側です。被災した際は、感情的に揉める前に正しい手順で対応することが重要です。

災害による破損を見つけた場合の適切な対応手順は以下の通りです。

  • 被害状況の写真を細かく撮影し、保存しておく
  • 速やかに管理会社や大家さんへ連絡し、状況を報告する
  • 勝手に自己判断で修理業者を手配せず、貸主側の指示を仰ぐ

特に注意したいのは、証拠を残さずに自分で片付けたり修理してしまったりする行為です。被害の規模が分からなくなると、後々「本当に自然災害が原因か」といったトラブルに発展するリスクがあります。必ず写真や動画で記録を残しましょう。

火災保険の活用と例外的なケースについての注意点

原則として自然災害の修繕は貸主の負担ですが、例外的なケースや、当事者間の負担を円滑にする仕組みについて知っておく必要があります。

火災保険(借家人賠償責任保険等)の確認

借主が加入している火災保険のなかには、風災や水災などの自然災害による損害を補償する特約が付帯している場合があります。また、貸主側も建物自体の火災保険に加入していることが一般的です。保険の適用範囲については、貸主側や管理会社と早めに確認・相談することをおすすめします。

借主に責任が問われる例外ケース

自然災害が原因であっても、次のような状況下では借主の責任(注意義務違反)が問われる可能性があります。

  • 台風が来ることが分かっていながら、ベランダの危険な私物を放置して窓ガラスを割ってしまった
  • 雨漏りの兆候を何ヶ月も放置し、被害を拡大させた

このように「防げたはずの被害を放置した」という事情がある場合は、一部費用請求の対象となることもあるため注意が必要です。

不当な請求に納得できない場合は弁護士への相談を

現実の退去時や契約解除の場面では、知識の乏しい借主に対して、貸主側が自然災害による破損の修理費まで請求してくるトラブルが後を絶ちません。

「不可抗力であるはずなのに、高額な修繕費用を請求された」「ガイドラインに反した全額負担を求められている」といった理不尽な状況でお困りの場合は、個人で悩まずに法律の専門家である弁護士へご相談ください。法的根拠に基づいた適正な交渉により、不当な負担を回避することができます。

原状回復・退去費用の高額請求でお悩みの方へ

国交省ガイドラインに基づき、弁護士が適正金額への減額交渉・返還請求をサポートします。諦めて支払う前に、まずはお気軽にご相談ください。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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