賃貸物件の退去時、高額な原状回復費用や修繕費をめぐるトラブルは後を絶ちません。当事者間で話し合いがついた後、「支払ってもらえないかもしれない」という不安を抱える貸主様も多いのではないでしょうか。
今回は、退去費用紛争の解決において強力な効果を発揮する合意書と、その実効性を高める即時差押特約について、弁護士の視点から分かりやすく解説します。
退去費用トラブルで交わす「合意書」の重要性と限界
【不払いリスクへの対策と弁護士の役割】特に分割払いの合意では未払いリスクが高まるため、強制執行認諾文言付きの公正証書化が不可欠です。法的実効性を担保し、確実に回収を行うためには専門家である弁護士への相談・作成依頼が最も確実な手段となります。
賃貸借契約の終了に伴い、原状回復費用や敷金返還をめぐって紛争が生じた場合、最終的に話し合いによって「示談」が成立することがあります。その際、後日の蒸し返しを防ぐために作成するのが合意書(示談書)です。
しかし、この合意書を一般的な書面(私文書)として交わしただけでは、万が一、借主(または貸主)が約束通りに金銭を支払わなかった際、すぐに相手の財産を差し押さえることはできません。支払いを強制するためには、改めて裁判を起こして勝訴判決を得る必要があり、時間と労力がかかってしまいます。
合意書の効果を高める仕組みが必要な理由
示談が成立したとしても、実際に支払われなければ意味がありません。特に分割払いに合意した場合などは、途中で支払いが滞るリスクが常に付きまといます。
そこで法的実効性を担保するために活用されるのが、即時差押特約を盛り込んだ公正証書の作成です。
「即時差押特約」とは?公正証書化のメリット
即時差押特約とは、金銭債務の不履行があった場合に、債権者が裁判所の判決を得ることなく、直ちに強制執行(差押え)に手続に入り得ることをあらかじめ合意しておく条項のことです。
この特約を有効に機能させるためには、単なる契約書ではなく、公証役場で公正証書(特に「強制執行認諾文言付公正証書」)として作成する必要があります。
公正証書にする主なメリット
- 裁判を起こす時間と費用を節約できる
- 相手方に強い心理的プレッシャーを与え、任意の支払いを促せる
- 約束が守られなかった際、給与や預貯金口座などを迅速に差し押さえられる
公正証書に強制執行認諾文言(「万が一、支払いが遅れたときは直ちに強制執行に服する」という文言)を記載しておくことで、裁判なしでの差し押さえが可能となります。
即時差押特約を合意書に盛り込む際の注意点
即時差押特約付きの公正証書を作成することは非常に強力な手段ですが、実務上はいくつかの注意点があります。
1. 合意内容の明確化
いつまでに、いくらを、どのような方法で支払うのかを正確に記載する必要があります。曖昧な表現があると、公証役場で公正証書の作成を断られたり、いざ強制執行する際にトラブルになったりします。
2. 相手方の同意と資力の確認
公正証書の作成には、原則として当事者双方が公証役場に出頭するか、代理人を立てる必要があります。また、相手方に支払い能力(資力)がなければ、強制執行の対象となる財産が存在しないため、特約の効果が十分に発揮されない点にも注意が必要です。
3. 専門家である弁護士への相談
退去費用をめぐる紛争で不利な条件を飲まされないため、また、法的に有効かつ確実な合意書・公正証書を作成するためには、不動産トラブルに強い弁護士のサポートを受けることを強くおすすめします。弁護士が間に入ることで、適切な金額での合意形成と、確実な回収スキームの構築が可能になります。
原状回復・退去費用の高額請求でお悩みの方へ
国交省ガイドラインに基づき、弁護士が適正金額への減額交渉・返還請求をサポートします。諦めて支払う前に、まずはお気軽にご相談ください。