店舗・オフィスの「A工事・B工事・C工事」の違いとは?
費用負担と発注権限

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」、民法(通常損耗・経年劣化の減価償却ルール)、および多数の退去費用減額・敷金返還交渉の裁判実務に基づきわかりやすく解説しています。

テナントとして店舗やオフィスを借りる際、避けて通れないのが内装工事に関する取り決めです。特に見積書を見て「なぜこんなに高額なのか」「誰が発注しているのか」と疑問に思う方も少なくありません。この工事区分の違いを理解していないと、予期せぬ高額な費用負担や工期の遅延トラブルに巻き込まれるリスクが高まります。

店舗やオフィスの賃貸借契約で必ず登場する「A工事」「B工事」「C工事」という3つの区分について、それぞれの違いと費用負担、発注権限の基本を詳しく解説します。

Q 店舗やオフィスの契約で登場する「A工事・B工事・C工事」の違いは何ですか?また退去時の高額請求を防ぐポイントは何ですか?
A 【工事区分の違いと費用負担】「A工事」はビルオーナーが費用と発注を担当し共用部や躯体を工事します。「B工事」はテナントが費用を負担しつつビル指定の業者が施工するため高額になりやすい特徴があります。「C工事」はテナントが費用負担と業者選定を自由に決定できる内装工事です。
【高額請求への対処法と減額交渉のポイント】B工事や退去時の原状回復費で不当な高額請求を受けた際は、見積もりの詳細な内訳開示を求め相見積もりと比較することが有効です。また、契約書の特約事項の有効性(借主に一方的に不利な条件など)を精査し、必要に応じて弁護士などの専門家に相談して適正な金額へ減額交渉を行いましょう。

A工事・B工事・C工事の基本構造と違い

店舗やオフィスを入居・退去する際に行う工事は、ビルの資産価値や安全性、他のテナントへの影響を考慮して、大きく3つの区分に分けられます。それぞれの責任の所在やお金の出どころが異なるため、契約前にしっかり把握しておくことが重要です。

工事区分の主な特徴は以下の通りです。

  • A工事:ビルオーナーが費用を負担し、オーナーが指定した業者が施工する工事
  • B工事:テナントが費用を負担し、オーナーが指定した業者が施工する工事
  • C工事:テナントが費用を負担し、テナントが自由に選んだ業者が施工する工事

このように、「誰が費用を出し、誰が発注先(施工業者)を決めるか」によってアルファベットが分かれています。それでは、それぞれの工事内容について詳しく見ていきましょう。

A工事とは?(ビルオーナー負担・発注)

対象となる工事と特徴

A工事とは、ビルの躯体(骨組み)や共用部分、そしてビル全体に関わる大規模な設備(外壁、屋根、エレベーター、エントランス、共用廊下、防災センター、主要な空調や電気・給排水の幹線など)を対象とした工事です。

費用負担と発注権限

  • 費用負担:ビルオーナー(貸主)
  • 発注権限:ビルオーナー

テナントが直接お金を払うことは原則としてありません。ビルの資産価値を維持・向上させるための工事であるため、オーナー側の責任と費用で行われます。

B工事とは?(テナント負担・ビル指定業者による施工)

対象となる工事と特徴

B工事は、テナントの専用区画内にある工事のうち、ビルの安全性や他のテナントへの影響、建物全体の機能を保つために必要とされる工事です。具体的には、区分けの壁、分電盤から先の電気配線、防災設備(スプリンクラーや火災報知器の移設)、排煙設備、一部の空調設備などがこれに該当します。

費用負担と発注権限

  • 費用負担:テナント(借主)
  • 発注権限:ビルオーナー(オーナーが指定した施工業者)

B工事でトラブルになりやすい理由

B工事がトラブルの火種になりやすい最大の理由は、「お金はテナントが払うのに、業者はオーナーが一方的に指定するため、見積もりが割高になりやすい」という構造にあります。競争原理が働きにくいため、テナント側が「工事費が高すぎるのではないか」と疑問を抱いても、交渉の余地があまりないケースが多く、退去時の原状回復トラブルにも発展しやすいポイントです。

C工事とは?(テナント負担・自社施工)

対象となる工事と特徴

C工事は、テナントの専用区画内における完全に個別的・内装的な工事です。床の仕上げ、クロスの貼り替え、間仕切り壁の設置、什器の搬入、店舗の看板設置、テナント独自の照明器具の取り付けなどが含まれます。

費用負担と発注権限

  • 費用負担:テナント(借主)
  • 発注権限:テナント(テナントが選んだ内装業者)

C工事のメリットと注意点

C工事はテナント側が複数の内装業者から相見積もりを取ることができ、コストを抑えやすいという大きなメリットがあります。ただし、どのような業者でも自由に工事ができるわけではなく、ビルの構造を傷つけないための施工ルールや、工事を行う時間帯の制限などはオーナー側の承認を得る必要があります。

契約前・退去時における工事区分の重要性と対策

賃貸借契約を締結する前には、契約書や重要事項説明書に「どの範囲がB工事に指定されているか」を必ず確認しなければなりません。ここを見落とすと、入居時だけでなく、将来退去する際の原状回復工事においても莫大な費用を請求されるおそれがあります。

特に注意すべき対策は以下の通りです。

  • 契約前にB工事の範囲と見積もり概算を確認する:後から高額なB工事費を請求されて予算が破綻するリスクを防ぎます。
  • 退去時の原状回復区分を明確にする:退去時に「どこまでをC工事として戻し、どこまでがB工事扱いになるか」を契約時に取り決めておくことで、法外な原状回復費用の請求を防げます。
  • 専門家への相談を検討する:あまりにも不自然な高額請求や、納得がいかないB工事の費用を突きつけられた場合は、泣き寝入りせずに弁護士などの専門家に相談することが有効です。

店舗やオフィスの賃貸トラブルは金額が大きくなりがちです。工事区分についての疑問や、退去時の高額請求でお困りの際は、一人で悩まず早めに対策を講じましょう。

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弁護士 井上正人

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弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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