賃貸借契約の終了時に大きなトラブルになりやすいのが、保証金(敷金)の返還と物件の明け渡しに関するタイミングです。「保証金返還と物件明け渡しは同時履行なのか」という疑問について、法律上の原則と、明け渡し後に遅延損害金を請求する実務的なポイントを弁護士が詳しく解説します。
【不当な遅延への対処法】物件の明け渡しが完了し、正当な理由がないにもかかわらず貸主が保証金を返還しない場合は、年3%〜5%の遅延損害金を上乗せして請求することが可能です。返還されないときは、内容証明郵便を用いた督促や、悪質な場合は法的措置(少額訴訟や返還請求訴訟)を視野に入れ、泣き寝入りせずに毅然とした対応を行いましょう。
保証金返還と同時履行の関係についての法的整理
賃貸借契約が終了した際、借主としては「鍵を返して部屋を明け渡すのだから、その場で保証金も全額返してほしい」と考えがちです。しかし、法律上の解釈や最高裁判所の判例では、これらは同時履行の関係とは認められていません。
最高裁判所の判例によると、建物の賃貸借終了に伴う敷金(保証金)の返還義務は、賃貸借終了の時点では直ちに履行期が到来するものではなく、物件の明け渡しを受け、そこから未払い賃料や原状回復費用などの債権を控除した残額について初めて返還義務が生じるとされています。
つまり、借主側は「まず物件を完全に明け渡す」ことが先であり、その後に貸主側が原状回復費用などを計算して残った保証金を返すという順序になります。
明け渡し完了後に保証金が返還されない場合の対処法
物件の明け渡しが完了し、原状回復費用の算定も終わっているにもかかわらず、貸主が正当な理由なく保証金を返還しないケースが後を絶ちません。このような事態に対しては、法的な権利を正しく行使して回収を図る必要があります。
主な対処法は以下の通りです。
- 未払いとなっている保証金の金額を明確にしたうえで、貸主に対して書面(内容証明郵便など)で返還を催促する
- 原状回復費用の内訳に納得がいかない場合は、不当な請求部分の根拠を示すよう求める
- 話し合いに応じない貸主に対しては、遅延損害金を上乗せした請求を行う旨を伝える
遅延損害金の請求(年3%〜5%の上乗せ)
明け渡しが完了しているにもかかわらず、貸主が正当な理由なく保証金を返還しない場合、借主は保証金本体だけでなく遅延損害金を請求することができます。
遅延損害金の利率は、契約書に定めがある場合はその利率に従いますが、定めのない法定利率の場合、民法改正により現在は年3%(または契約締結時期に応じた利率)となります。商事賃貸借などの場合には年5%が適用されるケースもあります。
- 明け渡し完了日(または返還期限)の翌日を起算日とする
- 返還が完了する日までの日数に応じて計算する
- 元本に加えて遅延損害金を請求することで、貸主側の早期対応を促す効果が期待できる
保証金の返還トラブルは、個人間や当事者間での交渉では貸主が応じないまま放置されてしまうリスクがあります。不当な理由で保証金が返還されない、あるいは法外な原状回復費用の相殺をされていると感じたら、法律の専門家である弁護士にご相談ください。
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