賃貸物件を退去する際、頭を悩ませがちなのが「照明器具を設置した場所の痕跡」です。お部屋の雰囲気に合わせてシーリングライトやペンダントライトを設置したものの、取り外した後に天井の変色やビス穴、あるいは器具自体の故障が見つかり、「これって私の負担で修理しなければならないの?」と不安になる借主様は少なくありません。
この記事では、照明器具の設置に伴う天井の痕跡やビス穴、故障に関する原状回復のルールについて、弁護士の視点からわかりやすく解説します。
【不当請求への対処法と減額交渉】ビス穴の補修を理由に高額な修繕費やクロス全面の張り替えを請求された場合は、国土交通省の原状回復をめぐるトラブルガイドラインに基づき、実際の損害範囲のみの負担であることや、経年変化(耐用年数)を考慮した算出を主張しましょう。泣き寝入りせず、見積もりの妥当性を書面で確認することが重要です。
天井ローゼットやシーリングライトの「通常使用痕」は貸主負担
賃貸物件の天井には、あらかじめ照明用の「引っ掛けシーリング」や「ローゼット」と呼ばれる配線器具が設置されていることがほとんどです。これらにシーリングライトなどを取り付けて使用することや、取り外した際に天井に生じる軽微な日焼け(影)などは、通常の生活において当然に想定される使用範囲(通常損耗)とみなされます。
国土交通省が定める「原状回復をトラブルガイドライン」においても、家具の設置による床のへこみや、日照によるクロスの変色などは貸主が負担すべき費用と整理されています。したがって、シーリングライトを設置していたこと自体による天井の変色や、機器の接触痕について、借主がクロスの張り替え費用全額を請求されるいわれはありません。
ビス穴やボード破損の扱いは設置方法によって異なる
問題になりやすいのが、お気に入りのペンダントライトやシャンデリアなどを取り付けるために、天井に直接ビスを打ち込んだり、ボードを傷つけたりした場合です。
1. 借主の負担になりやすいケース
賃貸借契約では、物件を善良なる管理者の注意をもって扱う義務(善管注意義務)があります。そのため、賃貸人の承諾を得ずに天井や壁の下地まで貫通するような大きな穴を開けたり、ボードを大きく破損させたりした場合は、その修繕費用(パテ埋めや部分補修)を借主が負担することになります。
2. 貸主負担・または交渉の余地があるケース
- 賃貸人の書面による事前の承諾を得て設置した場合
- 画鋲やピンなど、生活上不可避とされる軽微なピン穴程度の場合(※ただし、下地ボードの交換が必要なほどのビス穴は対象外となることが多いです)
もしビス穴の修繕を請求された場合でも、クロス全体ではなく、パテ埋め等の最小限の補修費用にとどまるべきであり、さらに物件の築年数に応じた経年変化(経過年数)を考慮して減額されるべきです。
照明器具の「故障」に関するトラブルと注意点
退去時の照明トラブルは、天井の痕跡だけではありません。備え付けの照明器具が故障した場合や、残置物に関するトラブルも頻発します。
- 備え付け照明の故障: 入居時から設置されていたエアコンや照明器具などの「設備」が自然故障した場合、その修理や交換の費用は原則として貸主の負担となります。借主の不注意で壊した場合を除き、退去時に弁償を求められる筋合いはありません。
- 残置物のトラブル: 前入居者が置いていった照明器具(残置物)をそのまま使用していて故障した場合、それは原則として貸主の所有物であるため、借主が勝手に処分したり費用を請求されたりしないよう、入居時の契約内容を確認しておく必要があります。
高額な請求に納得できないときは弁護士へご相談を
不動産会社や大家さんから「天井の穴や変色がひどいので、天井クロスの全面張り替え費用を支払ってください」と高額な請求書を突きつけられるケースが後を絶ちません。しかし、ガイドラインに照らせば、損害を与えた範囲を超える過剰な工事費用の全額を借主が負担する必要はありません。
もし、不当な高額請求に悩まれている場合は、一人で抱え込まずに私たち弁護士にご相談ください。過去の判例やガイドラインに基づき、適正な金額への減額交渉を力強くサポートいたします。
原状回復・退去費用の高額請求でお悩みの方へ
国交省ガイドラインに基づき、弁護士が適正金額への減額交渉・返還請求をサポートします。諦めて支払う前に、まずはお気軽にご相談ください。